原油価格は一時49米ドル台へ
新型肺炎感染拡大で世界経済に懸念
■北米の代表的な原油価格であるWTIは、1月初旬は米国とイランの衝突を背景に、一時1バレル=65米ドル台まで上昇したものの、戦争が回避され下落に転じました。加えて月末にかけて、中国の新型肺炎感染拡大による世界経済への悪影響が懸念され、同50米ドルを割り込む水準まで下落しました。
■新型肺炎の感染拡大は、中国をはじめ海外各国でも続いています。中国では2月10日以降、徐々に企業活動が再開されていますが、通常の状態に戻るには相応の時間がかかるとみられています。
2020年の原油需要見通しを下方修正
■2月12日に公表された石油輸出国機構(OPEC)月報の2月号では、2020年の世界の原油需要は日量1億73万バレルと予想し、前月見通しから25万バレル下方修正しました。OPECは「新型肺炎の感染拡大が中国経済に及ぼす影響により、今年の世界経済を巡る不確実性が増大し、その結果、世界的な原油需要の伸びも影響を受ける」と指摘しました。
■需給の均衡にはOPEC加盟国で日量2,930万バレルの供給が必要とし、前月見通しから17万バレル下方修正しました。来月のOPECとOPECプラスの会合では協調減産の延長や追加減産が見込まれています。
協調減産の拡大が期待されるも新型肺炎感染拡大リスクに注意
■新型肺炎の影響により、少なくとも1-3月期は中国などの経済成長が下振れるとみられ、感染拡大やその影響には注意が必要です。原油価格は、経済減速やOPEC非加盟国の供給増と、OPEC等の協調減産や地政学リスクの高まりによる供給不安の綱引きになりますが、減産規模が十分に大きくならない限り上値は重いとみられます。3月5、6日に予定されるOPECとOPECプラスの会合での減産協議の行方が注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格、新型肺炎の影響で下落…2020年2月』を参照)。
(2020年2月18日)
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