タイ<ピックアップマーケット>
バーツ高が続き、業績回復は遅れる見通し
【株式市場】業績不安、割高な株価バリュエーション
10月に入ってからもタイバーツ高が継続、企業業績見通しの悪化が続いている。10月はアジア主要株式市場で唯一下落、4カ月連続の下落となった。他国に追随して金融緩和に転じた点はプラスだが、金利水準は既に低く、緩和余地はそう大きくない。経常黒字が盤石なため、輸出企業業績にマイナス影響を及ぼすタイバーツ高は修正されにくい。株価バリュエーションも割高で、他市場と比較して投資魅力度は劣る。
【為替動向】バーツ高圧力が続く
10月のタイバーツ対米ドルレートは30.1~30.7の狭いレンジで高止まった。経常収支黒字とインフレ率の低位安定が評価されている。中国からタイへの生産ライン移管など中長期的な動きも踏まえると、バーツ高圧力が続きそうだ。また、輸出企業にマイナスとなるバーツ高の抑制を意図して中銀が利下げに踏み切ったことから、市場参加者の中には中銀に一段の利下げを促すためにバーツを買い進む動きも出ているようだ。
【マクロ経済動向】観光客数の伸びは持ち直しの局面
タイへの観光客数は9月に前年同月比+10.1%と、7月の同+4.7%、8月の同+7.4%から加速した。2018年7月にプーケット島でボート事故が発生したことから、観光客数が減少した経緯があり、ベース効果を考慮すると、2019年後半には前年同月比の伸び率は持ち直しの局面に入りやすい。実質GDP成長率の前年同期比も同様に持ち直しに向かおう。2019年後半のマクロ経済指標はいったん悪化に歯止めがかかる見通しだ。
主要アジア各国・地域株価指数推移
主要アジア各国・地域10年国債利回り推移
主要アジア各国・地域為替レート(対米ドル)
※参照
各国の株価指数の名称は下記の通り。
●中国:上海総合指数、●香港:香港ハンセン指数、●韓国:韓国総合株価指数●台湾:台湾加権指数、●インドネシア:ジャカルタ総合指数、●マレーシア:クアラルンプール総合指数、●タイ:SET指数、●ベトナム:ベトナムVN指数●シンガポール:シンガポールST指数、●フィリピン:フィリピン総合指数、●インド:SENSEX指数、●オーストラリア:ASX200指数
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『抗議デモが長期化…「香港」の経済に与える深刻な影響とは?』を参照)。
(2019年11月8日)