「結果」より「過程」を大切にして育てよう
多くの大人は、日常生活では目的達成や結果を求めて行動していることでしょう。でも、こどもにとってはそうではありません。こどもは日常生活の過程自体を楽しんでいるのです。
モンテッソーリ教育は、日常生活を教材にしています。たとえば、大人は洗濯するとしたら服をきれいにしたいと思うものです。でも、こどもは手や腕や指先を使ってゴシゴシすること、泡や水の感覚を楽しんでいるのです。
1歳半頃に「やりたい、やりたい」「する、する」と言って、大人の手を払いのけたりすることがありませんでしたか?大人から見たら「まだできないのに・・・」と思うけれど、本人は「やるー!」と言って聴かないことがあります。
また、こどもが靴下を脱いだり履いたりを何度も繰り返す時期がありますね。これも、脱いだり履いたりするプロセス自体を楽しんでいるのです。
モンテッソーリ教育の理論には、敏感期というものがあります。生まれ持った力が、自然に成長していくためのエネルギーが花開き、「やりたい!」という気持ちにつながります。これが敏感期によく起こることです。
こどもにとっては、このプロセスがとても大切なのです。その過程で、身体的にも、精神的にも成長していきます。「できた!」と実感できることが、自信や肯定感にもつながります。
興味があるものに、とことん気がすむまで取り組むことで学び、満足し、次のステップに進んでいくのです。ですから、私たち親は、こどものプロセスをゆったりと見守ってあげたいですね。
まず、こどもに「共感」する
誰かに共感してもらえると、「あ、わかってくれているんだ」という気持ちになりませんか?こどもも同じで、共感してあげると、安心して落ち着きます。
泣く子には、まず「そうだね」と共感しましょう。泣いている理由をことばにしてあげるのも、1つの手です。気持ちを整理してあげるのです。泣きやませようとして何かするのではなく、そこに寄り添うことが一番大事なことです。
話を〝聴く〟〝共感する〟ことは、気持ちを伝えることの大切さをこどもに教えることにもなります。
こどもが話すことを、まわりの大人が注意深く聴く。「それは◯◯だったんだね」と共感する。
結論を出すのではなくて、「そうだったんだ」「つらかったね」「楽しかったね」と共感する。これは、こどもが自分の気持ちを相手に伝えることの大切さを経験できる機会です。親が共感する姿勢で話を聴くことで、こどもの心に響くのです。
自分の思いを話して共感してくれる人がいれば、こどもは自分を信じる気持ち、自分の人生を肯定する気持ちを身につけることができます。
それには、まず身近な両親からです。心を込めて、目と耳を向けて、わが子の話を聴いてあげてほしいのです。
注意したいのは、話を聴いている親が先回りして「それってこういうことだから、こうじゃないの?」と結論を言ってしまうことです。こどもは結論を望んでいません。ぜひ共感してあげましょう。
失敗や間違いと「おともだち」になる
こどもの失敗は、積極的に受け入れましょう。小さい頃の失敗は、必ずしも悪いことではなくて、むしろいいことかもしれません。
とくに乳幼児期は発達が進んでいる最中ですから、間違えながら学んでいることもあるでしょう。最初から親が完璧を望んでいたら、こどもは失敗できなくなってしまいますよね
「失敗は悪いこと」ととらえるのは、その子の成長や学ぶ芽を摘んでしまうことになります。失敗や間違いとは、むしろおともだちになることが大切です。
なぜなら、失敗から立ち直る力こそが、人間にはとても重要だからです。こどもも大人と同じ。失敗とおともだちになり、失敗を恐れない心を持つほうが、より成功に近づけるのではないでしょうか。
親が「失敗とおともだち、間違いとおともだち」という意識で接していると、親自身もラクですし、こどもも間違いから学べて自立にもつながります。
こどもに失敗させられないからと、なんでも肩肘を張っていたら、世のおかあさんも疲れきってしまいます・・・。いい加減さ(〝良い〟加減さ)やユーモアの心は、生きるうえでとても重要です。
こどもも親も、「失敗もいいじゃない」というくらいの気持ちで、少しゆったりかまえてみませんか。
上谷 君枝
モンテッソーリ 久我山子どもの家 園長
石田 登喜恵
モンテッソーリ 久我山子どもの家 教師