働き方改革も後押し!今の日本にペーパーレス化が必要なワケ

帳簿や記録など、これまで紙で保存しておいた情報をデータ化する「ペーパーレス化」。ペーパーレス化が進む海外諸国と比べ、日本は遅れを取ってしまっているといえます。対して、自社は先駆けてペーパーレス化に取り組めていると思っていたら、間違った方法を行ってしまっているケースも。本記事では、ペーパーレス化普及に取り組む横山公一氏が、日本におけるペーパーレス化の現状を解説します。

「ペーパーレス化」が仕事に変革をもたらす

「オフィスのペーパーレス化」「ペーパーレスオフィス」。数年前からこんな言葉があちこちで語られ、多くの企業によって実践されています。もちろんその進捗は企業によってまちまちです。あなたの会社はいかがでしょう? どこまでペーパーレス化が進んでいますか? それによって、何らかの変化は起こったでしょうか?

 

「当社はペーパーレス化進んでいるよ」という会社の方々。素晴らしいです。ただ、そういう会社は、まだまだ日本では少数であると思います。まずは成功……と安心して、さらなるペーパーレス化へと進まれると良いでしょう。

 

「思うように進まなくて……どうすればいいかな?」と悩んでいる会社や、「ペーパーレス化といってキーワードとしては理解できるけど、何から手を付けていいのかわからないよ」と思考停止に陥っている会社が多いかと思います。

 

筆者は、大学卒業後、公認会計士/税理士として、大手監査法人にて勤務。その後、自身で金融分野に特化した会計事務所を起業し、現在は企業・オフィスのペーパーレス化を実現するためのITサービスを提供する会社の代表をしております。

 

創業以来、多くのお客様のご相談を受けておりますが、前述のとおり、「ペーパーレス化」について悩まれていたり、何をすればいいのかわからず、取り組みが進んでいない会社を数多く見てきました。

 

そういった皆様に「ペーパーレスとは何か?」「ペーパーレス化を行うことで、会社が、業務がどのように変わるのか」を理解していただきたいと思い、書籍『オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門』を出版させていただくことになりました。

 

「ペーパーレス化」と聞くと、多くの方は次のような回答をされます。

 

「ペーパーレス化って……これまで紙に落としていた情報をデータで保存する、ということでしょう?」

 

「プリントアウトしていた書類をPDF化すること?」

 

いずれも正しい認識です。帳簿や記録など、これまで紙で保存しておいた情報をデータ化することは、まさに「ペーパーレス化」にほかなりません。

 

しかし、データ化した後に、紙の書面はそのまま捨てていいのでしょうか? 答えはNOです。会社内で取り扱う帳簿や記録などの文書情報は、税法や会社法などの様々な法令により「書面にて保存・保管すること」が取り決められています。

 

2005年にe-文書法という法律が制定され、これらの保存・保管を「電磁的手法(つまり電子データ)」にて保存・保管することがOKになったのですが、ほとんどの企業にはこの法令は認知されておらず、「PDF化」=「ペーパーレス化」だと思っている企業が多いです。これらの書類を法令に準拠した形で電子データに変換し保存・保管して、初めて「ペーパーレス化」、つまり紙の書面は廃棄できるようになります。

 

そして、今まで紙で保存・保管していた情報をデジタル化することで、データの活用による業務改善、コスト削減、コンプライアンス強化などといったビジネスへの貢献につなげることもできます。「書類のPDF化」を「法令準拠」と「データのデジタル化」、これを同時に行うことでこそ、真のペーパーレス化が実現可能なのです。

 

日常的に社内でやりとりする書類……たとえば会議の資料や稟議書、各種の申請書類などもデジタルデータでのやりとりにすれば、プリントアウトの手間がいりませんし、用紙や印刷費の節約にもなります。時間的にもコスト的にも効率が良いはずです。

 

さらに取引先や顧客など、社外とのやりとりもペーパーレス化するとどうでしょう。見積書や請求書、提案書などをペーパーレス化してメール送付すれば、ほぼリアルタイムで先方に届きますから、郵送のタイムラグがなくなります。送料もカットでき、コストダウンにもつながります。契約書などは双方の間を複数回、行ったり来たりするものですが、これもペーパーレス化すれば、大幅な時間短縮につながり、業務が一気にスピードアップします。

 

「いや、さすがに契約書はまずいでしょう?」

 

そう思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。ペーパーレス化の進んだ海外諸国と比べると「遅まきながら」の感がありますが、日本でも2001年になって、いわゆる「電子署名法」が施行されました。これまで紙の原本を用いていた他社との契約が、電子署名を付したデータファイルのやりとりでもできるよう、法整備がなされたのです。ペーパーレス化を下支えするITインフラも、セキュリティの面も含めて十分に普及しています。すでに日本におけるペーパーレス化への流れは、力強く動き始めているのです。

 

ペーパーレス化への流れは動き始めている
ペーパーレス化への流れは動き始めている

 

ペーパーレス化により「働き方」を変える

私が声高にペーパーレス化を叫ぶ理由の一つは、日本の現状と将来への不安のためです。

 

皆さんもご存じのように、現在の日本は少子高齢化に歯止めがかからず、産業界は軒並み慢性的な人材不足に苦しんでいます。現状の傾向が今後も続けば、2060年には2.5人に1人が65歳以上という、超高齢化社会が到来するという試算もあります。そのような状況になってしまったら、日本の生産力・経済力は、見る影もない状況に陥ってしまうでしょう。

 

[図表]年齢区分別将来人口推計(内閣府『平成29年版高齢社会白書』)
[図表]年齢区分別将来人口推計(内閣府『平成29年版高齢社会白書』)

 

こうした予測は、私一人のものではありません。すでに行政もこの問題を憂慮し、さまざまな対策を打っています。その代表的なものが「働き方改革」です。

 

正社員として組織に属し、午前9時から午後5時まで、オフィスに詰めて業務をさばく。そんな固定的な働き方を脱却し、時短勤務やフレックス勤務、ネットを使ったテレワーキングなどを組み合わせて、柔軟性と効率性に優れた就業形態を作り上げていく。これは、不足している労働力を補うためには有益な手段でしょう。現場をリタイアしたシニア層や、子育てがひと段落した主婦層を再びビジネスの現場に呼び込むには、有効な方法ではありました。

 

ですが、厚みを増した労働力を使って旧態依然とした非効率的な業務をさばくのは、どう考えても不合理です。人手が増えたならば、その人手を効率的に活用することで、最大限の効果を生み出すことを考えねばなりません。

 

そこで重要になるのが「ペーパーレス化」なのです。最近、注目されているAIやRPA(Robotic Process Automation =ロボットによる業務自動化)なども、ペーパーレス化すなわちデジタル化して初めて活きる技術です。紙をいくらRPAにかざしてみても動きません。

 

現在の「人口ピラミッド」を見ると、最低でも向こう10年ほどは、新卒人材は減少傾向が続きます。人材不足という産業界の悩める状況は、当分解消されそうにありません。ならば新卒以外の人材で補強する必要がありますし、その人的リソースを有効活用していくことも必須です。

 

そうした視点に立つと、ペーパーレス化による業務の効率化は、企業の現場に非常に大きな恩恵をもたらしてくれます。少ない労働力を効率的に活用することによって業務上の無駄を省き、それによって組織の活力をさらに高めることが可能になるのです。

ペーパーレス化により「セキュリティ」を変える

紙の書類からデジタルデータへ。この変換にあたって多くの人々が気にするのがセキュリティの問題でしょう。データの流出・漏洩、さらには悪意のある改竄といった事件は、今もしばしばニュースになります。そのたびに「やはりデジタルに依存し過ぎるのは問題だな」と感じる人も多いのではないでしょうか。

 

確かに、このような事例は決してゼロになることはないでしょう。悪意のある人間がいる以上、こうした事例を根絶することは困難です。ですが漏洩や改竄に対する強度でいえば、アナログだから安心だというわけではないのです。鍵付きのキャビネットや金庫に保管してある重要書類も、その鍵を管理している人間にとっては、食器棚からコーヒーカップを取り出すのと大差ありません。しかもその鍵を何らかの方法で複製してしまえば、誰でも重要書類にアクセスできることになります。その書類が改竄されたとしても、いつ、誰が行ったのか、追跡することができません。

 

一方、デジタルデータを守るための取り組みは進んでいます。顧客からデータを預かるデータセンターやクラウドサービス会社にとって、セキュリティの堅牢さは、自社サービスの信頼性に直結しますから、常に「預かるデータをどう守るか」に着目し、セキュリティを強化しています。また、何者かによってデータの閲覧や改変が行われたとしても、それがいつ、誰によってなされたのかを追跡する技術が開発され、すでに実用化されています。

 

ことセキュリティに関していえば、すでにデジタルはアナログ以上の堅牢性と追跡性を実現しているのです。

ペーパーレス化により「時間の使い方」を変える

情報をデジタルで保管すると、必要なときにほぼリアルタイムでアクセスできます。そのデータにアクセスできるスタッフを限定しておけば、わざわざ鍵付きのキャビネットに保管しておく必要もありません。倉庫から重たい段ボール箱を引っ張り出して、古い書類の山をあさるようなことをしなくても、適当なワードで検索するだけで必要な情報が手に入るのです。

 

他のスタッフとの共有も簡単ですし、その情報をもとに新たな資料を作ったりするときも、容易に加工や編集ができます。つまり情報の整理や保管だけでなく、再利用も素早く簡単にできる、というわけです。

 

資金や人材、ノウハウなど、企業活動には多くのリソースが必要ですが、「時間」だけは、新たに作り出すことができません。そしてすべての人に対して平等で「1日=24時間」と決まっています。その限りある時間をいかに効率良く使うかによって、業務全体の効率が変化していきます。

 

その一点を考えてみても、ペーパーレス化による計り知れないメリットがイメージできるのではないでしょうか。

1日でも早く、その一歩を踏み出す

ペーパーレス化を果たすとどうなるか。その概略をお話ししてみました。ですがペーパーレス化がもたらす本当の恩恵は、さらに先にあります。

 

時間と手間、コストが大きく圧縮されるとなると、まず経費の無駄が抑えられます。社員の手間と時間を、より大切な作業に振り分けることができます。作業効率が上がり、同じ時間内でより多くの仕事、あるいはより質の高い仕事ができるようになります。それによって残業が減るならば、さらに好ましいことです。

 

こうした環境は、社員のメンタルにも良い影響を及ぼすでしょう。集中力は高まり、優れたアイデアが生まれる期待も高まりますし、モチベーションアップにもつながるでしょう。ペーパーレス化は単に「紙を使わないようにする」というだけでなく、その先に多くのメリットが生まれるものなのです。

 

現在の日本では、多くの企業が人材不足に悩んでいます。ですが1人の人間が1日にできる作業量には限界がありますし、それを超えて業績を伸ばそうとすれば、大きな無理が生じます。

 

ならば1日も早くペーパーレス化に踏み切り、業務の効率化と生産性の向上を目指すべきです。競合他社に先駆けて、まずあなたが動くべきでしょう。

 

今、ペーパーレス化に踏み出すか、踏み出さないか。それは経営トップの判断次第です。今決断しなければ、5年後、10年後の両社の間には、挽回不能なほどの大きな差が生まれているはずです。もう、ノンビリしていられないのです。

 

 

 

横山 公一
ペーパーロジック株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
公認会計士・税理士

 

ペーパーロジック株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
公認会計士・税理士 

1991年、監査法人トーマツに入所し、監査業務、株式公開支援業務、関与先のABS発行の会計税務等を担当。
1999年、創業メンバーとして金融特化型の会計事務所を設立、代表パートナーとして同社を取扱ファンド数1,500、管理金額4兆円へと成長させ、金融特化型会計事務所としては国内最大手にまで成長させる。ファンド管理のスペシャリスト。

<略歴>
・学習院大学法学部政治学科卒業
・公認会計士 税理士
・一般財団法人日本情報経済社会推進協会 インターネットトラスト研究会委員
・一般財団法人日本情報経済社会推進協会 電子契約ワーキンググループ委員
・監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)出身

著者紹介

連載オフィスの生産性革命!電子認証ペーパーレス入門

本連載は、2018年10月13日刊行の書籍『オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門』(TCG出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門

オフィスの生産性革命! 電子認証ペーパーレス入門

横山 公一(著)、久野 康成(監修)

TCG出版

「ペーパーレス化」=「PDF化」だと勘違いしていませんか? 「書類のPDF化」を、「法令準拠」と「データのデジタル化」と併せて行うことでこそ、真のペーパーレス化が実現可能なのです。 本書では、正しいペーパーレス化…

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