長期金利は夏場にかけ大幅低下
FRBは10年半ぶりに利下げ
■2019年の主要国の長期金利(10年国債利回り)は、米中貿易摩擦の激化に伴う世界的な景気減速懸念を背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)が10年半ぶりに利下げを実施したことなどを受けて、夏場にかけて大きく低下しました。米長期金利は、年初の2.6%台から、米国が対中関税措置第4弾を表明した8月には1.4%台まで低下し、一時12年ぶりに2年と10年の国債利回りが逆転する「逆イールド」が発生しました。欧州では多くの国の長期金利がマイナス圏に沈みました。
■FRBは7月以降3会合連続で利下げを行い、世界の多くの中央銀行が追随しました。欧州中央銀行(ECB)は9月にマイナス金利の深堀と量的緩和再開を決定しました。日銀は金融政策を維持しましたが、10月にフォワードガイダンス(先行きの指針)を緩和方向に変更しました。
■主要国の金融緩和は続いたものの、各国の長期金利は米中通商協議の進展期待などから、秋口から年末にかけてやや上昇しました。
新興国の長期金利も低下
FRBに追随し、各国が相次ぎ利下げ
■新興国の長期金利も夏場にかけ大きく低下しました。世界景気が減速するなか、FRBが金融緩和に舵を切ったことで、自国の通貨安圧力が後退し、多くの新興国の中央銀行が相次いで利下げを行ったことが背景です。その後も新興国の長期金利は横ばい圏で推移し、米国ほど上昇していません。
世界景気の持ち直しで長期金利は緩やかに上昇
■米中が通商協議において「第1段階」の合意に達したことで貿易摩擦に歯止めがかかり、2020年の世界経済は持ち直すことが見込まれます。ただし、低インフレは継続するため、FRBは2020年にわたり、現状の政策金利を据え置くとみられます。米国の長期金利は緩やかに上昇するものの、レンジ内の動きにとどまる見込みです。ECBは金融緩和を強化する可能性がありますが、欧州の長期金利は米国に概ね連動すると思われます。日銀は現状の金融政策を維持すると考えられ、日本の長期金利はもみ合いを続けそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年の世界債券市場の振り返り…長期金利低下の背景は?』を参照)。
(2019年12月26日)
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