「離婚弁護士」による連載スタート
2009年7月、東京・丸の内に、中里妃沙子氏が現在の法律事務所の前身である「丸の内ソレイユ法律事務所」を開設してから、来年で満10年になります。
ここ数年は、事務所として毎年少なくとも400人以上の方の離婚相談を受け、離婚案件の取り扱い数は年間約200件に上るなど、日本でも有数の「離婚弁護士事務所」に成長。中里氏の、目の前のご依頼者に寄り添う姿勢が、多くの人の心を掴んでいます。
今回の連載では、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所における10年間の経験を基に、「離婚にまつわる法律問題」を取り上げていきます。
「離婚にまつわる法律問題」は極めてシンプル
法律事務所に離婚相談にいらっしゃる際、多くの方が配偶者との関係で心に大きなストレス、あるいは出口の見えない悩みを抱え、どん底の精神状態で事務所のドアを叩かれます。
複雑で難しいと考えられる離婚にまつわる法律問題ですが、実は考えるべきポイントは
①「相手方が離婚に合意しているか」あるいは「法律上の離婚原因があるか」
②親権・養育費などの「子どもをめぐる問題」
③財産分与などの「お金をめぐる問題」
の3点と極めてシンプルです。
考えるポイントはシンプルではありますが、実際に離婚問題に直面すると、夫あるいは妻に対する愛情や憎しみなどが複雑に交錯し、「うつ」状態にまでなってしまう方もいらっしゃいます。ご依頼者の中には、事業家として素晴らしい手腕を発揮するような方でも、離婚問題を抱えて心を病んでしまった例もありました。
しかし、離婚問題も他の法律問題と同様、大切なのは相手方との利益調整です。相手のあることですから、一朝一夕に解決できるとは限りませんが、上記3つのポイントを一つひとつ解決することに注力し、それ以外は必要ないと頭を整理することが重要です。
以下では、論点の整理方法について具体的に見ていきましょう。
離婚の沙汰も金次第!?
例えば、熟年離婚を考えると、実際に問題となるのは③の「お金をめぐる問題」のみといっても過言ではありません。妻との年齢が相当離れていて、子どもがまだ小さい場合等を除き、多くの場合、子どもは既に成人しているので、②「子どもをめぐる問題」が争点となることはほとんどありません。
また、①「相手方が離婚に合意しているか」、あるいは「法律上の離婚原因があるか」が問題となることもほとんどないでしょう。長年連れ添って、どちらかが離婚を考えるような夫婦の場合、離婚を切り出された側の当事者に、今でも「愛」が残っているというケースは稀です。表向きは「相手に対する愛情があるので離婚したくない」と言いつつ、本心では条件次第というケースが多いのです。「地獄の沙汰も金次第」ならぬ「離婚の沙汰も金次第」というわけです。つまり、熟年離婚で問題となるのは、共有財産という1個のパイをどうやって分けるかという「財産分与」の問題のみということになります。
これに対して、②「子どもをめぐる問題」が関係するのは、未成年の子どもがいるせいぜい40代半ばまでの離婚です。最近は、子どもを後継者にするため、絶対に親権を獲得したいと考える経営者の方もいらっしゃるので父親が親権者となるケースも散見されますが、まだまだ母親が親権者となるケースが多いのが実情です。となると、子どもをめぐる問題の中心は、養育費をいくらにするのかということになります。
悩みの原因が「金銭面 or 感情面」なのかを整理
こうして見ていくと、「離婚にまつわる法律問題は、実は『お金の問題』のみ?」という疑問が湧いてきたのではないでしょうか。
答えは、イエスです。
なぜなら、民法は離婚問題だけではなく、ほとんど全ての法律問題の原則的な解決方法として、もともと金銭解決の方法しか規定していないからです。従って、突き詰めて考えてみる必要もなく、「離婚にまつわる問題」イコール「お金の問題」となるのです。
上記を踏まえると、法律事務所に相談したところで「感情」の問題は解決されないと考える方もいらっしゃるでしょうが、法的に問題が解決すると、感情面もすっきりとし、「うつ」状態からも解放されることが多くあります。ご自身のお悩みが「お金の問題」なのか、「感情の問題」なのかを整理することが重要ですので、一度専門家にご相談にいらして下さい。
離婚に関して相手方の同意がなく、法律上の離婚原因もない…
このような場合、途方に暮れてご相談に見える方も多くいらっしゃいます。相手方が離婚に同意してくれないとなると、一層離婚したいという気持ちが高まり、悩みや苦しみで頭が一杯になってしまい、最も重要な「お金」の問題に気付かないケースもございます。
このような場合も「お金」で解決できるのか、そのような相手と離婚するにはどのようにしたら良いのか、次回はその辺りの戦略を詳しくご説明します。お楽しみに!
中里 妃沙子
弁護士法人 丸の内ソレイユ法律事務所 代表弁護士