●米テキサス州は経済再開を一時停止し他州も感染抑制策を決定、ただロックダウンまでは至らず。
●経済再開の一時停止でも各国にこの動きが広がれば景気回復への期待は修正を迫られることに。
世界のコロナ感染者数は累計で1,000万人を突破、6週間足らずで倍増し感染ペースは急加速
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナウイルスの感染者数は、6月28日時点で累計1,000万人を超えました(図表1)。累計感染者数が500万人を超えたのは、5月21日でしたので、昨年末を基準とすれば、500万人突破まで5ヵ月と3週間ほどを要したことになります。しかしながら、その後、わずか6週間足らずで1,000万人を超え、感染ペースは急加速しています。
国・地域別に累計感染者数をみると、最多は米国の254万人超で、世界全体の4分の1を占めています(図表2)。次いで、ブラジルの134万人超、ロシアの63万人超、インドの52万人超、英国の31万人超となっています。また、累計の死者数は世界全体で50万人を超えてきていますが、このうち米国は12万5,000人超と、やはり世界全体の4分の1を占めています。
米テキサス州は経済再開を一時停止し他州も感染抑制策を決定、ただロックダウンまでは至らず
ここで、累計感染者数および累計死者数の世界全体への影響が大きい米国の状況を確認してみます。米国では、5月20日までに全50州が部分的に経済活動を再開していましたが、6月以降、フロリダ州やテキサス州など南部や西部で新規感染者数が急増しました。経済活動の再開に加え、5月下旬以降の人種差別に反対するデモで、人との接触機会が増えたことが主因と指摘する声も聞かれます。
こうしたなか、テキサス州は6月25日に経済活動再開の一時停止を決定し、26日には同州ヒューストン地域で緊急事態宣言が発令されました。フロリダ州も26日にバーでのアルコール販売の停止を決め、また、カリフォルニア州は28日、7つの郡に対し、バーなどの営業を即時停止する命令を出しました。ただ、今のところ経済活動の再開を巻き戻す、都市封鎖(ロックダウン)のような動きはみられていません。
経済再開の一時停止でも各国にこの動きが広がれば景気回復への期待は修正を迫られることに
今後の世界的な感染動向を正確に予測することは極めて困難ですが、仮に足元の感染ペースが続いた場合、米国の例を踏まえれば、ロックダウンよりも、まずは段階的な経済活動再開の一時停止で対処する国や地域が多いのではないかと思われます。活動再開の一時停止であれば、ロックダウンよりも経済への影響は限定されますが、それでも停滞は避けられないと考えます。
感染第2波をどのように定義するかにもよりますが、すでに局地的には発生しているようにも見受けられます。市場では、世界の経済活動は今年の4-6月期に底を打ち、その後は緩やかな回復に向かうという予測が多いように思われ、株式市場もそのシナリオの実現を期待する様子がうかがえます。ただ、感染拡大で経済活動再開の一時停止の動きが各国に広がれば、予測や期待は修正を迫られるため、この点は念頭に置いておく必要があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルスの感染第2波について』を参照)。
(2020年6月30日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト