学校教育だけで子どもをバイリンガルにすることはできません。学校の勉強を補う選択肢は複数あるものの、それでも日本人の英語力は伸び悩んでいます。今回は、その理由を探ります。本連載は、幼児英語教育研究家である三幣真理氏が、国内の一般家庭で子どもをバイリンガルに育てるための家庭習慣を紹介します。

学校の「インプット不足」を習い事で補うには限界が…

学校教育だけでは、英語で自由にコミュニケーションを取る力を育てるのは難しい。それでは、両親とも日本人で、日本国内で子育てをしている親が「子どもをバイリンガルに育てたい」と思ったとき、どこでどのように英語を習得させるのがいいのでしょうか。

 

私は放送大学大学院を修了する際、第二言語習得を修論のテーマとし、日本人の両親の間に生まれ、日本国内で早期英語教育を受けている児童たちの調査を行いました。調査によって、主な早期英語教育を行う機関には、以下のような特徴があることがわかりました。

 

◎英会話スクール

内容:グループレッスン(4〜8人)が主流。1回40〜60分のレッスンが週に1、2回。

講師:日本人またはネイティブ。

予算:週1回で1カ月授業料平均1万円

 

◎英語クラスのある幼稚園

内容:日本人が通う一般の幼稚園で、週1〜2回程度、英語のレッスンを行う。1回のレッスン時間は15分程度のことも。

講師:幼稚園の先生は日本人、英語レッスンはネイティブであることが多い。

予算:幼稚園の平均通園料1カ月約3万円

 

◎インターナショナルスクール

内容:日本に滞在する外国人の子どもや海外から帰国した日本人の子どものための学校。現在は子どもをバイリンガルに育てたい日本人家庭の子どもも多数通っている。授業も学校の中でも生活もすべて英語。

講師:教師は英語圏または、そのほかの国からの英語スピーカー。

予算:1年の平均授業料180万〜250万円

 

学校教育で圧倒的にインプットの質と量が不足しているのであれば、幼少期のうちから週1〜2回の英会話スクールや英語クラスのある幼稚園に通わせれば、英語に親しむことができると考える人もいるでしょう。しかし、それだけでは、子どもが自由に英語を操ることができるようにはなりません。

インターナショナルスクールの授業料は、公立の6倍!?

では、週5日間、毎日英語を話す先生やクラスメートに囲まれて育つインターナショナルスクールは、バイリンガルに育てるために理想的な環境といえるでしょうか。インターナショナルスクールは、国の補助が出ないこともあり、授業料は大変高額です。

 

例えば、公立の学校では幼稚園から高校までが平均515万円であるのに対し、小学校から高校まで一貫してインターナショナルスクールに通うと、授業料だけで一人あたり3000万円近くかかる計算です。

 

一般に高いと言われる私立でも、幼稚園から高校まで平均1200万円ですから、インターナショナルスクールは公立の約6倍、私立の約3倍学費がかかるという計算になります。

 

いくら子どもをバイリンガルに育てたいとはいえ、この学費ではインターナショナルスクールに通わせることができる家庭は、限られてくるはずです。

 

採点者目線で作られるテストが「英語弱者」を量産!?

子ども英会話教室には、「英検」に合格することを一つの目標としてレッスンをしているところもあるようです。

 

英検は日本英語検定協会が実施する英語力測定テストで、今の大人の中には、中学生、高校生のころに、英検合格を目標として勉強に励んだ人も多いでしょう。

 

現在も一定以上の級に合格していると高校受験・大学受験において有利になることがあり、海外の大学に留学する際にも、英検によって英語力を証明することもできます。

 

小学校で英語活動が取り入れられるようになったころから、子どもの英検受験者が急増しました。テストは中学校で学ぶ内容ですが、最もやさしいレベルである5級に小学校入学前からチャレンジする子どもや、3級・4級合格を目標としている小学生も大勢います。

 

確かに「英検に合格した」というのは親にとってうれしい成果であり、目標を持って学習できるというメリットもあります。

 

しかし幼少期の場合は「勉強」することで子どもに負担をかける恐れもあるので、無理に英検を受験する必要はありません。

 

また、たとえ英検に合格できたとしても、必ずしもそれが信頼できる結果とはいえません。合否のボーダーラインである60点ぎりぎりで合格し続けて、なんとか3級まで合格できたとしても、残り40点分の知識が不足したままの状態では、難易度が上がっていくにつれて、それ以上の知識を積み上げることが難しくなっていきます。

 

常に95パーセント以上の正答率をキープできている状態であれば、基礎固めがしっかりできているといえます。しかし、それ以下の場合はまだ英語力の土台ができておらず、知識を積み上げても身についていきません。

 

学校のテストの多くが、教師がつくりやすく、さらに評価しやすいようにつくられています。そのため、穴埋めや四択問題が多くなっています。

 

「TOEIC®」や英検などの試験も選択式が多いことから、幼少期からこうした形式の試験に慣れていくことは理にかなっていますが、英語がしっかりと身につけられるようになるかというと、そうとはいえません。

 

中学英語の穴埋め問題の9割以上を正答できる、という大学生たちに語順入れ替えの問題を出しました。すると、穴埋め問題とまったく同じ英文であるにもかかわらず、正答率が半分以下に下がったというデータがあります。

 

つまり、テストの答えのパターンを覚えただけで英語を習得できていなかったということが、この実験で明らかになったのです。

 

このような曖昧な基礎の上に高校レベル、大学レベルと難しい英語を学ばせたところで知識が積み上がっていくことはありません。むしろ、英語の不得意な日本人を量産しているも同然、といっていいでしょう。

 

 

三幣 真理

幼児英語教育研究家

バイリンガルは5歳までにつくられる

バイリンガルは5歳までにつくられる

三幣 真理

幻冬舎メディアコンサルティング

グローバル化が叫ばれている昨今、世間では英語力が問われる風潮になりつつありますが、日本の英語力は依然として低いまま。 学校での英語教育も戦後間もない頃からのスタイルとほとんど変わらないのが現状です。 そのためか…

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