貿易戦争で中国は金融市場の覇者へ

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

ピクテ・アセット・マネジメントのチーフ・エコノミストである、パトリック・ツバイフェルが、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙に、米中貿易戦争は中国にとって、不幸な出来事に見えるものの、実はありがたい話であるといった内容のコラムを寄稿しました。

米中貿易戦争が中国にとって良いニュースである理由

米国が「世界の盟主」の座から遠ざかろうとすることは、経済体制の改革を通じて、中国がグローバル金融市場を支配することを可能とします。

 

米国の仕掛けた貿易戦争は、中国経済にマイナスの影響を与えています。ところが実際には、不幸な出来事に見えるものの、中国にとってありがたいことなのです。なぜならば、世界の二大経済大国の貿易に関する論争は、グローバル経済における盟主の座が、米国から中国に移る過程を加速させています。もし中国が、困難ではあるものの必要な体制の変革を行うことによって、中国の資本市場は、世界の投資家の誰もが無視できない主要な投資先に変革していくと見ています。

 

米国は、過去何十年にもわたって自由貿易のリーダーとして振舞ってきました。ところが近年は、慢性的な財政赤字や米国経済が過度に個人消費や政府債務に依存するといった、グローバルの金融市場のリーダーとしてのコストを嫌がるようになっています。

 

世界の主要準備通貨である米ドルも同様に、米国の輸出業者を助けたことはありません。米ドルは、グローバルな経済危機の時に上昇して、米国の多国籍企業が最も必要としている時に、競争力を削ぐ動きをしてきました。

 

現在、米国は政府債務の削減の方法を探り、世界的な責任から逃れようとしています。米中の貿易戦争は、中国に対して、将来のグローバルな経済体制で中心的役割を果たすことができるように、壮大な経済改革をやり遂げる動機を与えることとなります。特に、中国は資本勘定を自由化し、世界の金融システムと完全に統合することが必要になります。

 

この将来像が、あまりにも絵空事のように感じる方は、現在のアジアの状況を見るといいでしょう。既に、中国を中心とした経済圏が形成されています。

 

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比較的短期間で、アジアは効率的に「人民元ブロック経済圏」へと発展してきました。中国に隣接する貿易相手国は、人民元での決済を飛躍的に高め、人民元は中国を中心とする経済圏の重要なよりどころとなっています。

 

ピクテの試算によると、アジア通貨の動きの15%程度は、人民元との取引の結果であることが分かります。ちなみに2006年には、この数字は0%でした。米ドルの影響は今も圧倒的ですが、2008年に90%であった影響度合いが、最近は83%まで低下しています。

 

「人民元経済ブロック」は、世界の国内総生産(GDP)の23%を占めていて、2006年の5%から飛躍的に上昇しています。このGDPに対する比率から計算すると、世界の準備通貨に占める人民元の比率は13%程度と、現在の7倍の規模になると見ています。

 

中国は、経済改革と資本市場の開放について、躊躇している時間はありません。理由は、中国の人口動態上の問題です。

 

人口に対する労働人口(15歳以上64歳以下)の比率は、2030年には52%となり、10年前のピークである64%から低下する見通しです。同じ期間において、中国のGDPに対する貯蓄率は、ピークの46%から40%以下に下がる見通しです。これは、人口の老齢化が進むにつれて、主として医療費の増加や引退したことによって全体の出費が増えることによります。

 

中国が、経常収支の赤字に陥るのは、単に時間の問題です。経常収支が赤字になると、中国はこの赤字を埋めるために海外から借入を行う必要があります。

 

この事実は、グローバル投資において重要な意味があります。すなわち人民元建の債券や株式が、欧米や日本の証券市場の重要なライバルとなることです。

 

このような変化に期待して、世界の債券や株式の指数を開発している企業は、自社の代表的な指数に中国の金融資産を組入れることを始めています。この動きによって、3千億米ドル相当の資金流入が見込まれています。

 

中国が海外市場での存在感を増すことは、投資のリターンを向上させます。この背景として、海外の企業がコスト削減に貢献することや、非効率的な産業の活性化が図られることによります。

 

 

中国政府も、例えば米国国債といった非効率的な投資先から、相当な資金が国内産業育成のプログラムを実践する企業に投資されて、メイド・イン・チャイナの製品とサービスを通じて付加価値を高めることが可能となります。また、今後二度と米国のシリコンバレーの技術に依存することなく、中国企業が売上を伸ばすことが可能となります。

 

もし中国が、グローバルな投資の一翼を担うことになった場合、負け犬となりえるのが米国国債市場です。同時に、円や英ポンドといった2番手の準備通貨も衰退して、日本と英国の債券や株式市場は暴落する可能性があります。

 

米中の貿易戦争は、金融市場の構図を根本的に変える可能性を秘めています。中国にとって、貿易戦争は不幸な出来事ですが、はるかに大きな将来性を含んでいるのです。

 

“米中の貿易戦争は、中国に対して、将来のグローバルな経済体制で中心的役割を果たすことができるように、壮大な経済改革をやり遂げる動機を与えることとなります。”
 

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『貿易戦争で中国は金融市場の覇者へ』を参照)。

 

 

(2019年8月8日)

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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