作成・管理が簡易化…遺言書はもはや「作らないと損」
3 遺言書の一部がパソコンで作れるように
自分で書く遺言のことを「自筆証書遺言」といいます。これまでは、そのすべてを自分で手書きしなければなりませんでした(遺言書については、本書『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』第3章でくわしく解説します)。
「全財産を●●に相続する」というような簡単な遺言ならいいのですが、財産を複数の人間に相続させるという遺言を作るためには、その1つひとつを遺言に書かなければならなかったのです。
預金であれば銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を、不動産であれば登記簿謄本に記載されている情報を、その通りに書かなければならないので、すべてを手書きするのはとても大変な作業でした。
そこで、手書きをする負担が大きい「財産目録」部分については、パソコンで作ってよいことになりました(2019年1月13日より施行されています)。財産目録については必ずしも文書形式でなくてもよくなり、不動産であれば全部事項証明書(登記簿謄本)、預貯金であれば通帳の表紙のコピー(金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号、口座名義がわかる部分)などでも認められるようになりました。
これらによって、一度作成した遺言書を書き直すなどの手間も減り、自筆証書遺言はかなり作成しやすくなっています。
4 遺言書を法務局に預けることが可能に
テレビドラマでもよくあるように、自分で作った遺言書が見つからないとか、遺言書を本人が書いたかどうかが疑わしい、といった問題がよく生じていました。
遺言書を書いたと聞いていたのに見つからなかったり、あるいは聞いていた内容と違っていたりすると、相続人の間で不信感が生じることになり、もめる原因にもなりかねません。
そこで、2020年7月10日から自筆証書遺言を、法務局で保管する仕組みができました。つまり、国が保管してくれるというわけです。
遺言書を作成した本人が法務局に預けることになるため、内容について疑いが生じることはありませんし、保管場所が法務局とわかっていれば、遺言書が見つからないということもありません。
さらに、これまで自筆証書遺言は相続人が家庭裁判所に持っていって「検認」という手続きをしなければならず、手間も時間もかかっていたのですが、法務局に預けてある場合には検認の手続きもいらなくなります。
この制度によって、遺言書を作ることのメリットがより大きくなり、遺言書を作成する人が増えることが考えられます。