難しいと言われる医学部受験だからこそ、基礎固めが重要です。今回も引き続き、教科別に基礎を固める勉強方法について見ていきます。本連載では、これまでに4500人以上もの受験生を医学部合格へと導いた予備校講師・可児良友氏が、医学部合格に至る「効率のいい道筋」を紹介します。

「木を見て森も見る」姿勢で理解すれば、定着が早い

生物の基礎を固めるための勉強方法

 

生物の学習において最も核になることは、基本的な用語や仕組みを正確に理解し、確実に暗記することです。各単元の生物現象は、仕組みや発現の仕方に縦横の「つながり」があるので、覚えることは多いものの、この「つながり」が理解できていれば定着は早くなります。ですから、生物の基礎を固めるためには、教科書を読むことが一番の基本になります。まずは教科書を章ごとにしっかりと読んで内容を理解しましょう。その際に、文章だけを読み進めるよりも、図などを併用しながら確認していくと理解がしやすくなります。

 

例えば腎臓における「ろ過」や「再吸収」を学ぶ際には、『スクエア最新図説生物』(第一学習社)などの資料集に掲載されている図を用いて、教科書の文章に書かれている「血液から原尿へとこし出される物質の流れ」や「原尿から血液へと再吸収される物質の流れ」を視覚的にも捉えましょう。その後、再度自分の頭の中で物質の流れをイメージ化することによって、文章を読んだだけのときとは比べ物にならないくらい理解度が深まります。

 

各単元の内容をおおむね理解できたと感じたら、次は教科書の章末問題や『セミナー生物基礎・生物』(第一学習社)などの教科書傍用問題集の基本問題を解きながら、覚えるべきことを覚えるとともに、本当に理解ができているかを確認します。その際には、ただ単に答えを覚えるだけではなく、他の人に語句の意味や問題への考え方を説明できるくらいまで理解をすることを目標としてください。基本問題だからといって軽んじるのではなく、スラスラと解けるまで繰り返し解くこと、そしてそのことを通して各単元の内容や生物現象をそれぞれストーリーのように自分の言葉で説明できるレベルまで理解を深めることを意識して学習してください。

 

なお、初めて生物を学習する場合、次々と新しい情報をインプットしていく必要があり、最初の頃に学んだことを忘れてしまうことがよくあります。それを防ぐためにも、教科書の章ごとに学習を進めながら、2~3章前の内容について教科書傍用問題集の基本問題を解き直す「復習」を同時に進めることが重要です。また、知識の定着に不安がある受験生には、市販のサブノートなどを使って学習内容をまとめる作業をお勧めします。

 

生物の計算問題が苦手という人もいると思いますが、単純に計算そのものが苦手というよりも、式の立て方や公式の使い方がわからないということが多いのではないでしょうか。これは、公式の成り立ち・意味や、公式の元になる生物現象そのものの理解不足が原因になっていることがほとんどです。公式や計算方法を丸暗記しているだけでは、典型的な問題には対応できても、少し条件や問われ方が変わると通用しません。

 

また、呼吸やアルコール発酵の反応式が書けない、DNAの複製・転写・翻訳の仕組みがきちんと理解できていない、運動神経の興奮から筋収縮までの流れが説明できない、など、生物現象そのものを正確に理解していなければ当然ながら式は立てられません。それだけではなく、現象そのものの理解不足は、計算問題以外の知識問題や考察問題においても致命的です。したがって、公式や解き方を丸暗記するのではなく、公式そのものの成り立ち・意味や、使い方、そこで扱われている現象をしっかりと理解して立式する姿勢を身につけることが重要です。

 

生物学は科学でありながら多様性が極めて高い学問です。普遍性や再現性が求められるのが科学の原則ですが、生物学の場合は、適者生存という進化論(ダーウィニズム)をベースにしつつも、進化の過程で偶然そうなったという生物現象も少なからずあります。そのような非合理的な現象も含めて多種多様な生物現象を進化の結果の物語として捉え、その中に共通性を見出していく柔軟な姿勢が必要です。

 

また、生物学のもう一つの特徴としては、分子レベルで細胞の特徴を学び、地球レベルで生態系を学ぶというように幅広い階層性があります。それぞれの階層間の関連を意識しながら、「木を見て森も見る」という姿勢で学んでいくことが重要になります。

可視化できない「力」を、自分の中で明確にイメージ

物理の基礎を固めるための勉強方法

 

物理は、苦手意識のある人にとっては、理系科目の中で最もとっつきにくい科目ではないでしょうか。高校物理は力学の単元から始まりますが、可視化できない「力」というものを自分の中でイメージした上で、さらに計算等の処理をしなければならないことが、そのとっつきにくさの原因と思われます。苦手意識を克服し、物理の基礎力を身につけるためには、①イメージを明確化する、②公式・法則の使い方を理解する、③物理の計算処理に慣れるの3つのステップで学習を進めてください。これらについて、力学分野を例に挙げながら説明をしていきます。

 

物理の問題を読んだ際に、まず真っ先にやってもらいたいことが「イメージの明確化」です。少しこまかい話になりますが、物理の問題では対象としている物体に外部から力(外力)がはたらいている場合と、対象としている物体のグループ内でお互いにおよぼしあう力(内力)しかはたらいていない場合では、式を立てるときの方針が大きく異なります。

 

そのため、問題を読んだらまずはどのような力がどちら向きにはたらいているのかを図中に矢印(ベクトル)で書き込む習慣を必ずつけましょう。また、「物体Aが物体Bを右向きに押す力」「物体と床の間にはたらく進行方向と逆向きの摩擦力」といった具合に、それぞれの力の種類と向きを言語化してみましょう。このように、目には見えない力というものを、矢印(ベクトル)という形で可視化し、言語という形で具体化することが、物理の問題を解いていく上での一番の土台となります。

