新型コロナウィルスの影響により、ビジネスに支障が出ている企業が増えています。実際に相談のあった内容をもとに、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏がQ&A方式でお答えします。

 

新型コロナウィルスの影響が多方面で出ています。会社間でのビジネスにおいても、「こんな時はどうなるの?」と思われること、あるでしょう。

 

当事務所にご相談のあった内容をもとに、Q&A方式でお答えします。貸付や助成金にまつわるリンク集もありますので、各ホームページ(HP)などを参考にしてください。

物流が止まり、納期が間に合わない場合はどうなる?

【Q1】

施主から物件の施工を請け負い、建設工事中です。

 

建設工事にあって、コロナウイルス感染拡大の影響で物流が止まり、資材の供給が間に合わず、工期が遅れました。

 

施工会社の私たちは、完工遅れの責任をとらないといけないのでしょうか。

 

【A1】

施工業者の懈怠による単純な工期遅れは債務不履行(履行遅滞)として、その間、施主に生じた損害を業者が賠償する責任を負うことになります。

 

今回の場合は、資材入荷の遅れは施工業者に過失がないので、工期遅れについて追及を受けたとしても、施工業者は自分たちに工期遅れに過失がないことを立証すれば、責任を免れることになります(過失責任の原則)。

 

新型コロナウイルスの影響で一部の建材・設備の部品供給が滞り、建築工事を完了できないケースが増えている。
新型コロナウイルスの影響で一部の建材・設備の部品供給が滞り、建築工事を完了できないケースが増えている。

 

新型コロナウイルスの影響でトイレ、キッチンなど一部の建材・設備の部品供給が滞り、設置工事ができない状態が続いているため、建築工事を完了できず、引き渡しができないまま工期が伸びるケースが増えています。

 

国土交通省は、設備一部未設置の軽微な変更の場合には建築確認の検査をすみやかに実施するよう全国に周知し、取引の円滑を呼び掛けています。

 

国土交通省HPを参照:新型コロナウィルス感染症対策

 

なお、原料価格の高騰やラッシュワークによる人件費上昇によるコストの増加を受けて、親事業者が下請事業者に下請代金の減額を行って利幅を確保しようとするようなことは、下請業法違反になりますので、注意が必要です。

 

経済産業省(中小企業庁)指針を参照:今般の新型コロナウイルス感染症により影響を受けている下請事業者との取引について、親事業者に要請します

発注したものが遅れ、不要になってしまった場合は?

【Q2】

3月中にどうしても必要な部品を大量に注文しましたが、物流が滞って到着があまりに遅いので届かないまま3月が過ぎ、当該部品はもう不要になりました。代金を支払わなければなりませんか。

 

【A2】

クリスマスケーキのように、ある特定の時期までに商品が納入されなければ、市場価値がないものを「定期売買」といいますが、定期売買について、商法525条は当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は「ただちにその履行の請求をした場合を除き契約の解除をしたものとみなす」旨を規定しています。

 

この場合、売買の性質または当事者の意思表示により、「特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない」ということが示されていることが必要です(つまり、その時期ではないと意味がないことが双方にとって明確でないといけない)。


解除したものとみなすわけですから、その解除の効果はさかのぼり、商品の引き渡しの履行義務も代金の支払い義務も双方が消滅することになります。

助成金や貸付など、利用できる資金制度は?

【Q3】

今回のコロナウィルス対策で利用できる資金制度にはどのようなものがありますか。

 

【A3】 

「貸付」に関するものと、「助成」を受けるものに分かれます。

 

「貸付」については以下をご参照ください。なお、民間の銀行もコロナウイルス対策として低金利の融資を拡大しています。

 

●セーフティネット保証4号・5号(中小事業者資金繰り支援策)

経済通産省HPを参照:新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

 

●日本政策金融公庫によるセーフティネット貸付の要件緩和(中小事業者資金繰り支援策)

経済通産省HPを参照:日本政策金融公庫が新型コロナウイルスに関する特別相談窓口を開設し、セーフティネット貸付の要件を緩和します

日本政策金融公庫HPを参照:無利子・無担保融資

 

「助成」については以下をご参照ください。

 

●厚生労働省HPを参照:雇用調整助成金

●厚生労働省HPを参照:小学校休業等対応型助成金

●東京しごと財団HPを参照:東京都のテレワーク助成金

 

東京都(公益財団法人東京しごと財団)では、常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業などに向け、助成対象はテレワークに必要な機器の購入費、設置・設定費、保守委託の業務委託料、導入機器の導入時運用サポート費、機器のリース料、クラウドサービスなどのツール利用料として限度額は250万円の助成を開始しました。

 

東京しごと財団のホームページ。東京都では、テレワークに対する助成を行っている。
東京しごと財団のホームページ。東京都では、テレワークに対する助成を行っている。

 

弁護士事務所では、中小企業向けの労務全般に対する相談を受けています。

 

資金繰りやテレワークなどの労務管理、またはそれらに関する助成金、補助金に関することについて、何か心配なことがありましたら、相談することをお勧めいたします。

 

水谷 江利

世田谷用賀法律事務所 弁護士

本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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