「スーパーで買えばいいよ」米小児科医に離乳食について聞いた

誰もが不安を抱えながらこなしている子育て。なかでも子供が直接口にする「離乳食」は、作るのも与えるのも大変で、ストレスを感じやすいポイントです。そんななか「離乳食は作らなくてもいいんです」と言っているのが、小児科医であり2児の母である工藤紀子氏。手作りの離乳食が一般的であるなか、なぜ、市販の離乳食を推奨するのでしょうか。本連載では、そのような考えに及んだ経緯と、実際に市販の離乳食を活用した子育てについて解説していきます。今回は、米国の離乳食事情について紹介します。

驚きの連続! 米国の出産・子育て事情

筆者の子育てで、鮮明な記憶として刻まれているのは、離乳食期に娘に手をあげてしまったことです。初めて育児というストレスに加えて、「せっかく離乳食を作ったのに食べてくれない」「栄養満点の離乳食を与えたいのに、食べてくれない」と次第に追い込まれていったのだと思います。

 

一度手をあげてしまったことは大きな後悔となりました。鮮明な記憶がストッパーになり、どんなに育児にストレスを感じても、回避してやり過ごしてきました。

 

いま思い返すと、どんなに大変なことでも「母親だったらやるのが当然」という常識に縛られていたように感じます。離乳食もそう。「離乳食は手作りして当たり前」「手作りの離乳食は母親の愛情」と思い込み、時間をかけて下ごしらえをして、食べてくれるかわからない離乳食を、せっせと作っていたわけです。

 

しかしそんな常識が、アメリカで180度変わりました。

 

現在、小学校低学年になる息子の出産は夫の仕事の都合で、アメリカで行うことになりました。異国の地での出産・子育てでしたが、すでに母としての経験もあり、またママ友にも恵まれ、心細さはありませんでした。

 

むしろ驚くことがいっぱい。

 

まず、アメリカでは普通分娩で母子に問題がなければ2日で退院します。日本では1週間くらい入院をするので、驚くほどの短さです。「大変!」と思われるかもしれませんが、筆者はなんとかなりました。筆者の出産した病院では寝巻きのような服を支給されましたし、産後の下着は使い捨てののびのびパンツでした。叩けば冷たくなるアイスパック付きナプキンもあり、下着もナプキンは足りなくなればいくらでももらえるので、用意する必要がありません。出産前に準備を整え、大きな荷物をもって「いざっ入院」という苦労がないので、その点では楽かもしれません。

 

出産費用のことを気にする人がいるかもしれませんが、現地で働きその会社の健康保険に入ったためか、莫大なお金はかかりませんでした(麻酔のクーポン券もありました! 施術費用10%オフ)。日本でも健康保険に月々支払っていますし、妊婦健診は保険適用外ですから、それを考えれば同等程度だと感じました。

 

また、日本では産後に助産師が「母乳マッサージ」をしれくれますが、アメリカではありません(もしかしたら、行うケースもあるかもしれませんが、筆者の場合はありませんでした)。

 

アメリカでは母乳育児の専門家であるラクテーションコンサルタントが授乳指導をします。しかし、母体に直接触れるような指導はありません。乳首のくわえさせ方、抱っこの仕方、搾乳機の使い方など、退院後も、授乳関連の相談に気軽にのってくれます。

 

また、退院時に病院から「サプリメンタルナーシングシステム(Supplemental nursing system)」がプレゼントされたのですが、これに大変助けられました。すごく便利です。ミルクを入れる容器から極細チューブが出ているツールで、チューブの先を乳頭に固定して使います。赤ちゃんには乳頭部を吸啜して刺激してもらうことができ、同時に母乳の出が悪かったとしてもチューブから出てくるミルクを飲むことができる優れものです。

 

母乳育児をする場合、乳頭部を吸うという刺激が欠かせないため、母乳が出なくてもくわえさせ続けます。ツールを使うと、赤ちゃんが空腹で居続けることがなくミルクを飲めるので、泣き続けることがなく寝てくれて、授乳の間隔がある程度開きます。哺乳瓶からミルクをあげることがないので、乳頭混乱を起こすこともなく、母乳育児の助けになります。母子ともに本当に助けられました。筆者はこの無敵の器具と1ダースの育児用液体ミルクとともに退院をしたので、産後2日でも頑張れたのかもしれません。

離乳食はスーパーで買えばいい…小児科医の衝撃の言葉

さらに、アメリカの出産・子育てで驚かされたこと。それが「離乳食は手作りして当たり前」の考えを覆すものだったのです。

 

出産後、想像以上に楽しく子育てをしてきましたが、徐々に、あの時が近くなってきます。そう、離乳食のスタートです。やはり離乳食期に娘を叩いてしまったという嫌な経験があるので、考えるだけで憂鬱になりました。

 

しかし、生後4カ月検診でのことです。小児科医に「そろそろ離乳食を始めてください」と言われたので、アメリカでは何をあげているのか、どう作ればいいのか、聞いてみたのです。すると、小児科医から驚きの発言が。

 

「離乳食はスーパーでたくさん売ってるよ。それを買ってあげたらいいよ。まあ作りたければ、作ればいいけどね」​

 

小児科医が、軽やかに言ってきたのです。

 

「えっ、離乳食って買うんですか?」

 

「そうだよ、衛生的だし、鉄などの栄養もあるし、そうすすめているよ」

 

米国では離乳食は買うのが常識
米国では離乳食は買うのが常識

 

早速、近所のスーパーに行ってみると、ベビーコーナーには、ズラッと陳列された離乳食。数えきれないほど豊富なラインナップで、おやつもたくさん置いてありました。

 

単に種類が豊富というわけではありません。無農薬、オーガニック、遺伝子組み換え不使用など、安全基準をきちんとクリアしているのはもちろんのこと、鉄や亜鉛など、発達に必要な栄養素が加えられている離乳食が多彩に置いてありました。

 

すごい! 早速、試してみようと買って帰りました。そして生後5ヵ月を迎え、息子にあげてみると……なんとラクで簡単なのでしょう。あらかじめ買ってきてストックしていた離乳食を、今日はどれにしようかなと選んで、サッと開けて、「アーン」とさせて完了。娘の時は大変だった離乳食作りのストレスから解放され、母親も子供も笑顔のお食事タイムに変わったのです。

 

アメリカの場合、離乳食の最初はあげるのはライスシリアル。おもしろいことに、赤ちゃんに最初にあげるのは日本もアメリカもお米なんですね。

 

その理由を含めて、次回、筆者が「離乳食を買うって素晴らしい、みんなに教えてあげたい」と日本に帰ってきてからの話をします。

小児科専門医・医学博士

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医。夫の仕事でアメリカに渡り子育てを経験する。現在2児の母。都内クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
最新著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)

著者紹介

連載小児科医ママが解説「市販の離乳食」を活用した子育てと課題

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