タイ<ピックアップマーケット>
バーツ高が続き、業績回復は遅れる見通し
【株式市場】業績不安、割高な株価バリュエーション
バーツの高止まり、企業業績見通しの悪化が続き、相場は低迷してる。金利水準は既に低く、追加利下げがあってもその効果は限定的だろう。経常黒字が盤石なため、輸出企業業績にマイナス影響を及ぼすタイバーツ高は修正されにくい。株価下落後もバリュエーションの割高感は修正されておらず、他市場と比較して投資魅力度は劣る。
【為替動向】バーツ高圧力が続く
12月のタイバーツ対米ドルレートはおおむね30前後で推移したが、下旬には29台へ上昇した。バーツ高の背景には、経常収支黒字とインフレ率の低位安定に対する高い評価がある。中国からタイへの生産ライン移管など中長期的な動きも踏まえると、バーツ高圧力が続きそうだ。中銀はバーツ高抑制のための利下げを行わない意思を明確にしつつ、バーツ高への懸念を表明しており、何らかの追加対策が打たれるだろう。市場メカニズムに反する規制が導入されるようなことがあると、金融資産への悪影響も懸念され留意が必要だ。
【マクロ経済動向】景気下振れ圧力が続く
タイへの観光客数は11月に前年同月比+5.9%と、10月の同+12.5%から鈍化した。2018年7月のプーケット島のボート事故によるベース効果が薄れ始めた可能性がある。自動車産業を中心に製造業のサイクルは下向きにあり、全体としては景気下振れ圧力が続いている。特に基幹産業である自動車に関しては、シェアリングサービスの普及に伴う自動車需要の構造的低迷も指摘されている。バーツ高の影響もあり、製造業が底入れするにしても2020年の持ち直しペースは緩やかなものにとどまりそうだ。
主要アジア各国・地域株価指数推移
主要アジア各国・地域10年国債利回り推移
主要アジア各国・地域為替レート(対米ドル)
※参照
各国の株価指数の名称は下記の通り。
●中国:上海総合指数、●香港:ハンセン指数、●韓国:韓国総合株価指数、●台湾:台湾加権指数、●インドネシア:ジャカルタ総合指数、●マレーシア:クアラルンプール総合指数、●タイ:SET指数、●ベトナム:ベトナムVN指数、●シンガポール:シンガポールST指数、●フィリピン:フィリピン総合指数、●インド:SENSEX指数、●オーストラリア:ASX200指数
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『両政府の署名で貿易戦争も雪解けムード⁉ 米中貿易協議の展望』を参照)。
(2019年1月9日)