グローバル化が急速に進むなか、子どもに英語のみならず、国際感覚を直接現地で身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「海外留学」、「家族長期留学」等についての最新事情を解説する。今回は、「保護者ビザ」の基本と申請のポイントについて解説する。

「学校の入学許可証」をもとに学生ビザが発行される

多くの国で、中学生以上の留学はホームステイや寮があるために、親の同伴は必要なくなります。小学生までのお子さまの留学にはご両親のいずれかが付いていくことになりますが、そうなると出てくるのが「ビザ」の問題です。

 

◆基本的なビザの考え方

まず、ビザの基本について。ビザは、滞在目的に応じて審査基準が異なります。数日間の観光・通過滞在目的ならば比較的発行されやすいですが、留学・就労などの長期滞在目的の場合、その受け入れ保証がなければ発行されないことがほとんどです。

 

背景には「外国人労働者が流入することで、自国民の雇用に悪影響を与える」という考え方があります。親子留学の場合、お子さまのビザと親のビザを分けて考えます。お子さまは、受け入れ保証に該当する「学校の入学許可証」をもとに学生ビザが発行されます。

 

一方、親の場合は「子どもの付き添い」が目的ですので「保護者ビザ(ガーディアンビザ)」というビザが該当します。これらのビザは、それぞれの目的が曖昧にならないよう条件が設けられています。多くの場合、就労を禁止するケースがほとんどで、語学学校等への就学期間も制限されているのが特徴です。

 

「保護者ビザ(ガーディアンビザ)」の各国の申請条件

◆保護者ビザ(ガーディアンビザ)とは

一般的には、学生ビザ申請者の付き添いとして、その親・親族・法的な後見人が申請できるビザのことを指します。現在、保護者ビザ(ガーディアンビザ)の発給が可能な国は、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアの3ヵ国。各国の申請条件については次のとおりです。

 

【オーストラリア】※申請費AUD620

お子さまの学生ビザの期間に合わせて滞在が認められ、お子さまの年齢によっては保護者ビザ(ガーディアンビザ)が最長2年しか出ないこともあります。

 

<条件>

・学生である子どもが6歳以上であること

・学生ビザ保持者の親族(両親のいずれか、親権を有する者、親戚)である

・滞在できる十分な資金と帰国に必要な資金が準備できていること

・学生ビザ保持者に滞在先の提供、滞在中のケア・サポートを提供できること

・保険の加入(OVHC)

・子どもの人数にかかわらず、片親1人の付き添いが可能

・6歳以下の未就学児の同伴可能

・就労不可

・3ヵ月まで就学可能

 

【ニュージーランド】※申請費不要(ただし観光税別途支払い要)

最高12ヵ月の滞在が認められます。お子さまの学生ビザ更新時に再度保護者ビザ(ガーディアンビザ)の申請が可能です。

 

<条件>

・17歳以下、または現地校の1年生~13年生に在籍する子どもの親、または法的に認められる保護者である

・健康であること(6ヵ月以上滞在の際には胸部レントゲンを求められることも)

・滞在できる十分な資金と帰国に必要な資金が準備できていること

・学生ビザ保持者に滞在先の提供、滞在中のケア・サポートを提供できること

・子どもの人数にかかわらず、片親1人の付き添いが可能

・未就学児を申請に含められる

・就労不可

・週20時間まで就学可能(パートタイムコースなど)

 

【マレーシア】※申請費不要

マレーシアは移民局のルールが頻繁に変更されるので、常に最新情報の確認が必要です。学生はインターナショナルスクールが申請を行い、学生ビザが承認されてから、保護者ビザの申請を行います。どちらも学校が申請しますので、申請費が不要のケースがほとんど。細かいルールが明確ではない代わりに、学校や州によって対応が異なる点がデメリットです。

 

インターナショナルスクールの中には、学生ビザの申請を行わず「MM2H」という家族で滞在ができる別のビザを指定することもあります。この場合は、学校を通じてのビザ申請ではなく、移民局に直接申請をする必要があります。マレーシアへの留学は、ビザについて学校側と事前に打ち合わせをしておくことが非常に重要です(マレーシア留学とMM2Hビザについて・関連記事『「マレーシア」親子留学の学校事情…英国人の先生はお高い⁉』参照)。

「十分な資金」があることの証明も重要となる

◆保護者ビザ(ガーディアンビザ)申請のポイント

保護者ビザは、学生の保護者として付き添うことが目的ですので、まずは学生である子どもとの関係性をしっかりと証明できるかがポイントとなります。

 

一般的には日本の戸籍謄本を翻訳すれば証明できますが、離婚して単独親権をお持ちの方は注意が必要です。例えばオーストラリアでは離婚しても両親が親権を持つことが一般的ですので、ビザ申請の際に、離婚した以前の配偶者が同意していることを証明する必要があります。

 

また、相続などの理由で祖父母と養子縁組している子どもと、血縁上の親が留学する場合もあります。戸籍謄本を翻訳して提出しただけの場合、審査官によっては追加書類を求められることもあります。

 

さらに、十分な資金があることの証明も重要で、多くの場合は銀行から取得する直近の残高証明を使用します。具体的な金額にするとどのくらいが基準になるのか。以下は参考です。

 

【オーストラリア】※1AUD=78円計算

生活費(1年間):AUD21,041(約164万円)※親子2名分

6歳以下の扶養家族(一人あたり/1年間):AUD3,152(約24.5万円)※6歳以下の未就学児(弟・妹)がいる場合

学費(学生一人あたり/1年間):最低AUD8,296(約64.7万円)※学校による

航空券往復(一人あたり):AUD2,000(約15.6万円)

 

6歳以下の扶養家族(兄弟姉妹)がおらず、親子2名での渡航ですと、残高証明では最低260万円が必要になります。もし残高証明が取得できない場合、年間の収入を証明する書類(AUD72,592以上)が有効とされています。直近の収入を証明できる書類が準備できる場合には、566万円程度が参考値となります。

 

【ニュージーランド】※1NZD=75円計算

生活費(1ヵ月あたり):NZD1,000(約7.5万円)

※家賃支払い済みの場合(1ヵ月あたり):NZD400(約3万円)

 

家賃を支払っていない場合、年間ですと最低90万円の残高証明が必要になります。

 

上記はあくまで参考値です。明確にビザが承認されるという保証はなく、いわば審査官次第。そのため、弊社のケースでは申請内容をサポートできる書類をできるだけ揃え、残高証明も多めにご用意いただいています。

 

※ビザの情報は頻繁に変わります。上記の内容は2019年11月時点の情報ですので、申請の際には最新情報をご確認ください。

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