英語力の重要性がますます増す一方で、日本人の英語力は伸び悩んでいます。日本国内で、英語が話せない親のもとに育ちながら、ネイティブ級の英語力を手に入れる方法はないのでしょうか。本記事では、就学前の子どもをバイリンガルに育てるために、親子でできる「ライティング」の習慣を紹介します。

幼児期なら単語の意味・文法も「書く」ことで身につく

幼児期ではなく、成長してから英語を学ぶ場合は、単語の意味を日本語で知る、文法の基本的なルールから学ぶ、などが効果的だとされています。しかし幼いころから英語を書き始める場合は、その必要はありません。単語の意味や文法は、多くの英語に触れ、自分で書いているうちに、自然に身についていくものです。

 

自学自習という独特の学習方針で知られるスクールでは、まず「聞く」「話す」を徹底的に鍛えてから、テキストに書かれている英語をまねして自分で書く練習をします。その際、「主語の後に動詞がくる」といった文法を教えることはなく、I eat bread.(私はパンを食べる)といった文を書きながら、語順を自動的に体得していきます。

 

三人称単数現在といった変化も、「三人称だから動詞にsをつける」というのではなく、HeやSheの後にくる動詞にはsがつくということを、例文を見たり聞いたりしながら覚えます。「そういう決まりだから守らなければならない」というわけではなく、普段触れている自然な英語として習得するのです。

「英語を話せる」と「文法の理解」は別の話

私自身は中学生のときからカナダにいたので、学校で文法を一から習ったという経験がなく、今にして思えば、日本の中学生が習うような「過去分詞の不規則変化」といったものについて、あまり詳しくは知りませんでした。

 

しかし、それはカナダの普段の生活の中で使う必要がなかったからであり、規則にあるからとりあえず覚えるといったことはしなかったためです。

 

帰国後に自分で英語の文法項目を見直してみると、「なるほど、だからこういう文になっているのか」と納得するところがありましたが、そのように感じることができたのは、やはり成長して理論的な思考ができるようになっていたからです。

 

一方、子どものころに英語圏に住み、不自由なく英語が話せるようになった子どもでも、日本の学校に入ると、文法の規則を理解するのに苦労するという話があります。自由に英語を操るということと、文法を理解するというのは、まったく別の話だと思っていいでしょう。

 

特に、小学校に上がる前の子どもには、自分から興味を持って文法の規則を学ぶのは困難だと思います。

アルファベットが書ければ、ひらがなにも興味がわく

子どもが字を書き始めるようになるのはおおむね4歳くらいからで、3歳から書き始める子どももいれば、5歳でも書くことにあまり興味を示さない子どももいます。そんな中、「ひらがなも書けないのに、英語を書く練習をさせていいものだろうか」と悩む人もいることでしょう。

 

ライティング力において大事なのは、まず鉛筆や紙を使って「文字を書く」という行為自体を覚えさせることです。その点、アルファベットのほうがシンプルで書きやすいので、ひらがなよりも早く書くことができるようになります。

 

最初は鉛筆を握って、紙に線や円を書くことから始めましょう。小さい子どもが使う遊び絵本に、迷路をたどって線を書いたり、点を結んで動物の形を描いたりするものがありますが、それによって書くことへの第一歩、「運筆力」が養われるのです。

 

アルファベットを書くときも、子どもは最初文字を書いているというよりも、絵や記号を描いているのと同じ感覚で取り組むことでしょう。ⅰや l など単純な文字があるアルファベットは、日本語の文字よりも入りやすいのです。

 

字が書けるようになるには、すでに英語の音が身についていて、聞いたり話したりできるようになっていることが前提です。子どもは、自分が知っている音を文字でどう表すかということを学んでいくのです。

 

アルファベットを書き始めるときは、日本でもよく知られている「ABCの歌」を聞きながら練習すると、覚えやすいでしょう。子どもの頭の中にはすでに音が入っていて、「A」「B」「C」という文字を見ながら、音と字を結び付けていくのです。

 

アルファベットが書けたら、今度はその文字を見ながら自分で歌ってみるといっそう効果的です。次第に「エイ」という音を聞いた瞬間に「A」という文字が頭に浮かぶようになります。

 

文字が書けるようになるには、ひたすら練習することが大切です。かといって、「Aを10回書いてみなさい」と強制したのでは、子どもは興味を示しません。

 

例えばリンゴの絵を見ながらAPPLEの「A」を書く、クマの絵を見ながらBEARの「B」を書くといったように、子どもの関心に合わせて書く機会を設けるといいでしょう。

 

中には上手に書けない字もあるかもしれませんが、最初のうちはうまくできなくて当然です。上手に書けたところに目を向けて、「よく書けたね」「上手になったね」とほめてあげましょう。子どもはほめられるとうれしくなって、また自分から書きたいという気持ちをかき立てられるはずです。

 

アルファベットが書けるようになったら、次にやってほしいのがカタカナの書き取りです。文字を書く練習というと、どうしてもひらがなから覚えさせたくなるものですが、実は複雑な曲線があるひらがなよりも、シンプルな直線が多いカタカナのほうが簡単です。最後にひらがな、それから漢字へと移行していくようにすると覚えやすいでしょう。

 

「もっと書いてみたい」という子どもの気持ちを大切に

子どもが英語を書いているとき、「つづりが間違っている」「そこは大文字で」など、いろいろと気になることが出てくるかもしれませんが、細かいミスは、あまり気にする必要はありません。

 

日本語の書き間違いを自分で自動的に修正することができるように、日々正しい英語に触れていると、自分から間違いに気づくようになります。

 

例えば、policeをpolisと書いていたとしても、それは音とつづりの関係が頭に入っているということですから、そう深刻な間違いではありません。policeという言葉を繰り返し目にしているうちに、自然に正しいつづりで書けるようになります。

 

それよりも、「字が書けるようになった」「もっと書いてみたい」という子どもの気持ちを大切にしてあげてください。

 

幼い子どもにとって、字を書くのは絵を描くのと同じような、遊びの感覚で取り組めるものです。本のまねをしながら書いているうちに、文字が単語に、単語が文になり、次第に正しいつづりや文法を自分のものにしていくはずです。

 

 

三幣 真理

幼児英語教育研究家

バイリンガルは5歳までにつくられる

バイリンガルは5歳までにつくられる

三幣 真理

幻冬舎メディアコンサルティング

グローバル化が叫ばれている昨今、世間では英語力が問われる風潮になりつつありますが、日本の英語力は依然として低いまま。 学校での英語教育も戦後間もない頃からのスタイルとほとんど変わらないのが現状です。 そのためか…

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