ポイント
金価格は、米中貿易戦争の激化や、世界経済の減速懸念が強まる中、世界的な金利低下などを背景に約6年4ヵ月ぶりに1,500ドル(1トロイオンスあたり)を突破しました。引き続き世界経済の先行きについて不確実性が高まっている環境下、株や債券などの他資産と異なる動きをする金は安全資産として注目を集める可能性があります。
金価格は約6年4ヵ月ぶりに1トロイオンス=1,500ドルを突破
金価格は2019年8月7日に約6年4ヵ月ぶりの高値となる1,506ドル(1トロイオンスあたり、LBMA午後金価格)となりました(図表1参照)。同時点までの騰落率をみると年初来で+17.8%、過去1年間で+24.2%の大幅上昇となっています。
米中貿易戦争の悪化、世界経済の減速懸念と主要中央銀行による金融緩和の動きを背景とした世界的な金利低下などを背景に金価格は過去1年、上昇基調で推移してきました。
足元ではこうした不透明感の中で、米トランプ大統領が9月1日より中国からの輸入品3,000億ドル分を対象とした追加関税を発動すると表明、中国も即座に必要な対抗措置を取ると表明したことから米中貿易戦争の激化への懸念がさらに高まりました。これを受けてリスク回避の動きから世界の株式市場が不安定化する中、安全資産としての金は大幅上昇となりました。
また米中貿易戦争の激化による世界経済への悪影響も心配され、先行きの不確実性が高まっています。7月末の米国に続き、8月8日にはインド、ニュージーランド、タイが予想外または予想以上の利下げ実施を発表するなど金融緩和策を実施する中央銀行が増えており、スイスやドイツ、フランス、日本などの10年国債利回りがマイナスとなるなど、世界的に債券の利回りが低下しています(図表2参照)。金は金利を生まない資産であるため、世界的な国債の利回り低下は金の相対的魅力を高めているといえます。
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中国やロシアなど外貨準備で金を購入する動きも
中長期的な動きとしては中央銀行による金の購入も注目されています。中国やロシアなど一部の国が、金融危機など不測の事態への備えとして外貨準備高の分散化を進めるため、信用リスクがなく市場に流動性と厚みがある金を代替資産として組入れる動きがみられます。リーマンショックや欧州債務問題などを受けて、2010年以降は金の購入に転じ、2018年には1971年以降、最高水準となり、この動きは継続しています(図表3参照)。
不確実性の高まる環境下、金はさらに注目を集める可能性
ピクテでは、金は不確実性が高まる状況で安全資産としてさらに注目を集めると考えます。
足元、米中通商問題が激化し、世界経済の先行き不透明感が高まっています。さらに米国の追加利下げ観測や米国以外の国の金融緩和策などを背景に、世界的に国債利回りの低下が進む可能性があり、これらは金価格を押し上げる要因となると見ています。
※データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金価格が1トロイオンス=1,500ドルを突破』を参照)。
(2019年8月8日)
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