「なぜその公式・法則を使うのか?」を理解する

次に、公式・法則の使い方を確実に理解します。「公式・法則の使い方」と表現すると、文字式で表現されたそれらを暗記して、ただ数字や文字をあてはめればよいと考える生徒が多いようですが、大切なのは「どのような場面で公式・法則を使うのか」を理解することです。

 

例えば、「物体にFAとFBの2つの力がはたらいていて、物体が静止(または等速直線運動)している場合」には、2力がつりあっていることになり、『力のつりあいの公式FA=FB』を用いて立式をすることになります。また、同じく「物体に一定の大きさのFAとFBの2力がはたらいていて、物体が運動している場合」には、FAとFBの合力Fによる等加速度運動をしていることになりますから、『運動方程式F=ma』を使った立式になります。このように「〇〇なのでXXの公式・法則を使う」といったように言葉で説明できるようになることこそが「公式・法則の使い方を理解する」ということです。

 

また、正確に公式や法則を使えるようにするためには、まずは教科書などを使ってその成り立ちや意味を正確に理解することが不可欠です。なお、熱力学の分野では、公式を導き出す過程そのものを問う問題も多くの大学で出題されています。

 

ここまでの2つが物理の基礎を身につけるための大きな柱となることなのですが、同時に、物理を学ぶ多くの生徒が苦労をするポイントでもあります。どうしても自分ではうまくイメージがつかめない、立式の方針が立てられないという場合には、個別指導などできめ細やかなレクチャーを受けた方が、物理に対して最初に感じる壁を越えて、効率的・効果的に学習をすすめられるでしょう。

 

最後に、物理の計算処理に慣れることも重要です。物理では、文字を用いた煩雑な計算を求められることが多々あります。これはとにかく慣れていくしかありません。そのためにも普段から、途中の計算を省略せずに、速く正確に手を動かしながら計算する練習をしましょう。むろん物理だけでなく、数学の学習をする際にも同じことを意識すべきです。

医学部受験生でも英単語の優先順位は「一般英単語」

教えて!可児先生 基礎固め編

 

<英語>

 

Q. 医系の英単語を覚える必要はありますか?

 

A. 答えはYes。けれど、優先的に覚える必要はありません。

 

国公立の単科医科大や私立大医学部の入試では、毎年のように医療系の長文を出題する大学もあります。特に東邦大学では、専門的な内容・語彙を含んだ医療系長文が出題され、難解な語彙にも脚注が付きません。しかし、その他の大学では専門的な語彙には脚注が付きますし、文脈から「これは体の部位を示していそうだな」、「これは何かの病名だな」くらいは類推でき、設問の解答には影響しないことがほとんどです。したがって、一般的な英単語集で一般的な語彙力を鍛えることのほうがずっと重要です。

 

とは言っても、infection(感染)、artery(動脈)、embryo(胎児)程度の英単語は知っていてほしいですし、「病気」を表す語として、disease/sickness/disorder/ailmentなどの英単語が使われることは勉強しておいてほしいところです。「治療」という意味でも、treatment/therapy/care/cure/heal/remedyなどの英単語が使われます。医療系の単語集まで購入して勉強する必要はありませんが、過去問演習に入った時期に、長文中で出てくる医療系単語については意識して覚えてください。

 

繰り返しますが、『英単語ターゲット1900』(旺文社)などの一般的な単語集をしっかり仕上げることのほうが大切です。その上で、多少の医系単語は覚えておいたほうが得策です。

「解法に至る」時間を短縮し、「計算」時間を増やす

<数学>

 

Q. 計算間違いが多いです。どうすればいいでしょうか?

 

A. 計算を得意にする特効薬はありません。でも、対処法はあります。

 

計算力は、医学部を目指す上で必須です。しかし、多くの受験生が計算間違いで苦労する姿をよく見ます。また、「わかっていたけれど計算で間違えた」等の声もよく聞きます。計算を得意にする特効薬はありません。計算問題を多く解くことで計算力自体を上げる方法や、時間を計って計算問題を解き、計算スピードを上げる等の方法もあります。これらはすべて正しい方法と言えますが、一朝一夕で身につくものではありません。

 

上記の方法は計算力自体の向上を狙った方法です。ここでは視点を変えて、計算力を上げるのではなく、計算による失点を防ぐテクニックのようなものについて話してみましょう。

 

例えば、「式変形を行う場合、1行につき1回しか四則計算をしない」というルールを設けてみます。実は、計算間違いの大半は暗算を行う際に発生しています。式変形を行う際、ついつい「分母を払う」、「移項する」、「2乗する」等を一気に暗算で行いがちです。これを1行目「分母を払う」、2行目「移項する」、3行目「2乗する」と3行に分けて記載して式変形を行うだけで、暗算で行っていた箇所が筆算で行われるので、計算間違いを減らせます。さらに式変形のたびに検算もでき、計算の精度がさらに上がります。

 

また、計算を時間無制限でできれば間違いも減るでしょう。すなわち「計算時間」を増やす方法ですが、「計算スピードを上げる」のではなく、「解法に至る時間を減らし、計算時間を増やす」方法もあります。「いやいや、考える時間をそんなに減らせないよ」と思われるかもしれませんが、「わかっていたけれど計算で間違えた」というあなたは、「わかる」ことはできているのです。それなら、苦手な「計算」のスピードを上げるのではなく、得意な「わかる=解法に至る」時間を短縮できれば苦手な「計算」を補えるはずです。

 

ここにあげた方法はあくまで一例ですが、自分の状況に合った計算間違いの減らし方を考えていくと良いでしょう。

 

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