「上場株式」なら、売却する場所は複数あるが…
2020年7月6日掲載の記事、『売れない!相続税高すぎ!…非上場株式を相続した人の「衝撃」』では、非上場株式を相続した人が直面する、売却できない、買いたたかれる、多額の相続税が課税される…といった問題について解説しました。本記事では、非上場株式が売りにくい理由と、特に売却が困難な非上場株式の種類について見ていきましょう。
多くの人が「株式は売買できて当たり前」と考えています。実際に、日本には次のような複数の証券取引所(マーケット)があり、それぞれで上場された株式銘柄が活発に売買されています。
●東京証券取引所:市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(ジャスダック)、TOKYO PRO Market(とうきょうプロマーケット)
●札幌証券取引所:(本則市場、アンビシャス)
●名古屋証券取引所:(市場第一部、市場第二部、セントレックス)
●福岡証券取引所:(本則市場、Q-Board〈キューボード〉)
また、証券取引所の中には会社の規模などによって、次のようなマーケットの区分があります。
●一部:大企業が上場するマーケット
●二部:一部上場を目指す中堅企業が上場するマーケット
●マザーズ、JASDAQ、アンビシャス、セントレックス、Q-Board:ベンチャー企業が上場するマーケット、新興市場ともいう
●TOKYO PRO Market:東京証券取引所が開設する日本で唯一の特定取引所金融商品市場
上場とは各取引所において、株式の取引を開始することです。上場するには業績の推移、財務体質、将来の見通し、株主構成といった、取引所などが定める上場基準を満たし、上場審査をクリアしなければなりません。その審査基準は、マザーズよりも二部、二部よりも一部のほうが厳しくなります。
このように、株式を各マーケットで売買するには、まず厳しい審査をクリアして株式を上場させなければなりません。
非上場株式は、そもそも「買い手が見つからない」!?
ところが非上場株式は、読んで字のごとく上場していません。したがって、いくら株式を売りたくても買い手が見つからないため、売却するのが非常に困難なのです。
そもそも非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式を指します。これから上場する可能性を考慮し、未上場株式とも呼ばれます。
これからマーケットに上場される予定の株式が、直前に一般向けへ売り出されることがあります。そのような株式を手に入れた場合、上場と同時に急激に値上がりすることが多々あるので、非常に人気を呼びます。
NTT(1987年2月上場・時価総額24兆9600億円)、NTTドコモ(1998年10月上場・時価総額8兆8090億円)、ゆうちょ銀行(2015年11月上場・時価総額7兆5600億円)などが有名で、上場時の熱狂を覚えている人も少なくないはずです。
しかしこれは非上場株式のほんの一例に過ぎず、ほとんどの非上場株式に上場の予定はありません。繰り返しになりますが、日本の株式会社の総数は約217万社。一方で上場している会社はわずか3800社程度で、株式会社の約99.8%は非上場会社です。そのほとんどの株式は上場されることがないためマーケットで売買することができないのです。
ただし、価格など条件面で折り合いがつけば、当事者間での売買は可能です。とはいえマーケットがない状況で、買主を見つけるのは至難の業であるのが実状です。