香港<ピックアップマーケット>
抗議デモの規模縮小、最悪期脱するも火種は燻る
【株式市場】いったんは相場底打ち
11月の区議会議員選挙における民主派の圧勝を経て、暴力的な抗議デモの規模は縮小、相場も落ち着きを取り戻している。いったんは香港に収益基盤を有する企業の株価が反発に向かおうが、持続性はなさそうだ。民主化を要求する香港市民(デモ隊)と香港・中国政府のスタンスの隔たりは依然大きく、リスクは解消されないため、相場の本格反騰も期待しづらいためだ。
【社会情勢】暴力的な抗議デモの最悪期は過ぎた模様
11月下旬に、警察が香港理工大学を包囲した際に、1000人を超えるデモ隊を逮捕した。その中に、「勇武派」と称される暴力的なデモ隊の指導的なメンバーが多数いたとされる。11月19日に警務処長(警察トップ)に就任した鄧炳強(クリス・タン)氏はデモ隊に対するタカ派的な姿勢で知られ、12月6日の北京出張の際に、中国共産党の支持をとりつけたとみられる。今後も節目の時期に暴力的なデモが行われるだろうが、警察は早期の取り締まりを強化しており、2019年後半のような大規模な社会混乱には陥らないだろう。
景気は年前半に底打ちへ
2019年7-9月期以降、デモによる社会混乱が拡大したことで、7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比▲2.9%まで落ち込んだ(季節調整済み前期比年率 では▲12.1%)。香港政府 は2019年の成長率見通しを▲1.3%と、2009年以来のマイナスを予想している。2020年前半にはデモの規模が縮小するとみられ、景気は底打ちするだろう。しかし、中国の成長率は2020年も鈍化する見通しであることから、景気持ち直しのペースは非常に緩やかなものにとどまり、年間でのプラス成長への転換は厳しそうだ。
ベトナム<ピックアップマーケット>
安定成長見通しで海外資金の流入継続を見込む
【株式市場】良好なファンダメンタルズは変らず上昇を見込む
2019年を通してVN指数はほぼ950から1000ポイントのボックス圏で推移した。足元でインフレ懸念が高まり市場心理が悪化しているが、中長期的なファンダメンタルズに悪影響を及ぼすものではなさそうだ。米中貿易摩擦の中、輸出が着実に伸びている。株価バリュエーションに割高感はなく、下値を切り上げていく展開を予想する。MSCI指数における新興国市場への格上げ観測もプラスに働こう。
【為替動向】ドンの安定性が高まる
従来、中国人民元との相関が高かったベトナムドンだが、8月以降の人民元安に追随することなく、安定的に推移している。低インフレ、経常収支黒字などベトナムドンが評価される要因が多く、ベトナムへの資金流入が継続している。人民元の動向には注意が必要だが、経常収支黒字、インフレ率の中期的安定、比較的高い経済成長率など、ベトナムの良好なファンダメンタルズがドンの安定性に寄与する動きが続くと予想する。
【マクロ経済動向】豚肉価格上昇で短期的にはインフレ率が加速
10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+7.0%と、7-9月期の同+7.5%から鈍化したものの、年間では+7.0%と政府目標の+6.8%を上回った。一方、12月の消費者物価は前年同月比+5.2%へ加速し、2019年では初めて政府目標の4%を上回った。現地メディア報道によると、ASF(アフリカ豚コレラ)の蔓延で豚肉価格が高騰したためである。1月下旬のテト(春節)を迎えるにあたり、短期的には期待インフレ率上昇に対する警戒が必要だ。仮に期待インフレ率が上昇すれば、一時的に景気に抑制的な圧力がかかる可能性がある。
インドネシア<ピックアップマーケット>
足元で業績は悪化方向だが、春先には景気底打ちを予想
【株式市場】景気底打ちによる市場心理改善に期待
政府は財政健全化を優先しており、財政政策期待は後退し、金融緩和も打ち止めという見方が強まっている。業績見通しはまだ悪化方向にあり、短期的に株価を押し上げる材料は乏しくなっているように見える。一方、2020年の春先あたりに景気底打ちの可能性も見え始めた。財政健全化による中長期的な通貨安定・インフレ抑制効果もあり、市場心理の改善が期待される。
【為替・国債利回り動向】景気持ち直しを予想
中銀は12月19日の金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を5.00%で据え置いた。政府・中銀は、2019年に景気が低迷した要因として、長期間にわたる経済政策の不透明性があったと指摘している。確かに4月17日に大統領選挙・国会選挙が行われた後、第二期ジョコウィ政権の閣僚が発表されたのは10月23日であり、この間、特に自動車などの高額消費には様子見姿勢が広がった。繰り延べになっていた消費需要は2020年に顕在化する可能性がある。2020年度予算では燃料費を中心に補助金が引き続き削減されているが、ジャカルタなど大都市のガソリンスタンドでは補助金付きのガソリンをみかけなくなっており、大都市の居住者はオクタン価が高い補助金なしのガソリン使用に慣れ始めているようだ。原油価格上昇に対する耐性は強まりつつある。
財政規律が国債市況を下支え
スリ・ムルヤニ財務相は財政規律を基本方針に掲げている。景気持ち直し期待は国債利回りの上昇要因となるが、財政規律が国債市況を下支えするだろう。政府は2021年から2023年にかけて法人税率を25%から20%へ徐々に引き下げる方針を決定している。財政への影響は2021年度の予算案(毎年8月に発表)で明らかになる。