●大統領候補は予備選など経て、党大会で指名、本選挙では選挙人270人以上の獲得で勝利。
●民主党の指名争いは混戦模様、なかでもウォーレン上院議員の政策に対する市場の警戒は強い。
●当面は民主党候補者の支持率動向やトランプ米大統領と中国側との協議の進展度合いが焦点。
大統領候補は予備選など経て、党大会で指名、本選挙では選挙人270人以上の獲得で勝利
4年に1度の米大統領選挙が1年後に迫りました。今回は2020年11月3日に投開票が行われます。民主党、共和党の二大政党は、2020年2月から始まる各州の「予備選」や「党員集会」で、指名する大統領候補を選んでいきます。予備選が集中する3月の「スーパーチューズデー」頃に候補が絞り込まれることもありますが、民主党は7月、共和党は8月の党大会で、大統領候補を正式に指名します。
11月の本選挙は、支持候補者を表明した「選挙人」を、有権者が選ぶ形となります。大半の州で、最も多くの票を獲得した候補者が、全ての選挙人を獲得する「勝者総取り」方式を採用しています。そのため、選挙人が多いカリフォルニア州やテキサス州などで勝利すれば、選挙に有利となります。選挙人538人のうち、過半数の270人以上を獲得した候補が当選となり、2021年1月に大統領に就任します。
民主党の指名争いは混戦模様、なかでもウォーレン上院議員の政策に対する市場の警戒は強い
共和党は、トランプ米大統領が候補者として指名を受けることがほぼ確実な見通しです。これに対し、民主党は11月6日時点で16人が立候補する混戦となっています。米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、同じく11月6日時点で、民主党の候補として最も支持率が高いのは、バイデン前副大統領の28.6%で、ウォーレン上院議員の21.4%、サンダース上院議員の18.1%が続きます(図表1)。
ウォーレン氏、サンダース氏はともに、国民皆保険制度の導入や、富裕層への増税などを政策に掲げ、リベラル路線を打ち出しています。特にウォーレン氏の政策は(図表2)、大企業や金融業界の収益を圧迫する恐れがあり、株式市場では警戒が強まっています。一方、バイデン氏は、国民に増税を強いる国民皆保険には反対の立場であり、また、国際的な同盟関係を重視するなど、穏健な中道路線を唱えています。
当面は民主党候補者の支持率動向やトランプ米大統領と中国側との協議の進展度合いが焦点
民主党の大統領候補指名争いで、リベラルと中道の対立が激化し、党内に亀裂が生じれば、本選挙でトランプ米大統領の優位性が高まることも考えられます。しかしながら、トランプ米大統領も油断はできません。2018年の中間選挙における州知事選では、トランプ米大統領の支持基盤とされてきた中西部(ウィスコンシン州やイリノイ州など)で敗北が目立ちました。
中西部は「ラストベルト」(さびついた工業地帯)に含まれ、米製造業の景況感が悪化しているなか、この地域でトランプ米大統領の苦戦が続くことも予想されます。なお、予備選や党員集会も始まっていない現段階では、まだ大統領選挙を展望するための十分な材料がそろっていません。したがって、目先は民主党各候補者の支持率がどう変化するのか、また、選挙を控え成果を急ぐトランプ米大統領が対中貿易協議をどの程度進展させるのかが、市場の焦点になると思われます。
※ 騰落率の順位は、10月1日にエムスリーと銘柄入れ替えとなった東京ドームを含め、226銘柄で算出しています。個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『1年後に迫った2020年米大統領選挙~目先の注目ポイント』を参照)。
(2019年11月8日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト