今回は、相続税申告を200件以上経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、「空き家譲渡の特例」について解説していきます。

「知らなかった」がもたらす大損。長男は絶望…

[事例に登場する家族の構成]

父:平成20年亡※1
母:平成29年亡※2
子:長男※3

※1 このとき自宅の土地は母、建物(昭和52年築)は子が相続
※2 相続時の土地評価額:5,000万円、建物評価額:200万円
※3 父の相続前は父母と同居していたが、父の相続の数年後から別居

 

さて、この事例において母の相続の際、空き家譲渡の特例は受けられるでしょうか? 親が一人暮らしをしていた実家の不動産を相続しているので、一見、受けられそうにも思えますが、答えは“適用不可”です。

 

実は、上記で挙げた要件のほかに「譲渡する不動産は土地も建物も両方とも相続で取得したものでなくてはならない」というルールがあります。

 

事例では、子は母から土地だけしか相続していないので特例要件を満たさなくなってしまいました。つまり、母の存命中に、子から母へ贈与又は売買により建物の名義を変更していればよかったことになります。

 

もちろん贈与などに伴っては費用が発生し、この事例では贈与であれば贈与税9万円を含む20万円~30万円程度の諸費用がかかりますが、空き家譲渡の特例による約610万円の恩恵を考えれば安い必要経費です。

 

ちょっとした対策で、610万円もの差が……
ちょっとした対策で、610万円もの差が……

 

また、別のケースでは2次相続(上記事例では「父の相続=1次相続、母の相続=2次相続」となります。)における相続税を不安視して、1次相続の際に別居の子が実家の土地を相続することがあります。

 

しかし、この場合には当然ながら2次相続において空き家譲渡の特例の適用を受けることができません。結果的に相続税の減税効果が、空き家譲渡の特例による減税効果(約610万円)を下回ってしまうことも考えられます。

 

空き家譲渡の特例は時限立法(現在の適用期間は令和5年12月31日まで)ではありますが、今後も延長される可能性はありますので、1次相続における遺産分割を考える際には意識しておくことが望ましいでしょう。

 

■まとめ

今回は空き家譲渡の特例をテーマに相続発生前や遺産分割の工夫についてお話をしましたが、これに限らず相続対策のアイデアは、「今自分に、または親に相続が発生したらどうなるか?」と考えることから生まれるものです。必要であれば相続の専門家の知恵を借りながら、一度思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

 

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