「反復」が苦痛にならない5歳までのうちに…
3歳から7歳までに自然な英語環境の中で生活し始めた子どもほど、英語の習熟度が高い――言語学者による数々の研究結果を総合すると、子どもをバイリンガルに育てたければ、5歳までに英語に慣れ親しむ習慣をつくることが必須です。
小学校に入ると、昼間は学校で日本語を使う生活となります。帰宅後には塾や宿題をしなければならず、英語に触れる時間がかなり限定されることになります。
胎児のうちから英語の音やリズムに慣れさせ、乳児のころから英語の歌やお話をたくさん聞いてもらい、また英語の映画やアニメを見てもらうと、5歳になるころまでには、英語はすっかり子どもの生活の一部になっているはずです。
特に、小さい子どもは同じ本を何度も読んだり、同じ映画を何度も見たりしたがるものですが、反復は英語の習得のために大変重要です。同じことを繰り返すのが苦痛にならない5歳までのうちに、英語に親しむ時間を十分に取りましょう。
子ども自身が読む本や見るテレビなどを自分で選べるようになると、親が介入するのが困難になります。
未就学児のうちは「英語」「日本語」の違いをそれほど意識できないので、親が見せる英語のテレビや絵本を楽しんでくれますが、日本語の吹き替えがあるということがわかってしまうと、「日本語がいい」と要求してくる可能性があります。
筆者の家庭では、娘には海外の作品は英語で、日本の作品は日本語で見せていたのですが、次第にアニメにも「英語」のものと「日本語」のものがあるということを意識するようになり、4歳になったとき「『となりのトトロ』にも英語があるの?」と聞いてきました。無理に日本のアニメの英語版を見せようとしていたら、子どもはきっと「日本語もあるの? 日本語がいい!」と聞いていたに違いありません。
6歳くらいになってから子どもが「英語がいい」「日本語がいい」と主張するようになったら、親は無理強いせず、子どもの好みを受け入れてあげましょう。
5歳までに英語を話すための土台ができていれば、いったん英語から離れたとしても、小学校で英語を習い始める際、小さいころに身につけたことが生きてきます。そして、再び英語でテレビを見たり本を読んだりすることに関心を示すようになるでしょう。
幼い頃から英語に親しむことは「英語嫌い」の予防にも
また、早くから英語に親しむと、成長して学校で英語を学び始める際の精神的負担を取り去ることができるという利点があります。
今の親の世代では、特別な環境にいたのでないかぎり、英語を学び始めるのは皆同じ中学校からで、開始早々劣等感を感じるということはあまりなかったでしょう。
今は小学校で英語活動を取り入れるようになりましたが、その一方で、子ども向けの英会話スクールや英語レッスンのある幼稚園などが増え、学校で習い始める前からある程度英語の知識を身につけている子どもが増えています。
中学に入るころになると、アルファベットの書き方に戸惑い、bとdを混同してしまうような生徒がいる一方で、英検2級を取得しているという生徒もいます。するとスタート地点の英語力の違いから英語に劣等感を抱くようになり、中学1年の後半には「英語が嫌い・苦手」と感じるようになる生徒が全体の8割近くになるという調査もあります。
幼いころから英語に親しむことで、子どもが英語嫌いになってしまうのを防ぐことができるのです。
自信がない限り、親による英語の語りかけはやめておく
教育熱心な親御さんが陥りがちな間違いが、自ら英語の読み聞かせをしたり、子どもに英語で話しかけるようにするといった行動です。親が英語が流暢でない場合は、英語による語りかけはかえって逆効果になってしまいます。
親のカタカナ英語を子どもに聞かせていると、間違った発音を吸収してしまい、同じようにカタカナの発音で英語を覚えてしまいます。これは親に限らず、英会話スクールの講師がカタカナ英語である場合も当然ながら同じです。
英会話スクールに通っていた4歳のお子さんが、講師のカタカナ英語の癖をつけてしまったというケースがあります。発音を直すために週2回ネイティブ講師の発音と接しても、完全にネイティブの発音になることはありませんでした。
自宅で親御さんが熱心に英語を話して聞かせていたのでしょうか、やはり接する時間が長い親の発音の影響は強いものです。よほど英語の発音に自信がないかぎり、子どもが5歳になるまでは、英語で話しかけるのは避けたほうがいいでしょう。
三幣 真理
幼児英語教育研究家