グローバル・マーケット・ウォッチ:中国の大胆な融資拡大

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

中国の融資拡大の試みは、月ごとに大胆さを増しています。

 

中国はありとあらゆる手段を使って、経済の失速を回避しようと躍起のようです。

 

輸出の低迷を受け、経済成長が1990年来の最低水準に落ち込む中、中国人民銀行は、世界2位の経済を安定させようと、過去4ヵ月だけで15の新たな施策を導入しています。例えば、金融機関から引当金として預かる預金の一定割合である、預金準備率の一連の引き下げが挙げられます。

 

とはいっても、これで十分なわけではありません。必要とされるところに信用が供与されていないからです。中国の金融機関は、家計や中小企業向けの貸出に必要な資本を十分に有していないことから、中国人民銀行は新しい手段が必要だと考えているのです。

 

他国ではよく使われる資金調達の一手段、即ち、永久債の民間銀行による発行を可能とする、新しいプログラムを中国人民銀行が導入した背景には、このような状況があるのです。永久債には償還期限がなく、また「その他ティア1」(「ノンコア・ティア1」、非中核的自己資本)に算入されることから、当該債券の発行を通じて、銀行の財務の強化が可能となります。

 

中国人民銀行は、「中央銀行手形互換プログラム」を通じて、民間銀行が発行する永久債のプライマリー・ディーラー(中央銀行と直接取引ができる政府公認の証券会社や銀行)に、永久債と信用の高い中央銀行手形の交換を許可します。また、銀行が発行する「AA格」以上の永久債は、中国人民銀行の資金供給オペレーションに際して、適格担保としての取扱いを受けることとなります。

 

これは極めて大胆な施策です。中国人民銀行は、量的緩和を行っているわけではないものの、相対的にリスクの高い劣後債を同行のバランスシートに受け入れることで、実質的に、銀行資本の再編、すなわち資本の補強を行うことになるからです。

 

 

中国人民銀行は、この施策が、信用の伝達経路を妨げる要因を排除し、GDP(国内総生産)の6割以上を占める民間セクター向けの融資を拡大する一助となるだろうと計算しているのです。

 

一方、民間銀行は、中国人民銀行の施策を間違いなく歓迎するはずです。実際に、大手行の一角を担う中国銀行は、「中央銀行手形互換プログラム」の導入が発表される数日前に、国内銀行初の、最高400億元の永久債の発行予定を発表しています。

 

中国人民銀行の大規模な景気刺激策は、世界経済に大きな影響を及ぼす可能性があると思われます。資産買入や定例の公開市場操作を含む各種の施策を合わせると、中国は、世界の金融システムに注入される流動性の半分以上を供給しており、10年前の5分の1とは様変わりです※1。ピクテの試算では、中国人民銀行の流動性供給は、1月中に過去最高水準を更新したもようです(図表1をご参照下さい)。

※1 6ヵ月先行の中央銀行の流動性の総額に基く、名目GDP比の%

 

[図表1] 流動性の供給:中国人民銀行による流動性の供給は過去最高水準に迫る(緑の折れ線:中央銀行の流動性供給GDP比、%、赤破線:過去平均)

※中央銀行の流動性の供給は、中央銀行の財政政策(公開市場操作、大規模な資産購入、レポ取引等)、ネットの不胎化介入(リバースレポ取引、預金準備率の調整)により算出、6ヵ月移動平均  出所:ピクテ・グループ
※中央銀行の流動性の供給は、中央銀行の財政政策(公開市場操作、大規模な資産購入、レポ取引等)、ネットの不胎化介入(リバースレポ取引、預金準備率の調整)により算出、6ヵ月移動平均
出所:ピクテ・グループ

 

もっとも、中国人民銀行の対策がこれで終わるとは思われません。少なくとも、年内に、預金準備率の追加の引き下げ(150から200ベーシスポイント(1.5-2.0%))を行うことが予想されます。

 

中国の安全策が世界経済の減速を止めることが出来るとしたら、「米連邦準備制度理事会(FRB)に逆らうな」ではなく、「中国人民銀行に逆らうな」と言った方がいいかもしれません。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『グローバル・マーケット・ウォッチ:中国の大胆な融資拡大』を参照)。

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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