借地を第三者に譲渡する場合は地主の承諾が必要です。とはいえ、もし承諾を得られなかった場合、「ほぼ使っていない」ような土地であっても地主にいわれるがままに地代を払い続けるしかないのでしょうか。本記事では、相続問題を多く手がける弁護士の北村亮典氏が、実際の事例を取り上げながら、地主にかわって裁判所に譲渡の許可を求める「借地非訟」を解説します。

「使わないのにお金だけかかる」土地代に悩む借主

【相談】

私の親は、昭和30年頃から、地主から100坪ほどの広さの土地を借りて、その借地上に2つの建物を建てて所有していました。一つには親が住んでおり、もう一つの建物には私が住んでいました。しかし、親が亡くなったので、もう一つの建物の方は、いまは空き家となっています。

 

 

空き家の状態のままで特に他に活用できる手段もなく、また、広い借地のままでは地代も高いので、借地を私の住んでいる建物の敷地と、空き家となった親の自宅の建物の敷地に分割したうえで、空き家の建物の敷地部分の借地権を第三者に売却譲渡できないかと考えました。

 

借地権の譲渡には地主の承諾が必要だと聞きましたので、地主のところに説明に行き承諾を求めたところ、地主は「借地を分割して譲渡することには承諾できない。いまのままで全部借りて欲しい」といってきました。

 

こうなると、地主に代わって裁判所に譲渡の許可を求める「借地非訟手続」を起こすしかないと不動産業者からいわれています。しかし、そもそも借地を分割して第三者に譲渡することは法律上認められるのでしょうか?

 

お
借地を分割し、使っていない敷地を第三者に譲渡することは可能?

地主に代わり、裁判所に許可を求める「借地非訟」

借地権者がその借地を第三者に譲渡する場合、地主の承諾が必要となります。しかし、地主が承諾をしてくれない場合に、借地権者が一切借地権の譲渡できないとなってしまうと、借地権者にとっても不利益となってしまいます。

 

そこで、法律は、借地権者が裁判所に対して、地主に代わって譲渡の許可をしてもらうための訴えを起こすことができることを認めています(これを借地非訟といいます)。

 

この点については、借地借家法第19条により、

 

「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」

 

と規定されているところです。

 

したがって、裁判所としては、その借地権の譲渡が「借地権設定者に不利となるおそれがない」限りは、借地権者が第三者に借地権を譲渡することについて許可を与えるということになります。

 

この「不利となるおそれ」というのは、通常は、

 

●借地権を譲り受ける人(会社)が資産等が乏しく、その後の地代の支払いなどに不安がある

●借地権を譲り受ける人(会社)が反社会的勢力など、属性に問題がある

 

という場合に問題となることが多いです。

 

 

次ページ本件は「地主に不利となるおそれ」に該当?

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