仕事と子育ての両立を考えるなか、ストレスに感じやすい「離乳食作り」。時間が足りない、食べてくれない、栄養バランスは…色々考えてイライラと不安でいっぱいになっている方も多いのではないでしょうか。本連載は、小児科医であり2児の母でもある、工藤紀子氏の著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)のなかから一部を抜粋し、市販の離乳食を活用しながら育児を楽しむ方法を紹介します。今回は、実際に離乳食作りで大変な思いをした母親たちの事例を見ていきましょう。

精神的にも肉体的にも、限界ギリギリ…

「心が折れそうです」

 

「長い間眠れていないんです」

 

と泣きだすママたち

 

私が勤務しているクリニックの小児科には、1日50人から100人近くの赤ちゃんや子どもたちがママやパパ、おばあちゃん、おじいちゃんと一緒にやってきます。

 

生後6〜7カ月、9〜10カ月健診に訪れる親子もいれば、子どもが熱を出した、せきで眠れない、お腹が痛い、じんましんが出たなど、さまざまです。

 

しかし、具合が悪そうなのは子どもだけではありません。ママも見るからに元気がなく、向かい合ってお話をしているときなど、

 

「このお母さんはずいぶん疲れているな」

 

と感じることがよくあるのです。

 

いろいろ話を聞いてみると、「心が折れそうです」と嘆くママ。「もうずいぶん長い間眠れていないんです」と訴えるママ。そんなママたちに「大変ですよね。よくがんばっていらっしゃいますよ」と声をかけると、ポロポロと涙を流されます。泣きたくてもつらくても誰にも言えず、ずっとがまんしてきたのでしょう。

 

ママたちはお産直後から数時間おきの授乳やおむつ交換で寝不足が続き、そのうえ、掃除、洗濯、買い物、子どもの相手などで疲れがたまっています。

 

精神的にも肉体的にも、限界ギリギリまでがんばっているのです。

 

そんなママたちの心の悲鳴をいくつかご紹介いたします(私自身が経験したつらい体験も含まれています)。

ママなら誰もが経験する「離乳食作り」あるある

お悩み事例① 離乳食作りはこんなに大変! 

 

マニュアルどおりに進めることなんてできない!

 

 

 「さあ、離乳食作りがんばるぞ!」とはりきるママ。離乳食のレシピ本や雑誌、ネット情報は山ほどあります。解説文に添えられたステキな写真を見ると、やる気をかきたてられます。だけど実際に作ってみると、全然うまくいかないんです。

 

「5〜6カ月はゴックン期、7〜8カ月はモグモグ期、9〜11カ月はカミカミ期、12〜18カ月はパクパク期。成長段階によって食材や調理方法を変えましょう」と多くの本に書いてあります。

 

これがやたらと細かい! タンパク質が何gだの米が何gだの硬さがどうだの、まったくもってちんぷんかんぷんです。何を言っているのかよくわかんないんです。

 

「本のとおりに進めたい」

 

「進めないと遅れているということになる」

 

「これを食べなければ失格だ」

 

と思い込み、とにかく必死になっているママたちは、

 

「うちの子、もう9カ月なのにモグモグできません。だいじょうぶでしょうか?」

 

「うちの子、お米は80g食べるのですが、タンパク質は10gくらいで食べなくなることもあり、心配です」

 

などと自分を追いつめ、不安でいっぱいになっています。

 

さらに、時間をかけて、離乳食の本やネットを調べまくって、お手本どおり食材をそろえて、グラム数を量って、見よう見まねで一生懸命作っても、食べてくれないこともあります。

 

お悩み事例② 離乳食作りはこんなに大変! 

 

本や雑誌やネットで見るような、きれいでステキでオシャレな離乳食なんて作れない!

 

 

どの離乳食の本を見ても、色彩豊かに美しく盛り付けされています。それはもう芸術作品のようです。

 

実際にママたちが手作りした離乳食の写真がインスタグラムやフェイスブックなどのSNSに投稿されているのを見ても、オシャレでステキなものばかりです。

 

そんな投稿を見て、

 

「私はとてもこんなふうにできないわ」

 

「できる人もいるのに、私にはなぜできないのだ!」

 

と落ち込んでいるママも少なくありません。

 

ママは管理栄養士でもなければ、調理師でもシェフでもコックさんでもパティシエでもありません。

 

ステキな美しい離乳食を作れなくてもいいんです。

 

 

 

 

お悩み事例③ 離乳食作りはこんなに大変! 

 

一生懸命に作っても、全然パクパク食べてくれない!

 

 

「ベッー!」と吐きだす

 

「ブッー!」と噴きだす

 

「グチャ!」と手でつぶす

 

「ポーン!」と投げ捨てる

 

「ベットリ」と顔にぬる

 

子どもが寝ている間に本やネットを一生懸命に検索し、よさそうなレシピが見つかると、実際に作ってみたくなりますよね。

 

そして、泣き叫ぶ子を置いて、なんとかやっとのことで作り上げ、「さあ召し上がれ!」と離乳食をあげても、食べない食べない。

 

子どもは甘くておいしいおっぱいやミルクだけ飲んできたので、それとは全然ちがう味のものが口に入るとびっくりします。それが食べ物なのか、おもちゃなのか、いったいなんなのか、わかりません。

 

子どもが吐きだしたり投げたりつぶしたりするのは、それがどんなものなのかを知るために必要な行為であり、ごく自然なことです。

 

それでも大人の立場からすれば、パクパクニコニコ食べてほしい。そして、そのギャップが、ストレスやイライラにつながるのです。一生懸命に作った食事を粗末にされた(と感じ)、その後のお掃除もしなければいけないので、もう気持ちはけちょんけちょんです。

 

最初からパクパクニコニコ食べてくれる子はめったにいません。食べるようになるまで1カ月かかるのか、3カ月なのか、半年なのか、1年なのか、子どもによってちがうので、わかりません。先が見えないなか、いかに仏のような心を保って子どもと接し続けるかは、もはや修行のようなものです。

 

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