●新型肺炎の感染は米国でも拡大しつつあり、ダウ平均など主要3指数はそろって調整局面入りへ。
●株式相場はすでにパンデミックを意識、感染者数のピークアウト確認時期は一層見極めが困難に。
●VIX指数はチャイナ・ショック時の40に迫る、なお2008年の金融危機当時のVIX指数は80超え。
新型肺炎の感染は米国でも拡大しつつあり、ダウ平均など主要3指数はそろって調整局面入りへ
新型肺炎の感染は、米国でも拡大しつつあります。米疾病対策センター(CDC)は2月26日、カリフォルニア州で感染経路を確認できない新型肺炎の事例を確認したと発表しました。また、カリフォルニア州のニューサム知事は2月27日、州内で33人から新型肺炎の陽性反応があったと発表し、感染の恐れがある8,400人強の経過を観察していることも明らかにしました。
こうしたなか、27日の米国株式市場では、主要株価指数が大幅続落となりました。ダウ工業株30種平均は前日比1,190ドル95セント下落し、下げ幅は過去最大を記録しました。また、ダウ工業株30種平均は、2月12日につけた過去最高値から約12.8%下落し、S&P500種株価指数とナスダック総合株価指数も、2月19日につけた過去最高値からそれぞれ約12%、約12.7%下落するなど、3指数そろって調整局面入りとなっています。
株式相場はすでにパンデミックを意識、感染者数のピークアウト確認時期は一層見極めが困難に
新型肺炎の感染拡大は、世界的な広がりをみせており、依然として沈静化の兆しはみられません。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は2月24日の記者会見で、現状は、エピデミック(地域的な流行)であり、パンデミック(世界的な大流行)ではないと強調しました。しかしながら、株式相場はここ数日で、パンデミックのリスクを早々に織り込み始めたように思われます。
米国など、主要国の株価指数が連日大幅に下落したこともあり、この先、自立的な反発局面も想定されます。ただ、感染の拡大が続く限り、経済見通しや業績見通しには強い不透明感が残り、反発は一時的となる可能性が高いと考えます。株価の本格的な反転上昇には、感染者数の世界的なピークアウトという材料が必要です。ただ、その材料を確認できる時期の見極めは、一段と難しくなっています。
VIX指数はチャイナ・ショック時の40に迫る、なお2008年の金融危機当時のVIX指数は80超え
なお、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500種株価指数のオプションの市場価格を基に算出する「VIX指数」は、一般に20を超えると投資家の不安心理が高まっていると解釈されます。2月27日時点のVIX指数は39を超え、人民元切り下げによるチャイナ・ショック(2015年8月)時の40超えに近づきました(図表1)。参考までに、2008年の金融危機当時のVIX指数は、80を超えていました(図表2)。
このような状況下、2月28日の日経平均株価も大幅に続落しています。2月27日付レポート「日経平均株価の長期上昇トレンドとPBR1倍水準」で触れた通り、21,000円台前半は先行きの相場を見通す上で、非常に重要な水準とみています。ここを下抜けた場合は、日経平均株価の株価純資産倍率(PBR)1倍の水準である、20,700円レベルでの攻防という流れになります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「新型コロナ」米国でも感染拡大…米株は調整局面入りへ』を参照)。
(2020年2月28日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト