2019年の世界経済の成長率見通しは前年比+3.0%
先進国、新興国ともに7月時点から▲0.2ポイントの下方修正
■15日に発表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しは、2019年の世界経済の成長率が前年比+3.0%と、今年7月時点の見通しから▲0.2ポイントの下方修正となりました。2009年の世界金融危機以降で最も低い成長率予想です。成長率の下方修正は昨年10月以降、今年1月、4月、7月に続き、5回連続となりました。先進国、新興国別にみると、ともに▲0.2ポイントの下方修正となりました。先進国では、日本が7月比で変化はありませんでしたが、米国が同▲0.2ポイント、ユーロ圏、英国が同▲0.1ポイントの下方修正となりました。新興国は、ブラジルが同0.1ポイントの上方修正ですが、インドが同▲0.9ポイント、メキシコが同▲0.5ポイントと大きく下方修正されたことで、全体的に成長率が引き下げられました。
貿易・国内政策の不透明感が景気悪化要因
■先進国では、米国が悪化しているとはいえ、雇用や個人消費が堅調に推移し、景気の悪化を抑えています。ユーロ圏はドイツの悪化に代表されるように輸出の低迷が響きました。
■一方、新興国は貿易や国内政策の不透明感が景気悪化の一因となっているもようです。中国の成長率の悪化も米中貿易摩擦による影響に加え、債務抑制策が内需の低迷に結び付いたと見られます。
2020年に景気は持ち直しへ
■IMFは2020年に景気が持ち直すと予想しています。20年の成長率は前年比+3.4%と改善する見通しですが、7月の見通しから▲0.1ポイントの下方修正です。先進国の成長率は20年も同+1.7%と19年と同じ伸び率で、新興国の回復に頼る構図となっています。新興国の20年の成長率は同+4.6%と19年の同+3.9%より上向きます。これは、トルコやアルゼンチン、イランといった経済制裁など成長を阻害するなんらかの要因を抱えている国々の景気が回復すると見込まれるためです。なお、インドは20年は同+7.0%と7月予想より下方修正となってはいるものの、構造改革が着実に実行されるとの前提で、中期的に同+7.3%成長が見込まれています。
■20年は上振れの余地は大きくありませんが、下振れのリスクも大きくないと予想されます。主要国・地域が金融緩和政策を進めて、景気を下支えしているためです。米中対立が激化しなければ、安定的な成長へ向かうと思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『IMFの世界経済見通しは2019年が底』を参照)。
(2019年10月16日)
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