低炭素社会を実現する21世紀の送電網を求む

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

再生可能エネルギーは、低コストで豊富に入手できるようになりました。これからは、さらに進化した送電網の構築が必要となります。

 

インディアナ州は、米国で2番目に石炭の消費が多く、同時に上位10番以内の石炭の生産者です。それでは、なぜインディアナ州は、今後石炭産業から撤退する決断をしたのでしょうか。答えは簡単です。コストです。

 

1830年代から石炭を生産していたインディアナ州が、化石燃料を捨てて太陽光や風力発電を採用する理由は、主要な公益企業によると、消費者にとって何十億ドルものコストが削減されるからです。

 

この動きはインディアナ州だけの話ではありません。米国の他の州でも、世界のいろいろな国々において、再生可能エネルギーのコストが劇的に下がったことから、化石燃料から太陽光や風力発電へのシフトを可能としています1

 

1 2010年から2017年の間に、太陽光発電の加重平均した標準的なコストは73%下落。すなわち1キロワットあたり、0.36米ドルから0.10米ドルへの下落。国際再生可能エネルギー機関

 

この事実は、電気を必要とする機器、自動車およびビルなどが電力需要を押し上げている状況において、地球温暖化ガス削減に取り組んでいる世界中の国や都市にとって、力強いサポートとなります。

 

しかしながら、安価でクリーンなエネルギーは、必要な場所へ日夜を問わず供給されなければ意味がありません。これが、送電線の問題に行き着くわけです。

 

送電網は、発電量と消費される電力量とが一致すべきです。しかし現在の送電網の基盤は、既にハリケーンや山火事といった自然災害による悪影響を受けていて、設備の更新需要に対して的確な対応ができていません。

 

太陽光や風力発電は、天候などの要因によって時々発電が途切れることがあり、大規模な電力供給に向いていない設備投資の状況となっています。

 

このような事実が、世界がより進化した送電網を必要としている背景となります。

 

可能な解決策を探るために、ピクテのクリーン・エネルギー諮問会議(AB)と運用チームのメンバーが、米国コロラド州デンバーの国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と、カリフォルニア州パロアルトの米国電力研究所を、最近訪問しました。この2つの機関は、再生可能エネルギーの研究におけるパイオニアとして有名です。

 

ピクテのABのメンバーは、最新の再生可能エネルギーの技術を見学し、電気自動車の導入によって必要となるインフラや、再生可能エネルギーでの発電から送電網へとつなぐ技術に対する挑戦と機会について新しい知識を得ることができました。

送電網の障害を取り払う

現在の送電網は、発電所から家庭や会社へ一方向に電気が流れるようになっています。送電は交流システムを使うことによって、長距離の送電や地域での配電が可能となります。交流システムという電気の流れについては、19世紀にシステムが確立されてからほとんど変化していません。19世紀当時は、電力システムの違いから、交流を推奨するウエスティングハウスなどと直流陣営のエジソンが激しく対立した「電流戦争」の結果、交流が標準の電流としての地位を確立しました。

 

変圧器を使うと、交流は簡単に異なる電圧に変えることが可能です。しかし、交流の主たる短所といえば、送電中に電圧が低下することです。一定の電圧のもとでは、交流は直流の約2倍の電圧を失うこととなります。一方、直流システムは長距離の送電を、より低コストで効率的に実施することが可能となります。

 

交流システムの送電上の制約は、再生可能エネルギーによる送電の場合、もっと明らかになります。なぜならば、太陽光、風力および水力といった再生可能エネルギーは、通常消費される地域から遠く離れているのが現実だからです。

 

 

ピクテのABのメンバーによると、このような要因によって、交流システムによる送電網の更新は、全ての発電量に対して15%程度に留まっています。

 

交流システムによる送電網の更新は、今後とも電力供給を不安定にして、恒常的な停電を招く恐れがあります。

 

それでは直流がどのように事態を解決するかを見ていきましょう。

 

