●緊急事態宣言の全面解除を受け経済活動再開への期待から日経平均は21,000円台を回復。
●航空や鉄道など出遅れ銘柄の上昇が目立ち、業績底打ちのシナリオの織り込みが進んだ可能性。
●ただコロナの影響は長期化の可能性、期待一巡後の日経平均は上値の重い展開が見込まれる。
緊急事態宣言の全面解除を受け経済活動再開への期待から日経平均は21,000円台を回復
日経平均株価は5月26日、前日比529円52銭(2.6%)上昇し、21,271円17銭で取引を終えました。終値で21,000円台を回復したのは、3月5日以来となります。背景には、緊急事態宣言の全面解除を受けた、国内経済活動再開への期待があると考えられます。また、欧米諸国の主要株価指数が総じて堅調に推移していることも、日本株の買い安心感につながったと思われます。
さらに、国内では本日、2020年度第2次補正予算が閣議決定される予定で、国と地方の財政支出に金融機関の融資などを合わせた事業規模は、100兆円を上回る規模が見込まれています。このうち、真水と呼ばれる歳出規模(経済活動に直接影響を与える一般会計の歳出増加額)は、4月に成立した第1次補正予算の約25兆円を上回る見通しで、国内景気の一段の下支えも期待されます。
航空や鉄道など出遅れ銘柄の上昇が目立ち、業績底打ちのシナリオの織り込みが進んだ可能性
なお、日経平均株価は、5月15日の終値が20,037円47銭でしたので、5月26日の終値と比較すると、7営業日で1,233円70銭(6.2%)上昇したことになります。この期間、日経平均構成銘柄で大きく上昇したものをみると、ANAホールディングス(上昇率は17.8%)、西日本旅客鉄道(同15.1%)、三越伊勢丹ホールディングス(同11.4%)など、これまで外出自粛の影響で出遅れていた銘柄が目立ちました(図表1)。
緊急事態宣言の全面解除で、航空や鉄道の利用者や百貨店の買い物客も少しずつ増えていくとの期待が広がり、これが関連銘柄を買い戻す1つのきっかけになったものと推測されます。このまま経済活動再開の流れが続けば、企業業績は徐々に底打ちとなるため、日経平均株価が節目の21,000円台を回復したのは、先行き、そのようなシナリオの織り込みが進んだためと考えられます。
ただコロナの影響は長期化の可能性、期待一巡後の日経平均は上値の重い展開が見込まれる
ここで、日経平均株価の動きを、テクニカル分析の1つであるフィボナッチ・リトレースメントを用いて確認してみます。1月20日高値から3月19日安値までの下げ幅について、61.8%戻した水準は21,206円79銭ですが、これは5月26日の終値で到達しており、二番底の懸念は払しょくされつつあります。次に意識される水準は、200日移動平均線が21,650円近辺です。
ただ弊社では、今後の日経平均株価の動きについて、上値の重い展開を予想しています。現時点では、経済活動再開に対する期待が、株式相場を支えているとみられますが、コロナの影響は長期化する可能性が高く、日本を含め、多くの国で景気回復のペースは緩慢なものになると考えています。そのため、市場の期待は程なく一巡し、感染拡大の第2波や、香港を巡る米中対立などの動きに関心が移っていくと思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『21,000円台を回復した日経平均株価の今後』を参照)。
(2020年5月27日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト