「法定離婚事由」があれば、同意がなくても離婚可能?
離婚したくても、配偶者に明らかな落ち度がなく、配偶者の同意もない・・・。筆者の事務所にも、このようなお悩みを抱えた方が多くご相談にいらっしゃいます。
配偶者が同意してくれないとなると、早く離婚したいという気持ちが一層高まり、悩みや苦しみで頭のなかが一杯になってしまいますよね。夫婦関係という、とても密接な人間関係を解消するのですから、夫婦共々つい感情的になってしまいがちです。しかし、離婚を決意したのであれば、夫婦間の状況を客観的に把握し、自分が何をすべきかを冷静に考える必要があります。
本記事では、このような場合、どのように夫婦関係に関する問題を解決していくべきかをお話していきます。
◆そもそも、どうすれば離婚できるの?
離婚は、夫婦双方の合意によって成立するものと、合意に至らず、裁判所の判決により成立する「裁判離婚」に大きくわけられます。夫婦双方の合意により成立するものには、裁判外での合意による「協議離婚」、調停手続での合意による「調停離婚」、訴訟手続での合意による「和解離婚」があります。
夫婦間の話し合いでの合意が見込める場合、配偶者が納得するであろう条件を提示し、協議でまとめる方法があり、比較的短期間で離婚が成立することも。そもそも、協議という方法を取りたくない場合や、金銭の交付等といった提示条件で相手方が納得してくれない場合は、訴訟を提起し、判決を得る必要があります。
◆相手が離婚に応じていなくても、法律上の離婚原因があれば離婚ができる
先に述べた協議離婚等の合意による離婚とは異なり、裁判離婚となる場合は、裁判所が介入するため、「愛情が薄れた」といった曖昧な理由は認められず、第三者にも納得できるはっきりとした離婚の理由が必要となります。
その理由が事実であることを主張、立証し、裁判所が法定の離婚原因を認定すれば、夫婦の合意がなくても離婚することができます。
離婚原因を定めているのは、民法770条1項です。
民法770条1項は、柱書で「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」と規定し、各号で5つの離婚原因を規定しています。
それでは、5つの離婚原因について見ていきましょう。
1号 配偶者に不貞行為があったとき
不貞行為とは、配偶者以外の異性との自由な意思に基づいて性的関係(肉体関係すなわち姦通行為)を持つことを指します。
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
「悪意の遺棄」とは、正当な理由がないにも関わらず、夫婦の義務である「同居、協力、扶助」を果たさないことをいいます。
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者からの音信が最後に途絶えた時から3年以上たっても、生存や死亡を証明できないことを意味します。
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
夫婦の一方が単なる精神病ではなく、「回復の見込みがない」「強度の精神病」に罹患し、夫婦間相互の精神的交流が失われている状況を指します。
5号 その他の婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
1号~4号にはあてはまらないけれども、長期間にわたる別居やDVなどが原因で、夫婦生活が破綻している場合のことをいいます。
関係修復の見込みなしとされる「長期間の別居」とは?
◆「長期間の別居」も婚姻を継続しがたい重大な事由に含まれる!
「長期間の別居」は、5号の婚姻を継続し難い重大な理由に該当するため、長期間の別居を理由に離婚できる可能性が高くなります。なぜなら、単身赴任などの特別な事情がない限り、夫婦は一緒に住むことが社会的常識で、法律上の同居義務もあります。にもかかわらず、長期間にわたって別居しているとなると、夫婦関係が円満ではないと推測されるからです。
婚姻している期間は、婚姻費用を分担する義務があります。別居している場合でも、婚姻費用の支払い義務は生じるため、長期間別居すると、支払う婚姻費用の金額がその期間分増えるので注意が必要です。
筆者の事務所で扱っている案件を踏まえると、同居期間20年に対して「約7、8年の別居期間」、同居期間5年に対して「約3年の別居期間」があれば、関係修復の見込みはなく、「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたると判断されるでしょう。
以上のように、相手方の同意がなくても、別居することにより、離婚を成立させることは可能なので、離婚をしたいと思ったら、まず別居をはじめることを戦略としておすすめします。
別居をする前に準備しておきたいことや、別居をする際の注意点等、更に詳しいことでお悩みがあれば、法律事務所にご相談下さい。
次回は、ズバリお金のこと「財産分与」についてお話しますので、お楽しみに!
中里 妃沙子
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所 代表弁護士