こどもをほめるとき、どんな言葉をかけたらいいのだろう? おかあさんからよく寄せられる質問です。モンテッソーリ教育の方針は「できている事実を伝えよう」というもの。こどもをほめるときの言葉を、具体的に見ていきましょう。本記事は、『自分で考えて動ける子になるモンテッソーリの育て方』(実務教育出版社)から一部を抜粋し、「こどもは適切な時期に適切な環境が与えられれば、自分の力で成長できる」とする、モンテッソーリ教育に基づいた子育てのヒントを紹介します。

こどもを「個性を持った1人の人間」として扱う

わが子をこども扱いばかりしないようにしましょう。

 

以前、こんなことがありました。ある女の子が、お祭りで売っている黄色いサングラスをかけたまま登園してきたのです。その子のおかあさんは、「そんなのかけちゃダメよ」と注意しました。

 

私(上谷)が「どうしてそんなにそのメガネがいいの?」と聴いたら、その子は「これをかけていると、いつもゆうがただから」と答えたのです。とても素敵な表現だと思いませんか?

 

こどもが何を考えているかは、本人に聴いてみなければわかりません。頭ごなしに「それはダメよ」と言うのではなく、まず「どうして、それをしているの?」と聴いてみましょう。こどもはこどもの世界で成長しているのです。

 

大人の世界があるのと同じように、こどもにも自分の世界があると認めるのが、こどもを尊重することにつながります。1人の個性を持った人間として、こどもを扱いましょう。

「できたね」という事実をそのまま認める

「こどもをほめるとき、どんなことばをかけるのがいいんだろう」おかあさんたちから、このような質問をよく受けます。

 

モンテッソーリ教育の方針は、「できている事実を伝えよう」というものです。

 

たとえば絵を描いたときには、「色がいっぱいあるね」「たくさん丸が描けたね」と声をかけます。

 

あまり過剰にほめると、自分のやりたいことよりも、こどもは「◯◯をしたらおかあさんはよろこんでくれるんだ」と、おかあさんに喜んでもらいたいという理由で物事に取り組んでしまうことになりかねません。それではこども自身のためではなく、おかあさんのためになってしまうので考えものです。

 

絵を描くことは、モンテッソーリ教育では自己表現の方法の1つです。自己表現をするための絵に対しては、「きれいだね」「素晴らしいね」「すごいね」といったほめことばをかけるより、事実を伝えるだけで十分なのです。

 

また、親は「すごいねー」といった抽象的なことばを使って、こどもに接しがちです。でも、自己表現として描いているこどもにとっては、何がすごいのかがよくわかりません。

 

できた事実を伝えるには、こどもが何をして、何ができたのかをよく観察することです。「あ、今日は1人でズボンを履けたね」というように、具体的なことばをかけましょう。これがこどもを伸ばし、認めるほめ方です。ぜひ実践してみてください。

こどもが泣いても焦らなくていい

泣き方や状況にもよりますが、こどもが泣くのは必ずしも悪いことではありません。とくに、ことばがまだ上手に話せない年齢のこどもが泣き出したときには、泣きやませることにエネルギーを使わず、「どうしてこの子は泣いているのか」「どんなふうに自分で解決していくのか」というところをよく見てあげましょう。

 

ただ、大人が「どうしたの?」「なんで泣いてるの?」と聴いても、こどもはうまくことばにして伝えられません。そこで、「○○が嫌だったの?」と「イエス」「ノー」で答えられるように問いかけてみてください。

 

まだことばを話せない子の場合には、とにかく安心できる状況をつくってあげるといいでしょう。

 

外出先でも同じです。何かが嫌で泣いているわけですから、まず泣いている原因を考えます。いつもと違う道を通るのが嫌なのかもしれないし、ものがほしくて駄々をこねているのかもしれないし、疲れてどうしようもなくて泣いているのかもしれない。その時点でのいろいろな可能性を考えて、原因を取り除いてあげてください。

 

時と場合によっては、泣きやむまで待てないこともあると思います。そういうときは、どこか静かなところに移動しましょう。家で泣くのとは違い、公共の場で泣くのは、非日常にあたりますから、臨機応変に対応してもいいと思います。

 

外出先と家の中では、状況の違いを考えたほうがいいこともあるのです。

 

イラスト:hashigo
イラスト:hashigo

こどもの泣き方もいろいろ…状況に応じた対応を

泣いても焦らないというのは、放任とは違います。泣いているこどもを「あ、じゃあ泣かせておいてもいいんだわ」とほったらかしにするのは放任になります。

 

ある程度ことばを話せるこどもには、「いま、おはなしできないようだったら、泣き終わるのを待つね」「涙がとまったらおはなしを聴くね」と声をかけます。そして、こどもが落ちついてから、話を聴くようにします。放任するのではなく、近くにいてこどもの様子を見守るのです。

 

赤ちゃんの場合は泣くのが仕事ですから、親が抱っこしてあやしたり、どういう状況かを観察したりするのはもちろん必要です。とくにハイハイ前の子が泣いていたら、何に対して泣いているのかをよく見てあげましょう。

 

もしかしたら、体勢が苦しくて泣いているのかもしれません。ずっと腹ばいになっていると背筋の力を使いますから、ちょっと仰向けにしてあげることも必要です。

 

でも、それもハイハイができるようになるまでのこと。少したてば自力で動くようになりますから、泣いたからといってすぐに手を差し伸べるのではなく、様子を見ながら自分の力でハイハイできる過程を見守るようにしましょう。

 

おともだちに噛まれて泣く場合はどうでしょうか。

 

保育園や幼稚園に通うようになると、おともだちに噛まれたりすることもあるでしょう。噛まれた子はびっくりして、怯えてしまいます。そんなときには、「痛かったんだね」「つらかったんだね」とこどもの気持ちに寄り添ってあげてください(噛んだ子にも、人を噛むのはいけないことは伝えます)。

 

このように、泣き方にもいろいろあります。状況に応じた対応を心がけたいですね。

 

 

上谷 君枝

モンテッソーリ 久我山子どもの家 園長

 

石田 登喜恵

モンテッソーリ 久我山子どもの家 教師


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