近年、中学校受験への関心が高まり続けているが、特に東京の受験熱は高まり続けている。しかし東京のなかでも受験への関心には地域差があり、区部と市部になるとその差は顕著になってくる。今回、東京市部に焦点をあて、私立中学校進学率をランキング形式で紹介する。

東京都の26の市…私立中学への進学率が高いのは?

東京都教育委員会によると、平成31年3月の東京都の公立小学校の卒業者は94,580人で、そのうち都内の公立中学校への進学者は75,598人、私立中学校への進学者は16,953人となっている。過去5年の進学率を比較すると、都立中学校への進学は81.8%から79.9%、私立中学校への進学率は15.9%から17.9%となっており、私立中学校の人気の高まりが垣間見ら見られる。

 

もちろん私立中学校には定員には限りがあるので、学校が新設されるなどして定員が増えない限り、天井知らずに進学率があがることはないだろうが、少子化が進むなか「よりよい教育を受けさせたい」「できれば大学までストレートで進学させたい」などという親は増えるだろうから、受験率は上昇していくものと考えられる。

 

しかし教育委員会の報告書を紐解いていくと、中学校受験の高まりとひと言でいっても、大きな地域差があり、東京都区部で比較すると、私立中学校への進学率が一番高い文京区と、一番低い江戸川区では、30%近くの差がある(関連記事『東京23区「私立中学進学率」ランキング…如実な格差が露呈』)。

 

では東京市部では、どのような状況なのだろうか。東京都には26の市があるが、それらの私立中学校の進学状況を進学率順にみていこう。

 

■第26位~第11位
あきる野市3.7%
青梅市 3.9%
羽村市 5.1%
東大和市 5.6%
清瀬市 5.7%
昭島市 6.7%
東村山市 7.0%
八王子市 7.2%
日野市 7.2%
町田市 7.3%
福生市 7.7%
東久留米市 8.3%
小平市 9.0%
立川市 10.3%
府中市 10.3%
武蔵村山市 10.4%

 

東京市部のなかで、私立中学校への進学率が一番低いのはあきる野市で、青梅市、羽村市と続く。これらの市では、40人学級であれば1~2人が私立中学校に進学する水準である。これらの市は、JR中央線から青梅方面へと走るJR青梅線や五日市線が走るエリアだが、私立中学校は、1校しかない。エリア外の学校に通うにしても交通利便性が低く、市内公立中学校以外への進学は考えにくいだろう。

 

第20位から第11位の40人学級で3~4人の児童が私立中学校に通うエリアで、東京都心からは20~30kmほど離れた市である。学園都市としても知られている八王子市には9校、町田市には4校の私立中学校があり、市部のなかでは中学校受験が身近に感じられる環境だと考えられる。しかし両市ともエリアが広く、学校間で進学率に大きな差が生じていると考えられる。

 

■第10位~第4位
西東京市 12.1%
稲城市 12.6%
多摩市 12.7%
国分寺市 12.9%
小金井市 13.1%
国立市 13.9%
三鷹市 16.9%

 

上位10位内になると、40人学級で5~7人が私立中学校に進学するエリアとなり、中学校受験がより身近に感じているのではなないだろうか。地理的にもより東京区部に近くなり、エリアを超えた通学も容易になるエリアだといえるだろう。

 

■第3位
狛江市 17.7%

 

40人学級であれば7人が私立中学校に進学する計算になる狛江市。市内を小田急小田原線が走り、市内「喜多見」駅の隣は「成城学園前」駅という立地だ。「成城学園前」は言わずと知れた高級住宅地で教育熱も高い。駅周辺には中学校受験に定評のある大手進学塾も集積しているため、その隣の狛江市は中学校受験を目指すのに適した環境といえるだろう。

 

■第2位
調布市 19.4%

 

世田谷区に隣接する調布市。市内を京王線が走り、「調布」駅周辺には中学校受験に定評のある大手進学塾が集積するほか「仙川」駅にも中学校受験トップクラスの進学塾が進出している。中学校受験への関心も高いエリアだろいえるだろう。

 

■第1位
武蔵野市 30.6%

 

40人学級であれば12人の児童が私立中学校に進学する武蔵野市は、東京区部でもベスト10に入る水準である(東京区部第10位品川区30.3%、第9位千代田区31.1%)。住みたい街として知られている「吉祥寺」周辺には大手進学塾が集積し、東京でも教育熱の高いエリアである。隣接する杉並区には多くの私立中学校が立地するほか、JR中央線、京王井の頭線を利用すれば、都心部の中学校への通学も容易だ。

 

出所:東京都教育委員会『令和元年度公立学校統計調査報告書』
[図表1]東京市部公立小学校における私立中学校への進学率 出所:東京都教育委員会『令和元年度公立学校統計調査報告書』

中学校受験を考えるなら「吉祥寺」より「三鷹」

東京市部のなかでは、武蔵野市が東京区部でもベスト10に入る水準であり、調布市であれば「調布」駅周辺、狛江市であれば近隣の「成城学園前」駅周辺に中学受験を視野に入れた大手進学塾が多く立地する。中学校受験対策をするのも容易な環境だといえるだろう。

 

また八王子や町田、府中といった中核都市であれば、中心駅には同じように大手進学塾が立地しているから、通塾が可能なエリアに居住していれば、中学校受験対策も容易だろう。

 

東京区部に比べると、進学塾が近くにないなど、中学校受験対策で不利なエリアが多い東京市部だが、なかには「我が子の中学校受験のために引越しを」と考える家庭もあるだろう。

 

東京市部の賃貸物件の平均家賃(3LDK以上、中心駅から10分以内)を比較(図表2)すると、武蔵野市では25万円と一般的な会社員家庭が「吉祥寺」駅周辺に居住するのは難しい金額である。そこでおすすめが、隣の「三鷹」駅周辺で、10万円ほど家賃水準が下がる。進学実績の高い大手進学塾に通塾するのも電車で1駅であり、また「三鷹」駅周辺にも中学受験に対応する塾は多い。小学校でも40人学級で7人ほどが私立中学校に進学するという水準なので、学校の対応も慣れていると考えられる。

 

出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月27日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする
[図表2]東京市部の平均家賃 出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月27日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする

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