【新型コロナ】旅行中止・ジム閉鎖・ライブ中止…返金はある?

 

新型コロナウイルスの影響が、全世界に広がっています。身の回りのさまざまな契約上のことでも支障が出てきています。

 

今回は具体的なご相談の中で、いくつかをQ&A方式でお答えいたします。

コロナを理由に海外旅行をキャンセルできるか?

【Q1】

コロナウイルスの感染が懸念されるので、海外旅行をキャンセルしました。キャンセル料は旅行会社の規定通りに払わなければならないのですか。

 

【A1】

この場合はあくまで自分都合でのキャンセルになりますので、約款上のキャンセル料の定めに拘束されます。国土交通省が定める旅行業法に基づく標準旅行業約款により、キャンセル料の上限はあらかじめ決まっています(海外旅行は出発1カ月から20%)が、それ以外の約定は各旅行会社、航空各社、宿泊先によります。

 

ただし、今回は大手旅行会社が、コロナウイルスを理由とするキャンセルの場合にはキャンセル料を取らず、全額払い戻しに応じるケースもみられます。

 

また、旅行者がやむなくキャンセルをせざるを得なくなった場合に備えて、旅行者のためにキャンセル料をあらかじめ保証する保険商品(旅行キャンセル保険、チケットガード保険)もあります。

旅行先が日本人の受け入れを拒否…キャンセル料は?

【Q2】

新型コロナウイルス感染拡大のため、(1)受入国が日本人の受け入れを禁止したり、(2)日本政府が出国を禁じたため、海外旅行に行くことができなくなりました。キャンセル料はかかりますか。

 

【A2】

天変地異による不可抗力による解除(この場合は旅行者のみならず、旅行会社・航空会社・宿泊施設の双方から解除ができます)ということになるので、前述の標準旅行業約款[※1]によっても、払い済みの全額が戻ります。

 

なお、標準旅行業約款とは、旅行業法に基づき、旅行会社と旅行者が交わす旅行契約に関し、観光庁および消費者庁が定めた約款のモデルです。旅行会社は旅行業約款を定めて観光庁長官の認可を受けなければならないところ、標準旅行業約款と同一の約款を定めるときは、個別の認可を受ける義務を免除されるので、多くの旅行会社がこの約款に沿った約款を採用しています。

 

国土交通省HPを参照:標準旅行業約款

 

[※1]標準旅行業約款16条:天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の当社 の関与し得ない事由が生じた場合において、契約書面に記載した旅行日程に従った旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

スポーツジムがクローズになった場合、月額費は?

【Q3】

感染例が出て、通っていたジムは行政の指導を受けてクローズになりました。月会費は支払わなければなりませんか。

 

【A3】

ジム側が感染を懸念し、自らクローズした場合についてまず考えます。

 

ジムから顧客との継続利用契約を解除しているわけではないので、本来、月額利用料はそのままです。

 

それでは、クローズすることがやむを得ない事態に至った場合はどうでしょうか。つまり、自らクローズというより「履行不能」である、とみなされれば、民法536条1項にいう「債務者主義」で反対債務である支払い義務も消滅する余地はありますが、何が履行不能かは微妙な判断を伴います。

 

実際、日本の憲法では国民の営業の自由を保障していますから、行政が営業について強制的に停止をすることは、個別の業法に規定がない限り、行政の強権の一存ではできません。そのため「自粛を要請」という報道が相次いでいるのです。そうなると、「履行不能」といえるのかどうか、微妙な場合も起こりえます。

 

あくまで民法は任意規定ですから、それでもなお返金しないという契約は、それ自体は可能です(消費者契約法の問題は残ります)。

 

スポーツジムがクローズとなる場合、コロナの影響でも、必ずしも全額返金とは限らない。
スポーツジムがクローズとなる場合、コロナの影響でも、必ずしも全額返金とは限らない。

 

顧客が感染懸念でジムを使用しない、という場合はまた異なります。

 

これも、契約解除しているわけではないので、本来、利用料の支払いはそのままです。契約解除を自ら行えば、ジムの規約に基づいて利用料金が精算されます。規約がなければ解約の効力は将来に向かって発生しますから、当然解約までの分のお金は戻りません。

 

このように、コロナ関連だからといっても、必ずしも全額返金とは限りません。

ライブ中止の場合のチケット代は返金されるのか

【Q4】

感染拡大の懸念でライブが中止になりました。チケット代は返金されますか。

 

【A4】

この場合も、契約を解除しているわけではないので、本来はチケット料の支払い義務が消滅しません。つまり、返金があるものではありません。

 

行政からの中止命令などやむを得ない履行不能とみなされれば、債務者主義で反対債務である支払い義務も消滅する余地はありますが、現行ではその判断は難しいところです。

 

いずれの場合も、契約による取り決めが可能なので、返金しない定めは消費者契約法の問題を除いては可能です。したがって、払い込みの済んだチケット代に関して、開催しない場合には返金しますという規程がない限り、必ずしも返金されないことになります。

 

コロナ感染拡大への懸念でライブが中止になっても、本来は返金があるものではない。
コロナ感染拡大への懸念でライブが中止になっても、本来は返金があるものではない。

 

一方、ファンが自ら感染懸念でライブに行くのをやめる場合はどうでしょうか。

 

基本的に、チケットを購入したら、キャンセル、つまり契約解除を自らしたとしても、規約上払い戻し不可になっていることが多いはずです。

 

仮にそのような規約がなかったと考え、解除の効力がさかのぼって発生し、そのために代金支払い義務が消滅したと考えてもなお、予約シート代相当額の相手の損害を賠償しないといけないことになります。したがって、全額の戻りは得られないことになります。

 

水谷 江利

世田谷用賀法律事務所 弁護士

世田谷用賀法律事務所 代表 弁護士

東京都立大学卒業後、新卒で大手弁護士事務所に入社、渉外企業法務を志して弁護士に。「もっと人の人生の近くで仕事がしたい」との思いから、2015年世田谷用賀法律事務所を開所。現在は個人の相続、離婚、不動産を中心に、国際離婚や企業顧問なども多く取り扱う。英語対応可能。東京弁護士会所属。東京都世田谷区所在。 https://setayoga.jp/aboutus.html

著者紹介

連載世田谷の家事弁護士が監修!実例では描けない相続&離婚ショートストーリー

本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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