ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米中通商交渉の「第1段階の合意」が公表されました。今後は来年1月とも想定されている合意文書への署名、時期は未定ながら更なる合意に向けた第2段階へと進展も期待されます。当面は市場の落ち着きも想定されますが、市場の反応を見ると、合意を歓迎する反面、今後の展開に慎重な面も見られます。

米中通商交渉:米中が貿易合意の第1段階で合意、当面は摩擦激化の懸念後退か

米中両国政府は2019年12月13日、米中貿易交渉で「第1段階の合意」に達したと発表しました。米国が15日に予定していた中国製のスマートフォンなどを対象とした15%の関税1600億ドル分の発動(「第4弾」の残り上乗せ分)を見送るとしています(図表1参照)。

 

出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米中通商交渉を巡る主なイベント(関税は課税時期) 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

また、「第4弾」で適用済みの追加関税1200億ドル分については税率を7.5%に引き下げるとしています。米国と中国が、米中通商交渉の「第1段階の合意」を発表したことから、当面は貿易摩擦激化の懸念の後退が期待されています。

どこに注目すべきか:米中合意、USTR、ファクトシート、第2段階

米中通商交渉の「第1段階の合意」が公表されました。今後は来年1月とも想定されている合意文書への署名、時期は未定ながら更なる合意に向けた第2段階へと進展も期待されます。当面は市場の落ち着きも想定されますが、市場の反応を見ると、合意を歓迎する反面、今後の展開に慎重な面も見られます(図表2参照)。

 

日次、期間: 2018年12月17日~2019年12月16日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2] オフショア人民元インプライドボラティリティの推移 日次、期間: 2018年12月17日~2019年12月16日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

米中通商交渉の動向を反映する傾向が見られたオフショア取引人民元の変動性(インプライドボラティリティ、1年物)の動きを見ると、関税第3弾の税率引き上げや関税第4弾の公表時期に急上昇しました(図表2参照)。

 

一方、米中両国が関税をかけ合う貿易戦争を始めた18年7月以降、トランプ米政権が対中制裁関税を一部とはいえ緩和合意を公表するのは初めてながら、市場の反応は小幅にとどまりました。背景として、10月頃から米中双方合意を示唆していたため市場は既に織り込んでいたと見られます。

 

2点目は、今回の合意内容に米中で微妙なずれがあることです。例えば、米通商代表部(USTR)が公表した「ファクトシート」の貿易拡大の項目では、中国が米国からの財・サービスの輸入を向こう2年、17年水準に比べ2000億ドルを増やすと書かれていますが、中国は数字の公表に消極的です。ファクトシートに示された7項目それぞれに、中国との間で食い違いは残っている模様です。もっとも、ここまで高まった市場の認識を反故にするのは、トランプ政権といえど、さすがに考えにくいですが、ノイズ程度は考えられます。

 

3点目は、今回の合意で見送られた今後に残された課題が重いと受け止められたためと思われます。今回の関税引き下げは第4弾の一部に過ぎず、中国が求めていると見られる第1弾~第3弾の関税引き下げは見送られています。合意内容の詳細は来年1月の署名を目指す、86ページともいわれる合意文章の内容を確認する必要はありますが、大部分の関税引き下げが先延ばしされたのは、知的財産、技術移転、農業、金融サービス、通貨政策、貿易拡大の各項目に、多くの課題が残されているためと見られます。

 

なお、残された課題を協議する「第2段階の合意」については、開始時期を巡り、すぐに開始したいトランプ大統領と開始に慎重なUSTRとの間にさえ食い違いも見られます。

 

米中が通商交渉で合意を表明できたことで、当面の安定は期待できそうですが、今後も注視は怠れないと思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中通商交渉「第1段階の合意」…市場は歓迎半面、慎重さも』を参照)。

 

 

(2019年12月16日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録