2019年8月のバイオ医薬品市場

バイオ医薬品

ピクテ投信投資顧問株式会社
2019年8月のバイオ医薬品市場

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

バイオ医薬品関連企業の株価動向

8月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。

 

8月はバイオ医薬品株式が下落する傾向が強い月ですが、今年も例外とはなりませんでした。これは、バイオ医薬品企業の4-6月期決算が堅調となることが多く、短期的に買いの勢いが強まるものの、決算発表期間が終わる頃には、勢いが衰えてしまうためです。また、米国食品医薬品局(FDA)が2件の承認申請に対し、予想外の判断を下したことが規制環境を巡る不透明感を強め、株価の変動が増す結果となりました。

 

株価が上昇した銘柄としては、ジェンマブ(デンマーク)などが挙げられます。7月に、米国で新規株式公開(IPO)を行ったことで、米国内での同社への関心が高まっています。

 

株価が下落した銘柄としては、規制当局の予想外の決定が影響したアマリン(アイルランド)とサレプタ・セラピューティクス(米国)が挙げられます。アマリンは、FDA諮問委員会の審議を要求されたことが市場に嫌気されました。この時期になって発表があったことから、承認の後ずれは避けられそうにありません。サレプタ・セラピューティクスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症治療薬候補ゴロディルセンの承認を逃がしました。既に販売されている同社のエテプリルセンがそれほど説得力のないデータでも承認されていることから、意外な決定と受け止められました。

 

もっともエテプリルセンは、担当部署に承認する意思がなかったのに、医薬品評価部門が決定を覆したという経緯があることには注意が必要です。ゴロディルセンは、エテプリルセン同様、医薬品評価部門が決定を覆さなければ、承認が得られないことになります。

 

(ナスダック・バイオテック指数)の推移 2019年8月30日時点 ※為替レート:対顧客電信売買相場の仲値 ※PSR:2019年1月末時点のナスダック・バイオテック指数構成銘柄を基に算出した株価売上高倍率 出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成
[図表1]バイオ医薬品株価指数 (ナスダック・バイオテック指数)の推移
2019年8月30日時点
※為替レート:対顧客電信売買相場の仲値
※PSR:2019年1月末時点のナスダック・バイオテック指数構成銘柄を基に算出した株価売上高倍率
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成

今後のバイオ医薬品市場見通し

現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。

 

 

医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。

 

株式市場の先行きには不透明感がありますが、そのような間でも、長期志向で、市場の非効率性に注目するアクティブ運用者にとっては、数多くの投資機会が存在するものと考えます。

 

米ドルベース、月次、期間:2009年8月~2019年8月 出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成
[図表2]ナスダック・バイオテック指数 米ドルベース、月次、期間:2009年8月~2019年8月
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成

 

※バイオ関連学会予定に掲載の学会の開催期間は変更、延期、中止されることがあります。 出所:各種資料を使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成
[図表3]今後のバイオ関連学会予定 ※バイオ関連学会予定に掲載の学会の開催期間は変更、延期、中止されることがあります。
出所:各種資料を使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成

 

※赤色は、FDAまたはEMAにて承認された治療薬 ※ライセンス供与された治療薬も含みます 出所:各種資料を使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成
[図表4]注目のパイプライン ※赤色は、FDAまたはEMAにて承認された治療薬
※ライセンス供与された治療薬も含みます
出所:各種資料を使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成

バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる

バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表5参照)。

 

米ドルベース、期間:2001年12月~2018年12月 ※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数、新興国企業:MSCI新興国株価指数構成銘柄※売上高は一株あたり売上高(指数の値とPSR(株価売上高倍率)から算出) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表5]売上高の推移 米ドルベース、期間:2001年12月~2018年12月
※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数、新興国企業:MSCI新興国株価指数構成銘柄※売上高は一株あたり売上高(指数の値とPSR(株価売上高倍率)から算出)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

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バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表6参照)。

 

※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数、日本企業:TOPIXの構成銘柄、米国企業:S&P500種株価指数 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表6]今後2年間の売上高伸び率(年率)予想 時点:2019年9月4日、ブルームバーグ集計アナリスト予想平均
※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数、日本企業:TOPIXの構成銘柄、米国企業:S&P500種株価指数
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表7参照)。

 

期間:2006年12月~2018年12月(実績)、2019~21年(予想) ※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数※一株あたり売上高は、指数の値とPSR(株価売上高倍率)から算出※2019年~2021年の一株あたり売上高は、ブルームバーグ集計アナリスト予想平均 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表7]バイオ医薬品関連企業の売上高と株価の推移 期間:2006年12月~2018年12月(実績)、2019~21年(予想)
※バイオ医薬品関連企業:ナスダック・バイオテック指数※一株あたり売上高は、指数の値とPSR(株価売上高倍率)から算出※2019年~2021年の一株あたり売上高は、ブルームバーグ集計アナリスト予想平均
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

バリュエーション

2011年以降、バイオ医薬品関連企業の株価が大きく上昇したことから、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)は高い水準にありましたが、足元では株価の調整を受け低下しています(図表8参照)。

 

米ドルベース、月次、期間:2003年8月~2019年8月 ※PSR:株価売上高倍率。2019年1月末時点のナスダック・バイオテック指数構成銘柄を基に算出 出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成
[図表8]ナスダック・バイオテック指数とPSRの推移 米ドルベース、月次、期間:2003年8月~2019年8月
※PSR:株価売上高倍率。2019年1月末時点のナスダック・バイオテック指数構成銘柄を基に算出
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問株式会社作成

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

記載のデータは、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月のバイオ医薬品市場』を参照)。

 

 

(2019年9月10日)

 

 

 

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