亡き父の不動産を巡り「15年」争う姉妹…解決法はないのか?

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。現代の相続には様々な問題が横たわり、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族が増えています。そこで本記事では、税理士の廣田龍介氏が、実際に携わった相続争いの事例を紹介します。

「先祖の土地を守る」という呪縛を切り捨てる

相続税対策において、今求められているのは投資家としての目線です。そのためには、先祖代々の土地を所有しなければならないという呪縛を振り切ることです。

 

そして、土地を売却し、そのお金で都心に近く、駅からも近い立地のいい土地に建物を建てます。そうして優良な不動産を子孫に残します。親族や近所の方に反対されることもあるかもしれませんが、私はその方策に大賛成です。

 

こういった収益性の高い建物に組み換える手法を「資産の組み換え」といいます。これは昔から取られている生前対策ではありますが、今の時代も有効な対策の一つです。

 

資産の組み換えでは、できれば賃貸マンションをなるべく高層にして、相続の時には相続人がフロアごとに分けられれば最高だと思います。間取りは空室にならないよう、家族向けなのか、独身向けがいいのか、はたまた学生向けがいいのか、その土地、場所によってニーズを考えます。また、流行りのスタイルや高級感の演出、共有施設を造るという選択肢もあるでしょうから、そこはハウスメーカーや地元の不動産会社に相談したいところです。

 

高層マンションを自分で建てるとなれば担保を入れ、多額の借金をすることになるので、建物の形態や借入額の計算は慎重にしなければなりません。もしくは思い切ってデベロッパーに土地を売り、キャッシュにするか等価交換でマンションの一部をもらう方法もあります。

 

また、小さな土地や中くらいの土地を複数箇所に少しずつ持っている方もいると思います。立地がよければ小さな土地でもデベロッパーは買い取ってくれますので、小さくて活用できない土地は売れるうちに現金化し、その現金を集約して収益性の高い不動産を一つ買うというのもよいでしょう。

 

もし、資産の組み換えに対して、周りの目もあり、自分の中で踏ん切りがつかない場合、私はその時の気持ちの鎮め方として、土地の隅にメモリアルとなる小さな碑を立てたり、シンボルツリーを植えたりすることを提案しています。完全にとは言いませんが、少しは気持ちが収まる人が多いように思います。

 

思い当たるような方がいれば、資産の組み換えを検討してみてください。これは、先祖代々の思いを踏みにじるような行為では決してなく、むしろ、時代に即したよい財産の守り方、引き継ぎ方だと思います。

子どもたちの骨肉の争いを防ぐために生前対策を進める

私が経験した事例を一つご紹介します。相続の話し合いのため事務所に姉妹2人が見えました。相続財産の棚卸をしていただき、その評価額を試算し、相続税額も算出した、その結果報告と今後の財産の分割についての相談です。

 

姉妹二人が事務所に来たものの…
姉妹二人が事務所に来たものの…

 

お母さんは健在ですが、後妻で財産分けは姉妹2人に任せて口出しはしないようにしていました。メインとなる財産は都内の一等地にある店舗併用住宅で、その家にはお母さんと長女一家が住んでいます。妹は別所帯ですが、長女と母の住んでいる不動産は亡くなられたお父さんと一緒に苦労して探して購入した自負と思い入れがありました。

 

この不動産をめぐり、事務所の応接室内でなりふり構わずの争いが始まってしまったのです。その後、双方、弁護士を入れて争うことになりましたが、15年を経過した今でもその争いは続いています。

 

こういった現場に遭遇していると、税理士として「いかに相続税を少なく納めるか」という節税の観点よりも、まず相続争いになることを未然に防ぐ必要性を痛感します。それがやはり一番大事で、何よりもそれがお客さまのためになるとも信じています。その中で節税ができればなおいいということです。そして争いを防ぐには、時間も必要です。

 

相続発生後から相続税の申告と納税までは10カ月しかありませんが、現実的にはお通夜や葬儀、四十九日などがありますから、動き出すのは1〜2カ月経った後です。残りの時間で、相続財産と債務の調査、戸籍謄本を取り寄せての相続人の確定、相続財産の評価と鑑定、遺産分割協議および協議書の作成、納税方法の検討、納税資金の準備、相続税申告書の作成をしなければなりません。これでは、できることはかなり限られてきてしまいます。

 

税理士歴30年の中で、私は前述のような争いを数多く見てきましたが、その中でも、生前対策をきっちり行い、誰に文句を言わせることなく相続できた資産家もいます。それはあっぱれな相続で、遺された家族は一切もめることなく、きちんと節税にもなっていました。私としても、何とも心地よいお客さまでした。

 

皆さんも、どうせならもめ事もなく節税もできる相続にしたいと思いませんか。こういう相続は、何も運に恵まれたから実現するわけではありません。もちろんそのご家族はもともと絆が強かったのかもしれませんが、実はどの家族でも理想的な相続の実現は可能ですし、しかもそれほど難しいことではありません。

 

先に答えを言ってしまえば、それは生前対策を進めておいたか否かということに尽きます。ただの生前対策ではいけません。時代に即しての生前対策です。あらかじめ問題が起こりそうなところを把握し、事前に対処しておけばよいのです。

エクスプレス・タックス株式会社 代表取締役
税理士

福島県いわき市出身。昭和60年税理士登録。昭和61年株式会社タクトコンサルティングに入社し、不動産を使った相続税対策の草創期から資産税に携わる。土地は“持つべき資産”から“利用すべき資産”への発想に転換すべきことを早くから提唱。
平成23年1月にエクスプレス・タックス株式会社代表取締役に就任し、個人・法人の資産税を中心とした幅広いコンサルティングおよび講演を行っている。講演では、ケーススタディ方式で易しく解説し、多くのファンを持つ。また、最近では不動産M&A・等価交換事業・法人化対策・家族信託に特化したコンサルティングに力を入れている。

著者紹介

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廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

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