現在の解決策としては、超高圧直流システム(UHVDC)があります。これはもっと強力で、通常の交流システムが1.5キロボルトであるのに対して、1,100キロボルトという超高圧を使用することが可能です。

 

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UHVDCは、いろいろな地域の独立した交流システム接続することが可能です。(図表をご覧ください)つまり、UHVDCを使用した巨大な送電網は、はるかに遠くのいろいろな再生可能エネルギーの発電所から送電することが可能となり、電力需要や天候に応じて異なる場所からの送電が可能となります。

 

出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表]超高圧直流システムによる送電イメージ 出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

UHVDCを採用した最初の国である中国は、10年近く経過した2019年のはじめに、世界最長かつ最も強力なUHVDC送電網を構築しました。送電網は3,200キロ以上に及び、この距離はロンドンからモスクワよりも長くなっています。この送電システムによって、中国北東部の太陽光と風力発電に適した地域から、毎時660億キロワットを中国東部の人口密集地域に送電して、5千万軒の家庭に電力を供給しています。

 

UHVDCは、あらゆる地域での利用が図られています。欧州では送電網の更新を通じて、欧州全体をあたかも「銅板」にしようとしています。つまり、太陽光が降り注ぎ、風が強い地域から、雨や曇りの日が多い地域へと、国境をまたいで送電を可能として、あたかも電気を通す一枚の銅板の上に欧州全体が載っていることを目指しています。

 

例えばドイツは、風の強い北部地域から。電力の一大消費地である南部地域へと、再生可能エネルギーによる電力を、UHVDCの送電網によって送ることを開発中です。

 

800キロメートルにおよぶこの送電網によって、2030年までに再生可能エネルギーによる発電を65%にするという国家目標の達成を後押ししています。ちなみに、現在の比率は38%です。

 

UHVDC導入時の高いコストが、この送電システムを採用する際の大きな障害となっています。ただし、巨額の導入コストが必要となるものの、中長期的な利益も巨額となります。

ワイオミング州の風

疑いも無く、米国は世界最大のエネルギーの消費国ですが、同じく直流への転換に取り組んでいます。30億ドルの「トランスウエストエクスプレスプロジェクト」は、UHVDC送電網を導入して、ワイオミング州の風力発電による電力を、1,100キロ以上離れたカリフォルニア州に送電しようとするものです。カリフォルニア州は、クリーンエネルギーによる二酸化炭素削減目標達成に向けて躍起となっています。

 

NRELは、このプロジェクトによってカリフォルニア州の住民は、年間10億ドルのコスト削減になると試算しています2

 

2 https://www.nrel.gov/docs/fy14osti/61192.pdf

 

「アースシステムリサーチ研究所」によると、このように豊富な風力発電を利用する送電網によって、1990年と比較して80%程度の二酸化炭素の削減につながる可能性があると試算しています3。

 

3 https://www.nature.com/articles/nclimate2921

世界のクリーンエネルギーシステムへの移行に対する投資

最新の進化した送電網のおかげで、再生可能エネルギーの可能性が加速しています。この事実は、投資家に対して明るい未来を示して、中長期的な低炭素社会への移行による恩恵を享受することができます。

 

ピクテは、クリーンエネルギーへの移行において、重要な役割を果たしている企業に注目しています。超高圧直流システムの市場規模は、複利ベースで年率9%程度の安定的な成長率を示し、2026年には163億米ドル相当の規模となる見通しから、有望な投資の機会を提供しています4

 

4 Stratistics MRC,8.3.2019

 

超高圧直流システムを支える技術も成長すると見ています。例えば、送電網を稼動させるために不可欠な半導体産業にも注目します。

 

またシリコンチップは、異なる交流と直流の電圧と周波数を変換するのに必要となり、電圧の低下による損失を防ぎ、安定した送電を可能とします。

 

半導体に対する需要は、2016年から2022年の間に2倍になり、市場規模は810億米ドルに達し、年率10%強の成長率が見込まれています5

5 PWC

 

※データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『低炭素社会を実現する21世紀の送電網を求む 』を参照)。

 

 

(2019年8月13日)

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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