涙が出てきました…小児科医ママが「娘のお尻を叩いた」理由

誰もが不安を抱えながらこなしている子育て。なかでも子供が直接口にする「離乳食」は、作るのも与えるのも大変で、ストレスを感じやすいポイントです。そんななか「離乳食は作らなくてもいいんです」と言っているのが、小児科医であり2児の母である工藤紀子氏。手作りの離乳食が一般的であるなか、なぜ、市販の離乳食を推奨するのでしょうか。本連載では、そのような考えに及んだ経緯と、実際に市販の離乳食を活用した子育てについて解説していきます。

小児科ママも、育児はまったくの素人だった

筆者がいま、声を大にして伝えていることがあります。

 

それは「離乳食は作らなくてもいいんです」ということです。

 

これは、離乳食の時期に必要な栄養をしっかりとって欲しいからこそ、市販の離乳食を使うとよいと考えているからです(関連記事『子どもに食べさせたい!離乳食期に必要な栄養素』)。離乳食を手作りする際も栄養のことを一番に考えてほしいのですが、育児で大変な時に、そこまで気がまわりません。だから市販の離乳食を活用してほしいんです。

 

そういうと「あなたは、市販の離乳食を使ってラクをしていたのね」なんて言われることも。

 

しかし違います。筆者も、離乳食作りで大変な思いをしました。そのうえで、声高らかに主張しているんです。

 

いま小学校高学年の娘が生まれたとき。きっと「小児科医なのだから、育児はお手のもの」と思われていたに、違いありません。まったくそんなことはありません。多くのママがそうであるように、筆者も初めてママになるんです。知識はありましたが、我が子が生まれてから、子育てがどれほど大変なのか実感しました。

 

当時、数時間おきに授乳をしなければならず、常に寝不足状態。そんななか、炊事、洗濯、掃除とこなして、合間におむつを交換して、泣いている子供をあやして……体力的に、本当につらいです。

 

1日があっという間に過ぎていきます。

 

そうこうしているうちに、我が子は生後6ヵ月。離乳食が始まります。小児科医になった後、大学院で栄養と子どもの発達との関係について研究しました。

 

「栄養のとれた離乳食を作るぞ!」

 

気合が入りますが、実際に離乳食を作ったことなどありません。まったくの素人です。多くのママと同じように、離乳食の講習会をうけ、たくさんのレシピ本も買いました。

 

始めは10倍粥をすりつぶして、だんだんと量を増やしていって。そのあとは野菜をペーストして裏ごしして、冷凍させて。アレルギーも心配です。大丈夫かな、とドキドキしながら少しずつ進めていきました。

 

いま、振り返ると「離乳食は、こうあるべき」という常識に捉われていたように感じます。

離乳食を食べない娘に、ストレスも頂点に

離乳食は、作るのもの大変ですが、与えるのが、また大変です。せっかく時間をかけて作ったのに、食べてくれなかったり、ペッと吐き出されたり、すぐに飽きてしまって遊びだしてしまったり……。どんどんストレスがたまっていきます。

 

そんなある日のことです。いつものように離乳食をあげていると、娘はいつものように遊びだしました。せっかく作った離乳食をポーンと投げたり、パンパンとつぶしたり、食べたと思ったらベーっと吐き出したり。娘の顔や髪はもちろん、服にもべっとりと離乳食がついて汚れてしまったのです。

 

せっかく作った離乳食が……
せっかく作った離乳食が……

 

「あーこれはお風呂で洗ったほうが早いな」

 

そう思って、娘の服を脱がせます。するとボロボロと食べ物が落ちてきます。娘はご機嫌ななめでぐずってばかり。思うようにことが進みません。筆者も段々とイライラしてきます。

 

「せっかく時間をかけて作ったのに、なんで食べてくれないの」

 

「なんで掃除や片付けを増やすようなことをするの」

 

「なんで泣いてばかりいるの」

 

「なんで、なんで……」

 

そのときです。何かが筆者のなかで弾けました。

 

「何がそんなにイヤなのよ!」

 

そう叫んだあと、ぼさぼさの髪で呆然とたたずむ、筆者の姿が鏡に映っていました。そして抱っこしている娘の後ろ姿。大きな声で泣いています。小さなお尻には、くっきりと残った手の跡が。

 

そうです。筆者は思わず娘のお尻を叩いてしまったのです。何分か経ったあと、我に返ると、我が子に手をあげてしまった罪悪感、情けなさ、驚き……色々な感情でいっぱいになり、涙が出てきました。娘はギャンギャン泣き続けます。そんな娘を抱きしめながら、「ごめんね」と言うことしかできませんでした。

 

子供が生まれる前、我が子に手をあげる親なんて失格だと思っていました。子どもに手をあげることは別世界のことだと思っていたのです。まさか自分に起こるとは思ってもいませんでした。あの時の記憶は、今でも鮮明に覚えています。

 

とはいえ、そこで育児がラクになるわけではありません。あいかわらず、離乳食は作るのも与えるのも大変で、ストレスが蓄積するばかり。ただ娘を叩いてしまった時の記憶があまりに鮮明で、以降は娘に手をあげることはありませんでした。

 

ストレスが頂点に達して、自分で危ないと思ったら、ちょっとその場を離れたり、子育て支援センターに娘をあずけたり。そうやって、何とかやり過ごしていきました。

 

多くのママは「誰もがやっていることなんだから」「母親だったらやるのが当然」などという考えに縛られています。また周囲も同じような認識で、ママを見ています。そうすると、ママは我慢するしかなくなるのです。

 

このような常識が、現在、小学校低学年の息子の子育てのときにガラリと変わりました。

 

次回、「離乳食って作らなくてもいいんだ!」と新しい発見をした出来事についてお話します。

小児科専門医・医学博士

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医。夫の仕事でアメリカに渡り子育てを経験する。現在2児の母。都内クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
最新著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)

著者紹介

連載小児科医ママが解説「市販の離乳食」を活用した子育てと課題

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