数学を「基礎からやる」にはどの教材がいい?
各々が持つ課題ごとに講じるべき対策は異なります。本記事では数学の得点が伸び悩んでいる人にとって最適な教材とその使い方を、目的ごとにいくつか紹介します。
基礎的な知識を身につけるには…
●『基礎問題精講』(旺文社)
●『大学への数学入試数学の基礎徹底/数学Ⅲの入試基礎』(東京出版)
これらは問題を解くうえで必要な基礎知識が一通りまとまっている教材です。使う知識の大部分が含まれているため、基礎的な知識を身につけていくのに十分な教材といえるでしょう。これで足りない知識は、さらに上のレベルの教材に取り組むときにおさえていきましょう。
どちらの教材も、各知識の説明とそれを使って解く演習問題が載っていますが「使う式や定理を確認する→実際に使って解く」という流れで勉強するだけではなく、公式や定理を使う状況を理解する必要があります。そのため、知識を覚える段階で、それを使う状況まで考えるようにします。また、「余弦定理を使えば解ける」とあらかじめ自分で分かっている場合でも、それを使えば解ける理由を考えて、理由が分からない場合は人に聞くとよいかと思います。
初めてこれらの教材を使う場合は、次のやり方をおすすめします。
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解けた場合もそうでない場合も解説を細部までチェック。不足している知識を確認する。その知識を使えば解ける根拠まで考えて、分からない場合は人に聞いてから覚え直す。新たに覚え直したものは、ノートにまとめておく。
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最後にノートを見返して、自分の考えたことで根拠が不明なものをチェックする。また、先生などに右ページを見てもらい課題を発見する。すべて解決できたら翌日に再トライ。
これらの教材を1周して知識をインプットしたあとは、その知識をスムーズに引き出せるかを確認するための教材として活用することもできます。知識をスムーズに引き出して正しい解き方を思い付くスピードは、テストの得点に大きな影響を与えます。
公式や定理をインプットすることに対して、スムーズにアウトプットすることは技術なので、トレーニングを行うことでしか鍛えることはできません。技術を鍛えるトレーニングの場合、「十分に理解できていること」を反復しないと効果的に鍛えることができない、という点に注意してください。
その解き方を選択する理由が分からないのにその手順だけ繰り返すのは、正しいスイングの方法を知らないのに、やみくもに素振りだけを繰り返す状況に似ています。これでは効果的なトレーニングになるわけがありません。知識を正しくインプットし、理解しているからこそ、次のステップとしてそれをスムーズに引き出すためのトレーニングが実施できるのです。具体的には、次の方法で取り組むといいでしょう。
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すぐに正しい方針が出た場合は次へ。時間がかかった場合は問題にチェックを入れておき翌日再トライ。方針が出ない場合はそもそも必要な知識が欠落している可能性が高いため、覚え直してから再トライ。
「基礎はできた!」じゃあ次に取り組むべきは…?
●『大学への数学1対1対応の演習』(東京出版)
この教材は、標準的なレベルの問題で構成されています。問題の選定とその解説が非常に優れています。収録されている問題は、中堅以上の大学を受験するときに身につけておくべき知識を要求するものばかりで、しかも複数の知識を使わなければ解答できないことがほとんどです。1問ずつ丁寧に取り組むことで、その問題を解くうえで必要な知識をすべて身につけることができます。
また、解説の最初にその問題を解くために必要な知識が「要点」として明記されているため、足りない知識や理解していないことをはっきりさせながら学習していくことができます。反面、解説の記述が簡潔にまとめられており、行間の考え方や式変形の根拠などは書かれていないことも多いため、自力ですべてを理解するにはある程度の実力を必要とします。解説を読んで「なぜそのようなことをするのか分からない」という箇所が出てきたときは、チェックを入れておき先生などに聞くのがよいでしょう。
この教材は、基礎レベルの学習を終えて本格的に受験レベルの学習をしていくときに、次の手順で取り組むと効果的です。
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解けない場合はまず「要点」のみチェックして必要な知識を確認してもう一度考える。そのあとは解けた場合もそうでない場合も解説を丁寧に読み、知識の使い方や行間の思考、式変形の根拠を考える。不明な点があれば人に聞く。新たに理解したことはノートにまとめておく。
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最後にノートを見返して、自分の考えたことで根拠が不明なものをチェックする。また、先生などに右ページを見てもらい課題を発見する。すべて解決できたら翌日に再トライ。
計算スピードを上げるのに効果的な教材は…
●『合格(うか)る計算』(シグマベスト)
●『数学の計算革命』(駿台文庫)
計算の精度やスピードといった「技術」を高めるにはトレーニングで鍛える必要がありますが、そのためにはまず「正しい計算の仕方」を知る必要があります。正しい方法を知らずに計算練習を繰り返しても、先ほど挙げた素振りの例のとおり高い効果は望めません。
上記の教材は、正しい計算方法をきちんと説明してくれているため、計算処理をスムーズに行うために必要な知識を最初にインプットすることができます。どちらの教材も計算方法ごとにトレーニング用の問題がたくさん用意されているため、「正しいやり方を覚える→そのやり方のとおりに計算練習を行う」という順でトレーニングに取り組めば着実に計算スキルを上げることができるでしょう。
学び舎東京PLUS