新連載の第1回は、子ども連れで離婚、別居する女性からの相談です。「養育費や婚姻費用を少しでも高くもらうために、働くことをしばらく抑えようかと思うのですが、どう思いますか?」との質問に、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏がお答えします。

 

法律で解決できること=人生においてハッピーエンドか」

 

必ずしも、そう言い切れないのが世の常です。権利を獲得し、お金で解決することができたとしても、それが結果、長い目で見たときに良かったかどうか…。

 

渦中にいると、じつは見えにくいものです。水谷弁護士がクライアントから相談を受けている際、よくある法律相談の中から、「法律外」の話を取り上げます。

養育費を取るために仕事をセーブするのはアリか?

■相談内容


養育費や婚姻費用を少しでも高くもらうために、働くことをしばらく抑えようかと思うのですが、どう思いますか?

 

これは、お子さん連れで離婚、別居する女性からの相談を前提としています。

 

■水谷弁護士の考え

 

養育費や婚姻費用は今現在の互いの収入で決まり、受け取る方の収入が高ければ、それだけ受け取るお金は少なくなってしまいますから、短期的なことなら、収入調整をしてもよいとは思います。

 

しかし、やりたい仕事やいい仕事が見つかりそうで、受け取る養育費のために、せっかく手に入る仕事を手離すか、あるいは、養育費ありきで働かないことを決め込むかとなれば、その答えは「NO」だと思います。

 

それは、『仕事をセーブして得られる養育費の「差額」< 自分が稼ぐことができる金額』になるからです。

 

自分の収入を抑えて受け取れる金額の上昇分より、自分で稼げる金額のほうが確実に多いでしょう。仕事のチャンスが目の前にあるなら、離さないほうがよいと思います。

「養育費のために仕事をセーブする」は本末転倒

離婚するということは、当然、これまでと同じ生活が保証されるものではありません。これまでと同じ水準の生活を見込んで離婚することができる方はほとんどいません。これまでと同じ環境を旦那さんから提供してもらえることを前提として、離婚後の生活を組み立てると、そうはいかないことがほとんどです。

 

裁判所の養育費の金額が低すぎるんじゃないか、という議論はありますから、その点は問題だと思います。

 

しかし、現状はやはり、これまでの養育費や婚姻費用の算定表がまかり通っていて、新しい基準で議論をすることが難しいです。このような現状では、やはり、最後に頼れるのは自分なんだと、決心してもらう必要があったりします。

 

ご相談に来られる方の中には「自分で全部抱え込まなくちゃ」と気負っている方、または「これまでと同じ生活をさせてもらいたい」って、少し覚悟不足な方、両方いらっしゃいます。

 

前者の方には「別れてもパパなんだから頼れるものは頼ろうね」と言いますし、後者の方には「別れる以上はこれまでと同じでではないですよ」とアドバイスします。

 

離婚して子どもと暮らしていくためには、支出を減らすか、収入を増やすか、その両方が必要
離婚して子どもと暮らしていくためには、支出を減らすか、収入を増やすか、その両方が必要になる

 

悲しい現実ですが、現在の養育費の算定表で決まる金額では(ご主人の年収が相当高い金額の場合を除いては)どのみち、その金額だけで暮らすことはできません。離婚して子どもと暮らしていくためには、支出(住居費など)を減らすのか、収入を増やすか、あるいはその両方が必要になります。

 

とはいえ、実家に帰ることができる方ばかりでもありません。そうなると、自分にできることは収入を増やすだけなのです。そうしないと自分も子どもも生活できません。それなのに「養育費のために仕事をセーブする」と言うのは、本末転倒だと思いませんか?

 

お子さんが小さいとか、特殊な事情があるとかでセーブせざるを得ない時期はあると思いますが、仕事のチャンスがあるのなら、うまく調整しつつ、新しい人生のために、乗らない手はないと思いますよ!

 

水谷 江利

世田谷用賀法律事務所 弁護士

本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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