バイオ医薬品関連企業の株価動向
8月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
8月はバイオ医薬品株式が下落する傾向が強い月ですが、今年も例外とはなりませんでした。これは、バイオ医薬品企業の4-6月期決算が堅調となることが多く、短期的に買いの勢いが強まるものの、決算発表期間が終わる頃には、勢いが衰えてしまうためです。また、米国食品医薬品局(FDA)が2件の承認申請に対し、予想外の判断を下したことが規制環境を巡る不透明感を強め、株価の変動が増す結果となりました。
株価が上昇した銘柄としては、ジェンマブ(デンマーク)などが挙げられます。7月に、米国で新規株式公開(IPO)を行ったことで、米国内での同社への関心が高まっています。
株価が下落した銘柄としては、規制当局の予想外の決定が影響したアマリン(アイルランド)とサレプタ・セラピューティクス(米国)が挙げられます。アマリンは、FDA諮問委員会の審議を要求されたことが市場に嫌気されました。この時期になって発表があったことから、承認の後ずれは避けられそうにありません。サレプタ・セラピューティクスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症治療薬候補ゴロディルセンの承認を逃がしました。既に販売されている同社のエテプリルセンがそれほど説得力のないデータでも承認されていることから、意外な決定と受け止められました。
もっともエテプリルセンは、担当部署に承認する意思がなかったのに、医薬品評価部門が決定を覆したという経緯があることには注意が必要です。ゴロディルセンは、エテプリルセン同様、医薬品評価部門が決定を覆さなければ、承認が得られないことになります。
今後のバイオ医薬品市場見通し
現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。
株式市場の先行きには不透明感がありますが、そのような間でも、長期志向で、市場の非効率性に注目するアクティブ運用者にとっては、数多くの投資機会が存在するものと考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表5参照)。
資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表6参照)。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表7参照)。
バリュエーション
2011年以降、バイオ医薬品関連企業の株価が大きく上昇したことから、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)は高い水準にありましたが、足元では株価の調整を受け低下しています(図表8参照)。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
記載のデータは、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月のバイオ医薬品市場』を参照)。
(2019年9月10日)
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは
【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討
【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成
【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える