確かに「手数料なし」は有利だが…
A. 販売手数料のない「ノーロード」が得。ただし、無料といっても信託報酬や過去の実績をチェック!
★運用スタート時点で、いきなり3%の損失?!
投資信託を買うときにかかる手数料が販売手数料です。販売手数料は、投資信託の購入金額に対して最大で3%程度かかります。具体的な金額ではなくパーセンテージで書かれていますので、3%と聞いても、べつにたいしたことはないと感じるかもしれません。
ですが例えば、販売手数料が3%の投資信託を100万円ぶん買った瞬間に、3万円が引かれると知ったら、きっと誰もが驚くのではないでしょうか。実際、100万円単位で投資信託を買う人はそういないとは思いますが、こう考えると3%の重みが感じられると思います。
ノーロードの投資信託は、この販売手数料が「無料になっている投資信託」です。100万円分購入してももちろん0円ですので、販売手数料3%の投資信託よりもずっと得です。
ノーロードの投資信託は、その後の運用面でもわずかですが有利になる場合があります。投資信託の販売手数料を内枠、つまり購入金額の中から支払う投資信託の場合、3%の販売手数料を支払うと、購入できる投資信託は97万円ぶんになってしまいます。
いっぽうのノーロードの投資信託では、100万円ぶんきっちり購入することができます(なお、販売手数料を購入金額とは別に支払う、外枠形式の投資信託もあります)
もし、これらの投資信託がともに5%値上がりしたら、販売手数料3%の投資信託で値上がりした金額は4万8500円となるのに対し、ノーロードの投資信託で値上がりした金額は5万円になるのです。ノーロードの投資信託のほうが元本部分を多くできる、というわけです。
販売手数料は、金融機関ごとに設定できます。そのため、同じ投資信託でも販売手数料が安い(ない)金融機関と高い金融機関があります。こういった場合は当然、販売手数料がない投資信託のほうが得になります。できるだけ安く買えるところを探すべきでしょう。
このように見てみると、ノーロードの投資信託が有利なのは間違いありません。しかし、だからといって安易に飛びつくのは危険です。2点ほど、注意していただきたい点があります。
1つは、信託報酬が割高ではないかということです。販売手数料は1回きりですが、信託報酬は保有中ずっとかかります。投資信託を長く持ち続けるほど、販売手数料の割合は減っていきますが、信託報酬の割合は増えていくことになります。目先の無料につられて、長期で持つと損になる投資信託を買っていないか、確認してみましょう。
もう1つは、ノーロードだからといって、運用成績が必ずよいとは限らないことです。いくら販売手数料が安くても、お金が減るような投資信託では、どうしようもありません。過去の実績や純資産総額の推移も、合わせて見るようにしましょう。
信託財産留保額は「ポジティブな手数料」
A. 投資信託を長く保有するなら「ある商品」のほうが得。短期売買なら「ない商品」を!
★信託財産留保額は、信託財産に還元される
「信託財産留保額」とは、投資信託を解約する際にかかる手数料です。通常、投資信託を解約するときの時価(基準価額)に対して、多くの場合0.1〜0.5%かかります。
これは、解約に対し、投資信託の中に含まれる株式や債券を現金化するコストが発生することから、継続保有している他のファンド保有者とのコスト面の公平さを確保するためです。よって、この手数料は、運用会社や販売会社の収入になるのではなく、投資信託の運用資産に留保されるものです。つまり、他のファンド保有者に還元されるものです。
例えば、AさんがXYZファンドを基準価額2万円のときに解約した場合を考えてみます。
「信託財産留保額」が0.3%なら、実際に受け取る金額は2万円×99.7%=1万9940円です。基準価額との差額60円は、XYZファンドの「純資産総額」にくわえられます。
受益権総口数(ファンドの口数)が変わらずに、純資産総額が増えると、そのぶん基準価額は上昇しますので、信託財産留保額が、投資信託の価値を押し上げることになります。
XYZファンドを長く保有する人にとって「信託財産留保額」は、ネガティブな手数料ではなく、ポジティブな手数料といえます。
頼藤 太希
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
宅地建物取引士