コロナショックを受け、ビットコイン価格は、3月12~13日で、7900ドル(約85万円)から3900ドル(約42万円)に急落。阿鼻叫喚ともいえる様相を見せています。投資を始めたばかりのころは、リターンだけを気にしがちですが、非常時のリスクを考えないと、大変な目にあってしまうかもしれません。※本連載では、株式会社マイエフピー代表取締役・家計再生コンサルタント/ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏の著書『となりの家のざんねんなお金の話』(あさ出版)より、事例をもとに、お金の知識をわかりやすく解説していきます。

「億り人」という言葉の響きに魅了されてしまった

◆「億り人」はもう過去の話?

 

2018年に1年間で価格が20倍以上にも跳ね上がり、注目を集めた「ビットコイン」をはじめとする仮想通貨。値上がりが注目されたことで、実際に買ったという人も多いのではないでしょうか。

 

一方で、価格の下落で大きな債務を負ったとか、仮想通貨取引所「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨が流出、被害者が多く出たといったこともあり、リスクが大きいこともわかりました。

 

書籍『となりの家のざんねんなお金の話』執筆時(2019年3月)の価格変動は、以前ほど大きくないようですが、それでも仮想通貨に興味や関心を持つ人はまだ多く、投資の方法などを間違えてしまうと、大変な目にあってしまうようです。

 

【岡田さん(34歳/女性)の場合】

 

「『億り人』なんて聞いてすごいみたいだから、とりあえず体験してみようくらいの軽い気持ちだったんですが……」

 

会社員の岡田さんも、仮想通貨で数億円を稼ぐ「億り人」が多く生まれているとの話を聞き、仮想通貨投資を始めた1人です。「やるならよく聞くビットコインだろう」と、0.001BTCほど購入しました。当時、1BTCが140万円でしたから、購入金額は1400円ほど。その程度なら失っても惜しくはないと思ったといいます。

 

見ていると価格は時間を追うごとに変動していき、1BTCが170万円になり、220万円になりと、どんどん上がっていきました。「ここらで利益を確定してみようか」と思って売ってみると、2000円ほどで売ることができ600円ほどもうかりました。

 

「お金を増やすのは意外と簡単だなぁ。もっとたくさん買っていれば、もっともうけることもできたのに……」と思った岡田さん。しかし、これが、悪夢の始まりでした。

 

岡田さんはどんどん購入し、ついには130万円しかなかった貯蓄の大部分を投じてしまったのです。ところが、時を同じくして仮想通貨が暴落し始めます。

 

この段階でやめておけばよかったものを、「これからまだ上がるはずだ」と考えて保有し続けた結果、1BTC=110万円強のときに購入した仮想通貨は79万円まで下がってしまいました。現金化すれば35万円も損してしまうことになります。

 

軽い気持ちだった
軽い気持ちだった

 

◆投資は月収の7.5ヶ月分貯めてから

 

基本的に、投資を始めるには、万が一のときのための「生活防衛資金」を含め、金額にして最低でも月収の7.5ヶ月分の貯蓄が必要です[図表1]。

 

[図表1]投資を始める際の3つの袋

 

そして投資対象に関しては、前回の記事でも説明しましたが、生活費と貯蓄とを並走させられる範囲のもので、リターンが少なくてもリスクが少ない投資を、積み立てでやることのほうが望ましいといえます(参照『貯蓄「380万円」の46歳男性、怪しい投資セミナーで唆され…』)。

 

また、実際に少しずつ投資しながら、投資商品の特性や、売り時・買い時、投資におけるリスクなど、さまざまなことを学んでいく必要もあります。岡田さんの場合、そうした知識の積み重ねが一定レベルに達した段階で、初めて「仮想通貨をやろう」ということであればよかったのです。

 

単に「もうけたい、お金を増やしたい」というだけで飛びつくのは、実に愚かなことです。「人がもうけているから私ももうけられる」と短絡的に信じ込むのではなく、その裏にあるリスクについて、きちんと認識しておかなければなりません。

 

結局岡田さんは、換金すれば損を抱えてしまうので、最近まで〝塩漬け〟にして様子を見ていたようです。そして、1BTC=82万円を超えたところで換金し、損を少しだけ減らしました。

 

これに懲りた岡田さんは、「もう仮想通貨はやらない」といっています。それよりも、「つみたてNISA」で手堅く、少しずつ、将来へ向けて増やしていくつもりだとも話していました。

「取り戻す方法はないでしょうか」「ありません」

◆短期間でもうかる投資はない

 

[図表2]投資は長期で考える

 

仮想通貨に夢を抱くのは若い人だけではありません。私がやっている家計相談でも、定年退職で得た退職金を利用して仮想通貨を購入した人が少なからずいますが、ほとんどの人が300万円とか500万円とかいった損失を抱えてしまい「なんとか取り戻す方法はないでしょうか」と相談してきます。しかしながら、それだけの損失を簡単に取り戻せる方法などありません。

 

短期間でもうけて、お金を増やしたいという気持ちはわかります。ですが、そんな投資商品はそもそも不確実性が高く、リターンが大きい代わりに、リスクも大きいことを十分認識したうえで手を出してください。もっといえば、素人は短期の投資商品に手を出すべきではありません。大やけどを負ってからでは遅いからです。十分、お気をつけください。

 

【ココがざんねん】

投資をやるなら資金の余裕が必要。また、少額からとはいえ、その裏にあるリスクを理解しないと、どんどんハマっていく一方です。素人ならなおさら気をつけるべき! さらに、投資は長期で考えましょう!

 

 

横山 光昭

株式会社マイエフピー 代表取締役

家計再生コンサルタント

ファイナンシャルプランナー

 

となりの家のざんねんなお金の話

となりの家のざんねんなお金の話

横山 光昭

あさ出版

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