相続対策はいつまで続けるものか?
昨今、相続にまつわるトラブルが身近に聞かれるようになりました。今や相続対策は富裕層だけのものではなく、日本人全員が相続対策をしなければならない時代を迎えています。
ところが相続対策をはじめたものの、それがいつ終わればよいのかゴールが見えなくなる場合も少なくありません。
そこで今回は、あなたの相続対策終了のタイミングがわかる方法をご紹介いたします。
5つの質問に「イエス」か「ノー」で答えるだけの簡単な方法です。
<ルール説明>
●表題の質問にノーと答えた方はまだ相続対策が必要な方です。
●逆にイエスと答えた方は、次の質問へスキップしてください。
●5つの質問すべてにイエスと回答できれば相続対策は即終了です。
ではスタートです。
<質問1>
「あなたの相続財産はいくらなのか知ってますか?」
ノーと答えた方のみ読んでください。
相続対策の基本です。
あなたの現状財産(債務含む)を把握し、それを金額に換算するといくらになるのかを計算します。現預金は簡単に把握できますが、不動産は路線価評価など複雑な計算が必要です。会社を経営されている方は自社株評価が必要となり、さらに面倒な計算が必要です。
まず、財産債務リストを作って計算してみましょう。
<質問2>
「あなたの相続税はいくらなのか知ってますか?」
ノーと答えた方のみ読んでください。
あなたの相続財産に対して、相続税がいくらになるのか計算します。
まず、相続人は誰なのかを把握してください。
計算は自分でもできますが、賃貸不動産や自宅など、評価減の対象となる場合もあるので税理士などの専門家に頼んで計算してもらいましょう。
<質問3>
「相続人が揉めないように財産分与を決めていますか?」
ノーと答えた方のみ読んでください。
遺産分割で揉めないようにあなたが財産分与を指示しておく必要があります。
遺言が最も財産分与に有効ですが、遺留分を侵害しないよう留意してください。
分割できない財産(特に不動産)がある場合、共有財産となり将来“争続”の種になることがあります。信託を利用することや事前に処分、換金することも考えてください。
<質問4>
「すべての相続人は相続税を納税できますか?」
ノーと答えた方のみ読んで下さい。
揉めないように財産分与した後、相続人それぞれの相続税がいくらになるのか計算します。
そして、それぞれの相続人が相続税を現預金で納税できるかを把握します。
不動産を財産分与してもらった相続人に金融資産がなく、相続税が納税できない場合があります。納税のための金融資産を考慮し財産分与の見直しをしてください。
それでも金融資産が不足する場合は、不動産の処分、換金や、生命保険金の加入など、納税資金の確保を考えてください。
<質問5>
「その相続税 【納税したい】 ですか?」
イエスと答えたあなたは、相続対策を終了して結構です。もう何もする必要はありません。
ノーと答えたあなたは、まだ対策の余地がありますので、更なる相続対策を進めてください。
遺される家族が一番幸せになる方法は?
正直にいえば、すべてにイエスと答えた方に、今まで出会ったことはありません。
今回の質問の目的は相続対策に終わりはないと結論付けることではありません。目的は、相続対策には優先すべき道順があることを伝えることです。
紹介した5つの質問はそれぞれ相続対策の本質を表しています。
1.「あなたの相続財産はいくらなのか知ってますか?」=現状把握
2.「あなたの相続税はいくらなのか知ってますか?」=税額計算
3.「相続人が揉めないように財産分与を決めていますか?」=遺産分割対策
4.「すべての相続人は相続税を納税できますか?」=納税資金対策
5.「その相続税【納税したい】ですか?」=節税対策
相続対策は「遺産分割対策」→「納税資金対策」→「節税対策」の順序で進めます。この順序を逆にしてはいけません。
もしもこの順序を逆にすると、税金を安くするという経済合理性だけに軸足が移り、優先すべき遺された家族の幸せが後回しになります。
相続対策の極意は「遺された家族の幸福を一番に考えた結果、税金も安くなる」です。
人生最後の最後まで、遺された家族が一番幸福になる相続対策を進めてはいかがでしょうか。