リスクヘッジの手段として「暗号資産の活用」を示唆
米暗号資産投資会社モルガン・クリーク・デジタル社CEOのアンソニー・ポンプリアーノ氏が、米ドルに対するリスクヘッジのために、世界の中央銀行がビットコイン買いに走るだろうとツイートし、大きな反響を呼んでいる。外貨準備にビットコインが入るといった見解だ。
中央銀行は今年の前半6ヵ月で150億ドル(約1兆6100億円)以上の金を購入。彼らは米ドルに対するリスクをヘッジしようとしている。
ビットコインの無相関性、非対称性という側面に彼らが気づくのを待ってみよう。すべての中央銀行がビットコインを購入するだろう。(8月2日、ポンプリアーノ氏のツイッターより)
8月1日、金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、2019年上半期に世界の中央銀行が購入した金の総量が、調査以来過去最高のペースである374トンになったことを発表した。
これは、中央銀行等の公的機関による購入では、金・ドル兌換制度が廃止された1971年以降で最高となった昨年のペースを上回る速度だという。
The Financial Timesの報道によると、世界的な貿易摩擦が高まるなか、米ドルからの準備金の分散化を図る目的で、各国の中央銀行は金の購入を行ったと分析している。
ポンプリアーノ氏は、この側面を指摘し、ビットコインは伝統的な資産と関係性が低く、新たな価値の貯蔵手段として中央銀行が注目するだろうと予測している。
「金」対「ビットコイン」
ポンプリアーノ氏は、このツイートの前日、金投資家でビットコイン懐疑論者のピーター・シフ氏と約1時間にわたる「金対ビットコイン」討論を行っている。
シフ氏は、ビットコインが10ドルだった時に投資しなかったことを後悔していると、次のように述べた。
私は、そのチャンスがあった時、もしあの時に(ビットコインを)買っていたら、今では億万長者だったのにと、自分自身を責めている。
しかし「当時、判断を誤ったからといって、今からビットコインを買って過ちを悪化させるつもりはない」と、ビットコインに対する態度は決して改めないことを強調。「取引は完了した」と述べた。
また、ビットコインは本質的な価値を持っておらず、価値交換の媒体としてはあまりにも不安定であり、バブルであり、宗教化していると、従来の批判を繰り返した。
それに対し、ポンプリアーノ氏は、金とビットコインの両方を投資ポートフォリオに含むことは矛盾しないと冷静に反論した。
私は必ずしも金に反対しているわけではなく、金がポートフォリオに存在する役割があると思う。しかし、だからといって、ビットコインはまったくダメ、金だ、というのは少々近視眼的だと思う。
3000年という長い間「価値の保存手段」として信頼されてきた金と、誕生して10年という短期間のデータでしか判断できないビットコインの投資価値、またそのリスクを対比し、討論は行われた。
ビットコインのピークは2017年の2万ドルで、これからは下がる一方だろうと述べるシフ氏に対し、ポンプリアーノ氏は、最後に次のような論法を展開した。
シフ氏が持論に100%自信を持っているのなら、ビットコインが価値を持ち、新しいテクノロジー、そして新しい潮流である可能性は0%の確率になる。
しかし、シフ氏が1%でも間違っている可能性があるなら、ビットコインが非対称的な資産であることを考慮すると、この事実を知っていながら、このような批判を繰り返し、チャンスを逃し、インターネット上で非難され、(シフ氏自身が)永久に自分を責めることになる確率は高いだろう。
最終的に、この討論は平行線で終わり、シフ氏がビットコインの価値を認めることはなかった。
※本記事は、2019年8月2日に「CoinPost」で公開されたものです。