線路沿いの土地では「騒音による評価減」の可能性あり
今回は、還付の成功事例について見ていきます。
この事例は、以前に相続税還付で依頼のあった方の奥様の相続税についても見直しをしてほしいとのことで依頼されたケースです。既に税務調査も終わっていて、納税額としては約8000万円でした。
しかし、見直しをしてみると減額要素がほとんどなく、見つけることができたのは土地の評価1カ所のみでした。減額要素としては、評価地が線路沿いにあったため、騒音による評価減を検討してみました。最寄駅がJR中央線の西荻窪駅だったのですが、時刻表で調べたところ、平日は934本の電車が停車しています。
各駅、快速、上り、下り全てあわせた本数ですが、非常に多いといえます。始発は4時33分、終電は1時16分なので、1日のうち約21時間は電車が走っています。単純に計算すると1時間に平均44本です。
特に通勤ラッシュである朝8時から9時までの1時間では、92本の電車が停車します。約39秒に1本のペースなので非常に多く、線路沿いに住んでいる人はあまりにうるさくて落ち着いて過ごすことができないと感じるのではないでしょうか?
ちなみにどのくらいうるさいのか調べたところ、少し離れたところですが、JR中央線の中野駅あたりで86デシベルでした。80デシベルがだいたいバス車内くらいの騒音なので、バス車内よりうるさいという感じです。
線路沿いに土地を所有している場合には、このように騒音の問題がありますので、評価を下げられる可能性が出てきます。ただし、線路沿いだからといって、必ずしも減額が認められるわけではありません。路線価に騒音による利用価値の著しい低下が織り込まれている場合もあります。この場合には、既に路線価に織り込み済みですので、さらに減額することは認められません。
線路沿いの土地を評価する際の「3つ」の留意点
今回のケースでは、線路沿いから垂直に道路があり、路線価は線路沿いから離れたところまで一律となっていました。そのため、路線価に騒音による評価減が織り込まれていないことが明らかであり、減額することに成功しました。騒音により利用価値の著しく低下している宅地として評価を減額できるか否かのポイントをまとめると以下のとおりです。
●騒音の程度(何デシベルか?)
●時間的発生頻度(どのくらいの頻度で電車が通るか?)
●路線価に織り込み済みではないか?(路線価図で周辺との比較)
以上のように、線路沿いの土地を評価する際には注意が必要になってきます。さらに余談ですが、今回の評価地は賃貸物件であるため貸家建付地評価となります。税務調査の際に賃貸割合を100%から50%にするように指摘され、前の税理士はその税務署の指摘に応じて修正申告していました。
内容としては土地と建物が共有となっていて、いずれも被相続人の持ち分が2分の1、相続人である長女の持ち分が2分の1となっています。例えば、土地の持ち分が100%被相続人であれば、長女が所有する建物の持ち分2分の1部分については使用貸借となるため、賃貸割合を50%にする必要がありますが、今回のケースでは土地も建物も共有の割合が同じとなっています。
そのため、民法の解釈からも使用貸借との主張で賃貸割合を50%にする理由がなく、賃貸割合100%で評価することになります。今回の更正の請求では、税務調査での指摘事項も覆すことに成功しました。還付された金額は約30万円で金額としては少なかったですが、論点としてはやりがいのあるものでしたので紹介させていただきました。
【図表 電車の騒音で還付に成功した例】
【まとめ】