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今回の日銀の金融政策決定会合では、主に3つの変更点に注目しました。①フォワードガイダンスの変更、②適格担保の拡充、 ③ETFの一時的貸付制度の導入です。これらの変更から示唆される日銀の金融政策方針は、超低金利政策の長期化を明確化する一方、(長期化の)副作用にも配慮を示すことと見ています。

日銀金融政策決定会合:フォワードガイダンスを変更、ETF貸付制度導入を示唆

日本銀行は2019年4月25日の金融政策決定会合で金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)を変更し、これまで「当分の間」としていた現在の超低金利政策を「少なくとも20年春ごろまで」続けるとしました。長期金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れを行いある程度の金利変動を許容と、マイナス0.1%の短期金利の方針は維持しました。指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針なども従来通りでした。

 

 

なお、適格担保の拡充(企業債務の信用力について外部格付けでBBB格相当以上に緩和)と、ETF(日銀が保有する)を市場参加者に一時的に貸し付ける制度の導入を検討(詳細は今後)していることも公表されました。

どこに注目すべきか:フォワードガイダンス、適格担保、ETF貸付

今回の日銀の金融政策決定会合では、主に3つの変更点に注目しました。①フォワードガイダンスの変更、②適格担保の拡充、③ETFの一時的貸付制度の導入です。これらの変更から示唆される日銀の金融政策方針は、超低金利政策の長期化を明確化する一方、(長期化の)副作用にも配慮を示すことと見ています。

 

まず、フォワードガイダンスを、現在の超低金利政策を「少なくとも2020年春ごろまで」続けるとのべ、当分の間という従来の表現より明確化した点については、期限を切ったのだから金融引締めとの解釈も一部に見られます。しかし、変更の前提である経済認識でGDP(国内総生産)成長率予想は前回(1月)の予想から下方修正しており、日銀は金融緩和姿勢を強めたと見るのが自然と思われます(図表1参照)。

 

[図表1]日銀による日本の成長率とインフレ率の予想 時点:前回(2019年1月) 今回(2019年4月)、21年は今回初めて公表 出所:日本銀行のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]日銀による日本の成長率とインフレ率の予想
時点:前回(2019年1月) 今回(2019年4月)、21年は今回初めて公表
出所:日本銀行のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

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次に、適格担保の拡充とETFの一時的貸付制度の導入は、詳細は今後の発表を待つ必要はありますが、いずれも日銀の金融緩和政策の長期化の副作用を和らげる効果が想定されます。例えば、適格担保の要件をA格からBBB格相当以上に緩和したことで、担保債券の不足感解消が期待されます。また日銀が保有するETFを市場参加者に一時的に貸し付ける制度は、ETFの売買の円滑化が期待されます。

 

ただ、②の適格担保の拡充、③のETFの一時的貸付制度が必要となった背景は、日銀の量的金融緩和政策の結果、日銀のプレゼンス(保有割合)が高まったことによる副作用を緩和する政策とも見られます。そのように考えると、副作用に配慮して、超低金利政策を長く続ける方針が示唆されたと解釈するのが自然と思われます。

 

少なくとも20年春ごろまでの超低金利政策と副作用への対応は整合的な組み合わせながら、何か釈然としない印象も残ります。消費者物価指数(CPI、除消費税の影響)を見ると、インフレ目標の2%を21年まで見渡しても下回ることが見込まれていることです。導入当初はデフレ解消に効果が見られ、足元、超低金利政策以外に有効な手段が見当たらないことから、現段階で政策を後退させる余地は無いように思われます。ただ副作用という費用と、効果の議論無く政策の延長が繰り返されることには一抹の不安も覚えます。

 

[図表2]日本の総合消費者物価指数(CPI)の推移 月次、期間:2009年1月~2019年3月、消費税の影響除外ベース 出所:総務省、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]日本の総合消費者物価指数(CPI)の推移
月次、期間:2009年1月~2019年3月、消費税の影響除外ベース
出所:総務省、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀の金融政策決定会合、主に3つの変更点に注目』を参照)。

 

 

(2019年4月26日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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