前回は、ハワイ&アメリカ本土の不動産投資の最新事情を紹介しました。今回は、ハワイで保有する不動産の「相続手続き」について見ていきましょう。

条件によりプロベートという遺産整理の手続きが必要

前回説明しましたように、近年ハワイに不動産を持つ方が大変に増えています。そこで、ここではハワイで不動産を所有していた方が亡くなった場合、どのような手続きが必要になるのかを説明していきます。

 

以下はハワイ州で使われている不動産の所有形態ですが、所有名義によって、相続の手続きが異なります。

 

①単独所有権(Severalty)

②共有所有権(Tenants in Common)

③夫婦合有所有権(Tenants by the Entirety)

④合有所有権(Joint Tenancy)

⑤信託(Trust)

⑥会社、パートナー等(Corporation, Partnership, LLP or LLC)

 

これらの所有形態のうち、③、④、⑤で不動産を所有している方のいずれかが亡くなった場合、亡くなった方の除籍謄本の原本とその翻訳されたものを、弁護士、あるいはエスクロー会社に渡せば、名義は変更できます。

 

一方、①と②及びハワイ現地法人の株式等の所有者が亡くなった場合、プロベートという遺産整理の手続きを行う必要があります。亡くなった人が遺言書を残していれば遺言書を裁判所に提出し、遺言書がなければ遺言書なしで申請書を裁判所に提出することで手続きが開始されます。

 

なお、この遺言書はアメリカで公式に認められる方法により作成されたものでなければなりません。

相続人の心理的・金銭的負担になるプロベート

プロベートは、以下の手順で行われます。

 

①遺産を処理する責任者が任命されます。

 

②遺言書があれば遺言書を裁判所で検認します。

 

③責任者は遺産の内容の確認と価値の査定を専門家に依頼します。

 

④故人の債務や遺産税等の確認及び清算をします。

 

⑤遺言書があれば遺言書に従って相続人に分配、遺言書がなければ法定相続人に遺産は分配されます。

 

この手続きの流れだけを見ていると、特別なことをしているようには思えませんが、問題となるのは、プロベートが裁判所を通して行われるため、時間と費用がかかることです。

 

プロベートにかかる期間の平均は18カ月、ハワイとカリフォルニアに不動産を所有していたケースでは、それぞれの州のプロベートコートで手続きが行われ、すべて終了するまで10年近くかかったこともありました。

 

プロベート期間中は裁判所に遺産は凍結されてしまうので、相続人は自由に遺産の処分は行えません。また、裁判所へ支払う手数料や弁護士費用、不動産の評価を行う鑑定料などの諸費用がかかり、手続きが長引けばその金額はどんどん大きくなっていきます。さらに、プロベートになると遺産内容が新聞などに一般公開されることになるので、「財産の中身を知られたくない」と思っていても、それを阻止することはできません。

 

このように、プロベート手続きに長い期間拘束されることは、相続人にとって物理的負担と心理的苦痛をもたらすことは間違いありません。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

海外資産の相続

海外資産の相続

永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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