借地を第三者に譲渡する場合は地主の承諾が必要です。とはいえ、もし承諾を得られなかった場合、「ほぼ使っていない」ような土地であっても地主にいわれるがままに地代を払い続けるしかないのでしょうか。本記事では、相続問題を多く手がける弁護士の北村亮典氏が、実際の事例を取り上げながら、地主にかわって裁判所に譲渡の許可を求める「借地非訟」を解説します。

「分割によって借地の利用価値が下がる」場合は不許可

では、今回問題となっている「借地権を分割して譲渡すること」が、「借地権設定者に不利となるおそれ」となるのでしょうか。

 

 

この点については、裁判実務では、

 

「賃借地の一部分の譲渡がすべて不適法とすべきではないが、右譲渡が、賃貸人に著しい不利益を与える場合には、借地法九条の二第二項によりその申立を棄却すべきである。」(東京地裁昭和45年9月11日決定)

 

という考え方が取られています(借地法9条の2第2項とは、「裁判所が前項の裁判をするについては、借地権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡または転貸を必要とする事情、その他一切の事情を考慮しなければならない。」です)。

 

すなわち、借地権の分割については、その分割によって地主に著しい不利益が生じるかどうか、という点が重要となるわけです。

 

地主に著しい不利益が生じる場合とは、たとえば

 

●借地が分割されることによって、建築基準法上増改築が不可能になる場合

●借地の面積が減少し不整形になるなどしてその価値が不当に低下する場合

 

などが想定されます。

 

もしこのような場合に該当すると、借地権設定者に著しい不利益を与えるものであり「借地権設定者に不利となるおそれがある」と裁判所に判断される可能性があるわけです。

 

逆にいえば、借地権の分割譲渡については、借地の分割によって残余借地部分の形状や利用方法が著しく制限されるなどの「借地権設定者に著しい不利益」がなければ、認められる余地がある、ということとなります。

 

借地権を分割して譲渡ができるか、という点については、公開されている裁判例の情報も乏しいため、正確な見通しを立てることがむずかしい問題の一つです。したがって、専門家と相談しながら慎重に検討を進めていく必要があるといえます。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所 弁護士

 

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