香港人権法の成立がほぼ確実に
■米上院は11月19日に、香港人権・民主主義法案(Hong Kong Human Rights and Democracy Act of 2019)を可決し、法案を下院へと送付しました。次の焦点は、下院が同法案をいつ再可決するかに移っていました。仮に最終法案が大統領に送付されたとしても、休会まで10日未満であれば、大統領が法案を廃案にする可能性があったからです(上院は12月13日まで、下院は12月12日まで会期が予定されています)。
■しかし、下院は上院案を修正することなく、翌20日に即可決しました。21日には同法案がトランプ大統領に送付される見通しです。トランプ大統領は署名するか拒否権を発動するか、どちらかを明確に選択する必要があります。トランプ大統領は法案に署名する可能性が高いと思われます。トランプ大統領は、弾劾審議の鍵を握る上院との対立を避けると見られることも背景です。また、10日以上放置すると、同法案は自然成立することになります。
■圧倒的な賛成多数での可決という上下院の勢いと、今後の日程を踏まえると、仮に大統領が拒否権を発動したとしても、議会は2/3の多数でそれを覆すことになると思われます。いずれにせよ、香港人権法は、成立がほぼ確実となったと言えそうです。
警戒される米中通商協議への影響
■次の焦点は、中国側の対応(報復)ということになりそうです。中国が採れる手段は限られており、例えば、米高官へのビザ発給停止など象徴的なものに限られると思われます。しかし、時を同じくして通商協議の難航が伝えられているため、金融市場は否応なく当問題が通商協議に波及してくるリスクをしばらくは警戒せざるを得なくなると考えられます。
■米中通商協議は、各種報道によればフェーズ1の合意が遅れる可能性があります。様々な情報が錯綜しており、実際の状況はわかりかねますが、中国側が既存追加関税の撤廃を強く要求したことで、米国側としては合意範囲を広めざるを得なくなったのではないかと推測されます。こうした報道に示されるように、中国側の要求が強硬であるならば、フェーズ1合意の時期が後ずれする可能性が高まっていると言わざるを得ません。
米中通商協議の進展などが待たれる
■米中通商協議は、紆余曲折の展開はありつつも、いずれ妥結は可能と見られます。ただ、結論が出ない時間帯が長引く可能性がほぼ確実の情勢になりました。当面は、再び米中通商協議の不透明感と付き合わざるを得なくなったと言えそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国、香港人権法の成立がほぼ確実…トランプ大統領署名か』を参照)。
(2019年11月21日)
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