インド総選挙の対立軸

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米国が金融政策を柔軟に運用すると表明したことなどを受け、新興国株式市場は19年年初来1割近く上昇しました。一方、インド株式市場の上昇は小幅にとどまっています(図表1参照)。インド市場に対する様子見姿勢の背景の一つは総選挙と見られます。構造改革に積極的な連立与党続投がメインシナリオながら、野党の動きも気になります。

インド19-20年度予算案:総選挙を意識して財政は拡大傾向

インド政府は2019年2月1日、19-20年度の予算案を発表しました。19-20年度予算の特色として、今年4~5月に予定されている総選挙を控え有権者からの支持を確保する狙いから支出が拡大しています。

 

例えば、今回の予算案では経済成長の恩恵を受けていないとしてモディ政権へ不満を募らせている農家や中間層への支援策が盛り込まれ、農家への直接給付に年7500億ルピー(約1兆1500億円)を投じると説明しています。

どこに注目すべきか:モディ政権、総選挙、支援策、19-20年度予算

米国が金融政策を柔軟に運用すると表明したことなどを受け、新興国株式市場は19年年初来1割近く上昇しました。

 

一方、インド株式市場の上昇は小幅にとどまっています(図表1参照)。インド市場に対する様子見姿勢の背景の一つは総選挙と見られます。構造改革に積極的な連立与党続投がメインシナリオながら、野党の動きも気になります。

 

[図表1]インドルピー(対ドル)とS&P BSEセンセックスの推移

日次、期間:2018年2月5日~2019年2月4日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2018年2月5日~2019年2月4日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、4~5月に予定されるインド総選挙を簡単に振り返ります。与党はインドの構造改革を進めてきたモディ首相率いるインド人民党(BJP)を中心に、国民民主連盟(NDA)が形成されています。不正資金撲滅を目指した高額紙幣の廃止や物品サービス税(GST)導入等の改革を実践しました。

 

 

一方の野党は、インド国民会議派などを中心に統一進歩同盟(UPA)が対立軸となっています。ラフル・ガンジー総裁率いる国民会議派は農村を精力的に回るなどして支持を拡大しています。18年11~12月に行われた5州の州議会選挙では国民会議派が躍進しましたが、総選挙に向け、農家などに手厚い支援を約束したこと等で支持を伸ばしています。

 

 

細かな違いは無視してあえて単純化すれば、改革路線のNDAと、財政拡大路線のUPAの争いという構図です。

 

現状、選挙情勢はどうなっているのか?インドの世論調査は幅を持ってみる必要はありますが、現地紙(Mood ofthe Nation調査)の予想獲得議席数を見ると、NDAの237議席に対し、UPAは166議席です(その他140議席など、図表2参照)。与党連盟のNDAが世論調査では優位に立っていると見られます。ただ、インド下院の総数は545議席であるため、過半数には272議席を超える必要がありますが、現在の与党連合では過半数に達しない恐れがあります。前回14年の選挙ではBJPで単独過半数を獲得したのと様相が異なっています。モディ政権発足後、インドの経済成長率は7%前後で推移し、今後の予想でも7%台での推移が見込まれていますが、選挙で勝利を確実にするには、成長を実感できない有権者層への配慮が求められそうです。

 

[図表2]インド14年選挙時下院議席と現在の議席予想

出所:India Todayを参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:India Todayを参考にピクテ投信投資顧問作成

 

そこで2月1日の予算案に注目すると、モディ政権も農家や中間層への支援策を盛り込みました。一方で、構造改革を掲げるモディ政権は財政拡大に一定の歯止めをかける必要があるというジレンマに直面しています。19-20年度予算案の財政赤字対GDP(国内総生産)比率は3.4%と従来の目標から悪化しています。もっとも、今回の予算案を受けた為替市場の反応は冷静で、許容範囲内という反応となりました。

 

与党連合の再選がメインシナリオと見ていますが、選挙の不透明感は市場の変動要因として注意が必要です。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド総選挙の対立軸』を参照)。

 

 

(2019年2月5日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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