ポイント
2018年の市場の急落を経て、トルコ株に買い場が到来か?
トルコ資産のバリュエーションは、昨年の市場の暴落を受け、過去に例をみない水準に低下していますが、バリュエーションが低下した銘柄の株価が急反発することは珍しくありません。また、暴落した市場の、平均への回帰の動きが投資リターンの強力な源泉になることは、歴史が示す通りです。もっとも、安い株価が、高い価値を示唆するとは限りません。ですから、市場が急落する局面では、米国の著名投資家であるハワード・マークス氏の格言を参考に考えることがよくあります。「中でも、最も重要なのは、株価と価値の関係である」とのマークス氏の金言は、投資家の懸念を的確に捉えています。足元のトルコ市場を見ると、株価に内在する価値は何かを考えさせられます。
トルコ市場の暴落の要因は、過剰債務、景気過熱、高インフレ、国境付近での紛争など様々ですが、中でも、エルドアン大統領の権威主義が、司法制度、中央銀行、報道等、トルコの主要制度や機関の独立性に対する投資家の疑念を生じさせたことは明らかです。
新興国の通貨と株式のうち、2018年1月~10月のリターンがトルコを下回るのはアルゼンチンだけです。
[図表1]トルコ市場は、新興国市場中、アルゼンチン市場に次ぐ大幅な下げを記録(トルコ株式市場(左表、2018年1月~10月末、米ドルベース)、トルコリラ(右表、2018年1月~10月末、対米ドル))
市場の急落からどのような教訓を学ぶべきか?
トルコ政府は、自らが招いた損失の一部を取り戻そうと躍起です。昨年は、財政刺激と増え続ける経常赤字が許容される限界を超える状況に至る中、中央銀行は市場に試された時点で適切な措置を講じることが出来ませんでした。その後、状況の一段の悪化を回避すべく、漸く、対応を図るまでに、債券利回りは30%を超えて急上昇し、通貨は暴落しました。
もっとも、最終的に行動を起こした時点で、中銀は、625ベーシスポイント(6.25%)の大幅利上げを断行し、待望の信認の回復に、ある程度成功しました。利上げ後、通貨は安定的に推移し、債券利回りは、幾分ながら低下しています。
[図表2]トルコ中銀の断固たる決断が奏功(トルコの消費者物価(CPI、前年比、%、グリーンの線)と2年国債利回り(%、グレーの線))
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上記の政策の結果、トルコは、今後1年以内に景気後退(リセッション)入りする公算が大きく、既に大幅に縮小しつつある経常赤字は、再び抑制された状態に戻ると考えます。トルコ財務省および中央銀行が慎重な経済政策を堅持し、銀行システムが、資産の質の大幅な悪化の拡大を回避することを前提とするならば、トルコは、一段の資本流出を防ぐための大規模な資本規制の発動を回避することが可能だと考えます。
市場がどの時点でトルコ資産の価値を認識し始めるかが注目される
歴史を教訓に予想すると、市場がトルコ資産の価値を認識し始めるのは2019年に入ってからのことになると思われます。過去の例では、市場の危機後の買い場は、経済がマイナス成長に陥った四半期中に到来しているからです。足元のトルコ市場のバリュエーションは、予想株価収益率が5.6倍程度と、過去10年平均の9.1倍程度を下回ります。今後、歴史が繰り返し、トルコ株のバリュエーションは過去のトレンドに回帰するとの見方にたって、短期戦術として、トルコ株の組入れを増やすタイミングかもしれません。
[図表3]トルコ株市場は10年ぶりの割安水準に(MSCIトルコ株価指数の株価収益率(PER、今後12ヵ月先予想))
巨額の外貨建て債務を抱える国に散見される熾烈な「インフレ性の債務危機」が発生し、3ヵ月で50%もの市場の下げを見る可能性があり得ることを勘案すると、いかなる投資も精査を要することは明白です。しかし、マークス氏の格言の通り、「資産の質が高いかどうかではなく、買いのコスト、すなわち資産を買い入れるために支払う価格こそが、投資のリスクと最終的な利益を決める」のです。現時点のトルコ株式の株価水準等を考慮すると、トルコ株は、2019年において絶好の買い場を提供していると考えます。
※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権、その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています
※将来の市場環境の変動等により、当資料に記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(『見当たらない場合は関連記事『グローバル・マーケット・ウォッチ:今、トルコの買い時』を参照)。
(2019年1月22日)
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